第27話 ドラゴンのお世話係の男は最悪な結末に向かうのか
うっ、噓だろぉ。
俺が最も恐れていた超特急王宮直行馬車がもうそこに迎えに来ているだとぉ。
うぁぁぁぁ、これに乗ったらおしまいだぁ。
これまでさんざんシミュレートさせられたなんちゃらロードの王道の中の王道、王宮にて国王と対面、そしてなぜか対決へ。
その結果、チ~んして、終着点の地獄の一丁目に転移させられることになるんだぁぁぁ。
"正確には、これから連れていかれるのは王宮じゃなくてシュピルベルク城、そして、対決するのは国王じゃなくて国王代理のツォッカ公国第2王子だけどな。
まぁ、格がちょこっと下がる感はあるが、間違いなくなんちゃらロードの終着点に至る真髄といってもいいよな。
あぁ、ちなみに地獄の一丁目に行った後の閻魔による裁きは、正々堂々とロードのど真ん中を進んだということが評価されて、最悪の無間地獄から一段緩い招喚地獄に鞍替えという手はずだぞ。
見守る立場の私からしてもほっとしたぜぇ。
いゃぁ、よかった、ほんとよかったなぁ。"
ぜんぜん良くはねぇだろうがぁ。
閻魔大王様から好評価を得られるんだったら地獄の一丁目から方向転換、天国に転籍させろよなぁ。
"あっ、それはむりぃぃぃぃ、お前の場合はぜってぇそれだけはないから。
何度も言っているようにお前に天国なんて無理だから。
お前のその悪人面じゃ、天国の扉は開かねぇどころか、天国へ上る階段の前にすらから行けねぇから。"
なんで悪人面だと天国に行けないんだよぉ。
"仕様です、キッパリ wwwwwww "
天国の階段の前に芝生を生やすんじゃねぇ。
足が滑って前に進めないじゃないか。
"お前が進むのは地獄の一丁目だぁ。
お前に天国への階段の前にすら行く資格はねぇからな。"
くっ、くっそう。
このままではマジで終着点に一直線だ。
何とか馬車に乗らずに済む方法は。
「シュウ君、異国の大地に第一歩を踏み出して感動に浸っているところを済まないのだが。
そろそろ川港から目的地のシュピルベルク城に向いたいのだが。」
そういって、リュウちゃんをなで続けながら声を掛けてきた団長様様。
"まぁ、団長の奴に面と向かってそう言われたならもう乗るしかねぇな、超特急王宮直行馬車によぉ。
ここでぐずぐずしていると奴の後ろに突っ立てる騎士らが腰の得物をブンッと。"
首チョンかぁ。
"いきなりそれはないとは思うが、勢い余ってそうなるかもしんねぇよな。
いわゆる、事故っていうやつ? "
首を狙って大剣を振り回してくんだぞ、事故はねぇだろ、故意だろ故意。
"貴族相手にド平民のお前の言い分なんて通るわけけねぇだろ。
まして相手は国の使節団長だし、大公家の息子だしな。
奴が事故だと言ったらそれをひっくり返せるのは国王だけだな。"
国王様様様じゃないと団長様様の言い分をひっくり返せないかぁ。
"まぁ、お前が国王に訴えるわけにはいかねぇよな。"
くっ、平民じゃぁ、国王様様様に訴えることもできずに泣き寝入りということか。
"ちげぇぞ、お前が国王に面会したら、飛んで火にいる何とかだ。
国王に面会、そして、対決、あとはわかるよな。"
うぁぁぁぁ、そっちの方かぁ。
いずれにせよ、無理だぁぁぁ。
泣き寝入りするしかねぇか。
"でもよぉ、お前も聖戦士の見習いなんだろ。
ただ一方的にやられるなんてことにはならねぇんじゃないのか。
だいたいなんで帯剣してねぇんだ。
スパっと首チョンされるがままじゃなさけなさすぎんだろぉ、少しは抵抗しろやぁ。"
あぁ、俺は今はリュウちゃんのお世話係兼船の治療師見習い扱いだからな。
だから帯剣なんて必要ないらしいし、それに団長様様と接する機会が多いんだから帯剣なんかしていたらそれこそ後ろの騎士様方に変な疑いを掛けられちまうぞ。
"じゃぁ、しょうがねぇな。
