冒険者ギルドの受付嬢はお弁当屋さんで売られているミミルフライが大好き過ぎた話
冒険者ギルドの昼休み。
ギルマスのお昼の誘いを断り、エミリーは担当していた受付を閉める。
財布を握りしめ、足早に近くのお弁当屋さんの行列に並んだ。
お弁当売りである亭主が、愛想良く注文を取る。
「嬢ちゃんお待ちどう。何にしやすか?」
「ミミルフライ弁当1つ。ライス大盛りで、スープもお願いします」
「はいよ! これ、番号札な。次のお客様どうぞー!」
127番の札と共に、カウンターの列に並ぶ。この行列も、ある意味この店の名物だった。
待ちに待ったミミルフライ弁当を大事に持って、ギルドの休憩室に入る。
机の上にお弁当とスープを置き、エミリーはゴクリと喉を鳴らした。
お弁当屋さんのメニューは種類はあれど、弁当箱のサイズが全て同じだった。
そこからはみ出るほどのミミルのフライは、規格外の大きさを物語っていた。
食前のお祈りを口にし、弁当箱の蓋を外すと、狐色の特大ミミルフライがお目見えする。
フォークをミミルに突き刺せば、パン粉がほのかに飛び散り、ザクザクザクッとした衣の感触が手に伝わってくる。
持ち上げた重みに幸せを感じつつ、大口を開けて齧り付く。
軽やかな衣を通り、ミミルに行き当たる。
注文を受けてから揚げてくれるミミルフライは、並んででも食べたい美味しさ。
噛みついた後の断面から、ふわりと白い湯気が立ち上っていた。
「はふ、はふ。ザク、ザクっ……ザク……んんっ! ん〜、ごきゅん。う〜まぁ〜。……ザクッ」
揚げたての衣のザクザク感の対比と、ミミルのプリプリを通り越して、ブリッブリの身のポテンシャル。
噛めば噛むほど甘みを感じ、甲殻類特有の旨味が口いっぱいに広がる。
忘れちゃいけないライスを、追加でお口に放り込む。美味しさが一緒くたにされ、幸せが増した。
尻尾の先まで堪能する前にスープを引き寄せる。
ミミルを剥いた時に余ったお頭や殻で作られた、生クリームベースのとろとろビスクスープ。
手に持っていたミミルフライを迷わずドボンとつける。
衣に纏わせるよう、これでもかとスープに浸す。
オレンジに白を混ぜた色合いのビスクスープを滴らせ、エミリーは今日1番の大きな口を開けた。
暴力的なまでの旨味とコク。
しっとりしつつもカリカリな衣から、じゅわりと溢れ出る濃厚なスープ。
(美味しい美味しい美味しいおいしぃーっっっっ!!!!)
人は夢中になると無言になる。
心の中で感情を爆破させ、時間の許す限り、今日もエミリーはミミルフライを堪能した。
異世界お弁当屋さんの揚げたて特大エビフライ話でした。