どうぞ皆さんお幸せに。邪魔者の私は消えますね。~婚約者に命を狙われた令嬢。逃げた先の最強ギルドで愛される~
短編の意味を理解出来ていませんでした。
申し訳ございません。
連載版を投稿致しましたので、そちらの方を読んで頂ければ嬉しいです。お手数をおかけします。
王国立の学園に合格したと知った時、私__アンジェリカは喜びよりも安堵を感じた。
両親によって敷かれたレールを歩む人生。
遊ぶ友人も、時間も、環境も、婚約者も……何もかも両親が作り上げた。
私に選択権なんて一切与えられない。
誰の人生なのか分からなくなってしまう。
その癖、そんな風に縛り付けておきながら、両親の私に対する愛情は希薄だった。
地位と体面ばかりを考えるこの窮屈な家で操り人形の様な生活を強いられて…幼いながらに私は絶望を覚えると共に大きな喪失感を抱きながら生きてきた。
だからだと思う。
気付けば婚約者のベルクに心酔する様になったのは。
ベルクとの婚約は両親が取り決めたものだった。
王太子である。
けれど、婚約者という肩書きはまだ幼かった私達にとっては特別なもののように感じ取れた。
母親に似たブロンドの髪色と顔立ち。
父親に似た深い青い瞳。
正直……鏡を見る度に吐き気がした。
あんな人達の血を引いているのだと強く実感するから。
けど…ベルクは私のそんな容姿をとても気に入っていた。
だから、私は自分磨きを怠らなかった。
だって私は…ベルクを愛していたから。
唯一の心の拠り所。
何よりも大切な人で特別な人。
ずっと傍に居たい。支えたい。
___そう心から思っていた。
そしてベルクも私に言ってくれた。
『アンジェリカ、愛している』
『君は僕にとって誰よりも特別な人だ』
互いに互いを特別だと感じ、愛し合っていた。
疑いもしなかった。
貴方が私に触れる手の優しさ。
心地よい声。
全てが昔のままだったから。
けど……昔のままなのは、私だけの様だった。
「やだ。アンジェリカと結婚しないで。お願い、ベルク。私は……貴方とずっとにいたいの」
「俺もだよ、シュナ。俺が愛しているのは君だけだ」
卒業式を間近に迎えたある日。
私は偶然、その場に居合わせてしまった。
最初は、卒業式の予行練習や準備で忙しいこの時期に油を売る生徒に注意をしようと思って声が聞こえてくる方へ向かった。
そうしたらこの状況である。
一体…何事なの?
ベルクが女子生徒と中庭の死角になる様な隅っこで抱き締め合い、愛を囁きあっているだなんて。
しかもその女子生徒は私の友人なのだ。
名前は、シュナ。
彼女は学園に入学してから初めて出来た友人だった。
焦げ茶の髪色と鮮やかな緑色の瞳を持ったシュナは、病弱で中々外へ出る事が許されずにいたらしい。
だから、お医者様に学園に通う許可を頂けた時はとても嬉しかったのだとシュナは話してくれた。
危なっかしくて、好奇心旺盛で、つい手を焼いてしまう様な愛らしい女の子。
ベルクはシュナの髪の毛をすくい上げ、唇を落とす。
「こうして本当に触れていたいのは、君だけだ。シュナ」
もう、止めて。
「愛している。君だけを誰よりも」
「私もだよ。ベルク」
再び強く抱きしめ合う2人。
あぁ…。
____あの言葉は嘘だったんですね。
あの「愛している」は。
もう聞いていられなくて、私は息を潜めながらその場からゆっくりと離れていく。
「このままじゃ、シュナとは一緒に居られない。だから……アンジェリカを殺そうと思う。決行は今夜だ」
次の瞬間聞こえてきたその言葉に私は硬直した。
ベルクは今なんて言った……?
そこからのことは、あまり覚えていない。
気付けば私は、学園を飛び出していた。