言われたとおりにちゃっちゃと馬車に早く乗り込めやぁ。"
わかっちゃいるが、今は激しく乗りたくねぇぇぇ。
魂は船に逆戻りしている俺だったが、いかんせん小市民過ぎて体は団長様様の言葉に従って港湾事務所らしき建物の方に勝手に向かっていく。
こらぁぁぁぁ、俺のあしぃぃぃぃ、俺の言うことをきけぇ。
そっちの方じゃなくて向かうのは船のタラップだろ。
うぁぁぁぁ、なんで団長様様たちに勝手に付いて行くんだぁ、俺のからだぁぁぁ。
"それも仕様だ、あきらめろ。"
魂と体がせめぎあった結果、圧倒的に体の方が勝ったらしく、俺はすたすたと団長様様の後ろを付いて行き、やがて港湾事務所の前を通り過ぎて、馬車溜りらしき場所の手前に来てしまった。
馬車溜りの前には船で見かけた乗客、おそらく親善使節団の一員でこれから一緒にお城にお邪魔するのだと思われる方々が多数荷物をもって待っていた。
その一団は団長様様の姿を見ると波が引くように左右に分かれて、団長様様に馬車乗り場のへの道を譲った。
あっ、俺もその他大勢に紛れて団長様様からそっと離れて、隙を見て船にこそっと戻ればお城に上がらずに済むんじゃねぇか。
後は勝手知ったるあの船の診察室の備品庫にでも隠れて、お披露目会が終わるまで何とか飢えに耐えながら隠れていれば良いんじゃねぇ。
"まぁ、無駄に大飯喰らいのお前に飢えを我慢できるかどうかは別にしてだ。
でっ、備品庫に隠れている間のトイレはどうすんだ。
飲まず食わずでもある程度は出るもんは出んだろ。"
トイレかぁ、まずったなぁ。
備品庫じゃそのまま用を足せねぇし。
漏れ出て掃除のおばちゃんに隠れているのがばれちまう。
よし、ここは仕方ねぇ、備品庫じゃなくてトイレに籠るかぁ。
"今度はトイレに籠るのかぁ。
そうすると、誰もいないはずのトイレから夜な夜なごそごそと変な音が聞こえるようになり、その噂が変に広がって・・・・・・
あの船も幽霊船の仲間入りってがぁ。
なんでてめぇは、乗る船乗る船をみんな幽霊船にしちまうんだ。"
初めのは俺のせいじゃねぇ。
極大魔王と化したちんけな詐欺師さんのせいだろうがぁ。
"だからぁ、あいつを極大魔王化させた原因はお前だよな。"
・・・・・・
俺の魂は何とか幽霊船と化すかもしれない乗ってきた船に向かって行きたいのだが、相変わらず体の方は吸い込まれるように馬車溜りの方にぐいぐいと進み、ついにはその前に到達してしまったようだ。
"プププッ、定めだな。
自ら超特急王宮直行馬車溜りに突っ込んでくるとはな。"
違うんだぁ、怨霊様。
体が勝手にきちまったんだよぉ。
俺は幽霊船でも何でもいいから、船に戻りたいんだよぉ。
"そりゃぁ、仕様だもんな。
お前の意思なんてかんけぇねぇ。
さっ、馬車にちゃっちゃとのれぇやぁ。"
乗ったら身の破滅だろうがぁ。
「それでは使節団長のウラースロー様と一緒の馬車に乗るのは、主賓のリュウちゃんとお付きのシュウ君、わたくしエレク。
護衛の騎士は一人が一緒に、もう一人は外で警戒。
という感じでいいですかね、団長。」
馬車溜りの前でちんけな詐欺師さんが団長様様と誰が一緒に馬車に乗るかの差配を始めてしまった。
ちんけな詐欺師さん、何を勝手に仕切ってんのぉ。
団長様様と一緒なんて畏れ多い、そんな狭い空間でわずかでも一緒にいたら小市民の俺の心臓が持たないって。
"あ~っ、最後の晩餐も取らずに、国王(代理)との面会も対決もなしに地獄の一丁目に先に行っちまうのか。
それはちょっとなぁ、なんちゃらロードの本筋を外れちまったら閻魔の評価がダダ下がりだぞ。
その先のゴールが無間地獄になっちまうぞ。
まぁ、予定通りと言えばそうなんだけどな。"
そっ、そんなぁ。
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。
よろしくお願い致します。




