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第43話 若い連絡員に大きな疑惑が向けられた

馬の手綱を握る手に遠慮なく木枯らしが吹きつける。

俺は革の手袋をしているが、手袋ごと手綱に引っ付いてしまいそうだ。

寒い。

体が凍えて意識が何か朦朧としてきた感じが・・・・・。


"自分で朦朧としてきたなんて言っている内は大丈夫だぞ。

しっかりしろよ。"


こんな原野の真ん中で冬の冷たい風に叩き付けられているんだぞ。

気が遠くなりそうになっても不思議じゃないよな。


"だから、フキノトウが地面から顔を出すまでは、王都の花街に居座ったらどうだと言ったんだ。

資金もあるんだし、温かい部屋と暖かい女の肌にまみれて一冬越しても罰は当たんねぇよな。

何でこんな真冬に吹きっ晒しの街道を歩かなきゃなんないんだ。

寒すぎんだろうがぁ。"


と、俺の前をぷかぷか浮きながら移動している青い薄手のワンピースを着た怨霊様が言う。

歩いてもなく、まったく寒そうでもないよな、怨霊様は。


"水の大精霊だからな。

氷の精霊も私の眷属だから、真冬の寒さ何てへっちゃらだぜ。"


じゃぁ、真冬の移動に文句を言わずにちゃっちゃとある・・・・・・

歩いてねぇか。


"あぁ、本当は今頃は王都の花街のとある宿屋でシュウが押し倒しているところを横目で見ながら、熱燗で一杯しているはずだったのによぉ。"


だからぁ、花街なんて行かないし、押し倒さねぇって何度言ったら。

それに一冬を花街で過ごすほどの資金はねぇ。

1週間でパンツ一丁までひん剥かれて、強面のお兄さんたちに真冬の街に追い出されんのが関の山だ。


"わざわざこんな寒空に移動させられるこの馬もかわいそうになぁ。

本当なら王都の花街のとある宿屋の馬小屋で若い雌馬を押し倒し・・・・、馬は押し倒すんじゃねぇな・・・・・、若い雌馬とよろしくやっているはずだったのによぉ。"


あぁ、怨霊様。

この馬はオスなの、メスじゃなかったのか。

乗馬初心者の俺には気の荒いオスじゃなくてメスの方をヅビリッフェン聖戦士団では用意してくれたはずなんだが。


"あぁ~・・・・・・

こいつもかわいそうになぁ。

本当なら王都の花街のとある馬小屋でナンパされて、後ろから圧し掛かられて、春までいちゃいちゃできたのにって思っているに違いない。"


そうかなぁ。

寒い中でも嬉しそうに歩くというか、手綱ごと俺を引っ張っているように感じるんだけど。

手綱を話さないようにするのが大変なんだけど。


"それは、つまりなんだぁ、寒いから早く聖なる泉の湧く町に行って、街の花街の馬小屋で若い牡馬相手にブイブイ言わせたくて急いでるんだぞ。"


ブヒヒヒヒヒヒヒィーン


馬が後ろを振り返って歯をむき出しにして、嘶いた。


怨霊様、違うってよ。

寒空の中を動き回れるのがうれしいんだってよ。

狭い馬小屋で、まして♂に言い寄られるのはまっぴらだってよ。


"おまえ、馬の言葉がわかるのか。

適当な事を言っているじゃねえだろうな。"


怨霊様に対して歯をむき出しにして嘶いているんだから、怨霊様のさっきの言葉に反抗しているんだよ、きっと。


"なにぃぃぃ。

たかが雌馬、しかも、G様仕様のかぼちゃ頭のシュウに手綱を握られている間抜けな奴のくせに、水の大精霊である私に歯向かうとはいい度胸じゃねぇか、えぇぇぇっ。"


プンスカした怨霊様が馬の前に行き、にらみ合う格好になった。


ブッシュ


馬がくしゃみをして、前方に鼻水が飛んだ。


"きっ、きったねぇなぁ。

たかが馬の分際で大精霊である私になんちゅうことしやがる。"


怨霊様がからかうから怒ったんだよ。


"そんなわけねぇ。

私の姿も念話もこいつにわかるはずねぇ。

第一、人間の言葉をわかるはずがねぇだろうが、こいつに。"


ブッシュ

ブッシュ


"てめぇ、こらぁ、うまぁぁぁぁ。

またやりやがったな。"


ひっひっーん


怨霊様、馬にまで完全になめられたな。

まぁ、鼻水も水の仲間だろ。

水の大精霊であればしっかりと受け止めなきゃ。


"なんだとう、シュウ。

もう一回言ってみやがれぇ。"


だからぁ、鼻水も水の仲間なんだから大エロ水の精霊さんはがっちり受け止めなきゃって。


"ちがうって、その前だよ。"


馬に完全になめられた?


