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第4話 土の大精霊にも憑りつかれた男はまたまたちんけな詐欺師に疑いの目を向ける


「でっ、エレクさんはなぜここにいるんですか。

俺に何か用でもあるんですか。」


その瞬間、ちんけな詐欺師さんの顔の表情がぱぁぁぁと緩んだ。


「そっ、そうなんだよ。

シュウ君に用があったんだよ。

まずはスヨペラン領で発生した謎のはやり病の調査に長期間、果敢に挑んでもらったお礼を言おうと思ってね。

これは大公家としてはもちろんだけど、俺個人としても是非とも直接にお礼が言いたかったんだ。」

「はぁ。」


満面の笑みをたたえながら、謎のはやり病の調査に従事したことへのねぎらいを再び口にする、ちんけな詐欺師さん。


"シュウ、油断すんじゃねぇぞ。

お礼を言うためにわざわざお前を探しに来る奴じゃねぇぞ。"


わかっているよ、怨霊様。


この後、どんな大事を擦り付けられるかと思うと、俺の表情はちんけな詐欺師さんとは真逆に自然と厳しくなった。


「ちょっとぉ、シュウ君、そんなに警戒しないでよぉ。」


俺の表情を見て状況がそれほど良くないことを悟ったのか、笑顔から困ったような様子に代わる、ちんけな詐欺師さん。


'本当にこやつは大公家の密偵なのかのぉ。

心の動揺が顔に露骨に出ておるのじゃ。'


"実は大公家と密偵の間にはちんけで腐ったあんぽんたんな詐欺師、つう、称号が入るけどな。

まぁ、形式上は一応は大公家の密偵かもな、というところじゃねぇか。"


茶色い子さんの疑問にやれやれと言う表情で応える、怨霊様。


「謎のはやり病の調査についてのねぎらいは会議室でもらいましたからそれ以上は必要ないですよ。

用件がそれだけでしたら患者さんもお待ちのようですから、俺はそろそろ失礼しますね。

さようなら。」


俺は別の大事を擦り付けられる前にこの場から逃げることを決意し、ちんけな詐欺師さんに別れの挨拶をして強引にその前から踵を返そうとした。


それを見たちんけな詐欺師さんは慌てて俺の腕を掴んできた。


「ちょっ、ちょっとまってぇ、シュウ君。」


"引き止めやがったなぁ。

これで何か大事をシュウに擦り付けるつもりが確定だな。"


'スヨペランから帰ってきたばかりじゃというに、もう次の面倒事をフンに丸投げするつもりということじゃな。'


「俺はこのままこのまま治療院に行く・・・・・」


俺は何とかつ掴まれた腕を引き離そうとしたが、その軽薄そうなにやけた顔に似合わずがっちりとちんけな詐欺師さんに捕まえられて逃げらんねぇ。


"腐っても大公家の密偵ということかぁ。

それでもなぁ、シュウ、てめぇも聖戦士見習いの端くれだろ、荒事は得意なんじゃねぇのか。

普段から何のために訓練しているんだ。

こんなちんけで腐ったあんぽんたんに良い様にされてなさけねぇなぁ。"


俺は半分は治療師見習いだ。


'なるほどのう、それは中途半端過ぎてどっちに転んでも役に立たない奴ということが露呈したというわけじゃな。'


・・・・・・・


茶色い子さんのあまりに的確過ぎる指摘になんか目から水が噴きこぼれそうなんですけど。


俺が自分の中途半端さに悲観していると、このまま大事を擦り付けてやるチャンスと言わんばかりにまくしたてはじめた、ちんけな腐った詐欺師さん。


「シュウ君、何か疲れているようだね。

わかるよぉ、長期間にわたって大変な任務について就いていたわけだもんね。

うんうん、疲れているねぇ、じゃぁ休養を兼ねてしばらく旅にでも出てみるというのはどうだい? 」

「旅ですか? ・・・・・・」


ちんけな詐欺師さんの突然の申し出に俺は呆けてしまった。


"ちんけで腐ったあんぽんたんの野郎がシュウに休暇を勧めてきただとぉ。

大事を擦り付けに来たんじゃなくてかぁ。

そんなことは絶対にありえねぇぇぇ、こいつがそんな気遣いができるはずがねぇ。

できるとすればそれはもう極大魔王が登場するクラスの天災の前触れにちげぇねぇ。"