"そうじゃなかっただろうがぁ。"


う~ん、確か、馬にまでなめられた?


"その「まで」ってのは誰のことだぁ。

まさか、てめぇのことじゃねえだろうな、シュウ。"


あっ、あぁ、ノーコメントで。


"くらえ、ブリザーーーーーーード。 "


そのあと、街道沿い立つ氷のモニュメントがのこされたとか、なかったとか。



ギゼラ司祭様よりエルネー枢機卿様のお返事を受け取った後に昼食をかき込み、急ぎオットカル教会、そして、宗教都市ソーコスォッヘを後にして、俺はヒンギルー王国の東西を結ぶ大街道を西に進んだ。

そして、東西の大街道と南北の街道の交点の街にたどり着き、今度は北に街道を進んだ。


ちなみに、噂の幻の氷のモニュメントは聖な泉の湧く町の手前、1日半のところに立っていたらしいとのことだ。


司祭様が枢機卿様のお返事を急いで届けなくても良いと言ってくれれば、数日王都見物に出かけようと思っていたのにな。


"何でバカ正直に昼食を取る時間も惜しんで聖なる泉の湧く教会に急ぐかなぁ。

せっかく念願の旅に出たっていうのによぉ。

お前の言う通り王都に滞在して2、3人押し倒してから聖なる泉の湧く教会に向かっても良かったんじゃねぇか。"


あぁ、やっぱり、急いで聖なる泉の湧く教会に向かって正解だったか。

王都に行ったら瞬時に怨霊様の呪いで傀儡とされ、何をさせられていたか。

間違いなく捕まって首チョンだったよな。

急いで大司教様のもとに向かってきてよかったよぉ。


"シュウ、そんなに大司教の奴が恋しいのか、あぁん。

お前、花街の妖艶なねぇちゃんたちよりも加齢臭満載の大司教の方が良いんつうのか。

生の大魔王を加熱しすぎて脳みそが灰化してきたんじゃねぇのか。"


何故かニヤニヤしながら俺を見下げている、怨霊様。


あぁ、大魔王様の高貴な香しい加齢臭は確かに脳細胞に致命的なダメージを与えそうだよな。


"お前もしかして、ち〇●んを元気にする脳野が大魔王の加齢臭で溶けちゃったんじゃねえんだよな。"


まさかぁ、そんなことはないと思うけど。


"それとも♂としての♀への欲望を掻き立てるところがだめになり・・・・・・"


ちょ、ちょっとぉ、怨霊様。

そんな事はないと思うが、万が一そうだったとしたらどうなるんだ。


怨霊様は何故か50mほど後ずさった。

まぁ、念話だからそれだけ離れても話に困ることはない。


"♂にしか興味を示さなくなる。"


えっ。


"これで説明が付くだろうがぁ。

王都の花街の妖艶なねぇちゃんじゃなくて、聖なる泉の湧く教会の加齢臭の坊主の下に急ぐ理由がよぉ。"


えぇぇぇぇぇっ。

そんなことは絶対にない。

任務だから急いでいるだけだって。

決して、女の子に興味がなくなったわけではないぞぉ。


"本当か。

大丈夫か。"


もちろん大丈夫だ。


"本当にだな。"


思いっきり引きながら疑惑の目を向けてくる怨霊様。


大丈夫だって。


"じゃあ、大司教に返事を届ける前に薬屋の小娘を押し倒してみろ。

そうしたら信じてやる。"


えぇぇぇっ、そんなのできねぇ。

首かち〇●ちんのチョンが確定な事なんて出来ねぇ。

どっちにせよもう押し倒せ無くなんだろうがぁ。


"そん時は念願の大司教に押し倒してもらったらいいんじゃねぇ。"


なんでそうなるんだぁぁぁぁぁ。


俺の◎チョンが確定したところで、懐かしい聖なる泉の湧く町に通じる門が見えてきた。

活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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