なぜか青い顔をしてプルプルしだした、怨霊様。


'そんな天災の前触れと言うことはあるまい。

こやつが今日に限ってそのような優しげな言葉を吐いたのは、昨日何か悪いもんでも拾い食いしただけじゃろ。

それか普段は食えない高級食材を喰らって、腹じゃのぉて脳がびっくりして溶けてしまったのじゃろか。'


"変なものを食って脳が溶けちまったか。

まぁ、だったら有りそうだな。"


脳みそが溶けたら優しい言葉が出てくんのか。

むしろ、たがが外れて逆に狂暴化すんじゃねぇのか。


'変なものを食べて頭がおかしくなったのではないとするとじゃな。

ちんけな疫病紙にはフンを旅に出す別の狙いがあるのかもしれんのぉ。

それこそ旅先で大事に偶然に出くわしたように工作するつもりじゃなかろうか。'


"ちんけなあんぽんたんがそこまで頭が回る奴とは到底思えないんだが。

例え拾い食いしたものに当たって脳が正常化したとしてもだ。"


頭をちょっと捻る、怨霊様。


あっ、でも、上司のヤコブさんならできっかも。


"なるほど、そうか。

ヤコブの奴が筋書き考えて、それを叩き込まれたちんけなあんぽんたんはただ伝えに来ただけか。

それならこいつでも何とかできっか。"


納得顔になった、怨霊様。


'ちんけな疫病紙に切れ者のブレーンが付いているという訳じゃな。

そうなるとちと厄介じゃのぉ。

ちんけな疫病紙の言葉に従ってのこのこ旅に出たらそれこそ死地への道を突き進んでいたということもあり得るわけじゃな。'


考え込む様に話す、茶色い子さん。


"休暇の旅に出るのはやぶさかじゃねぇよな。

ただし、行き先はちんけなあんぽんたんが言う方向と真逆に行けばいいんじゃねぇか。"


そうだな。

とにかく勧められたように旅に出るのを前提に、何処に行ったらいいか聞いてみっかぁ。


'それよりも前になぜに旅に出ることを勧めるのか確認した方が良いのではないかのぉ。'


わかった、まずはそうすっか。

それについて怪しい点がなかったら、次はお勧めの場所をきいてみっかぁ。


"今話したように、唐突に旅になんて話を持ってきた時点でもう怪しさ満点だけどな。"


俺と茶色い子さん、そして、もちろん怨霊様もちんけであんぽんたんで詐欺師な疫病紙様に胡乱な目を向けた。


「ちょっとう、シュウ君、そんな目を向けないでよ。」


俺の疑いの目に気付いたちんけな詐欺師さんが慌てたようにそう言った。


「仕方ないでしょ、唐突に旅に出たらどうかだなんて。

いったいどういう料簡でそんなことを口走っているんですか。」


俺は、それに怨霊様と茶色い子さんも、さらに強い疑いの目をちんけな詐欺師さんに向けた。


「だっ、だからぁ、さっきも言ったように、スヨペラン領でのはやり病の調査に不眠不休で2か月間も当たってくれたんでしょ。

いくら若くて体力のあるシュウ君でもさすがに疲れが溜まっているかと思ってね。

ここいらで休暇でも取ったらいいんじゃないかと思って。

もちろん旅費は大公家が、今回の調査のお礼として出させてもらうよ。

まぁ、貴族が泊まる宿は無理だけど、そこそこの商人が使うような小ぎれいな宿には十分泊まれると思うよ。

それに少ないけど小遣いなんかも渡せるかなぁ。」


すこし焦りを滲ませて俺を強く旅に誘う、ちんけな詐欺師さん。


"間違いねぇな。

こいつはシュウを旅に誘い出して大事に当たらせようとしてんだろ。"


'そうじゃな、旅費は出すと言いつつそれは大事に当たらせるための経費じゃな。

そうなると小遣いと言うのは報酬じゃな。'


納得顔でそう話す、大精霊な二人。


そうだな。

大公家としては教会関係者の俺に直接依頼を出し難い案件だから、旅にかこつけてそれに当たらせようという魂胆だよな。


俺の言葉に怨霊様と茶色い子さんは大きくうなずいた。


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