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雪の下

作者: 恵那氏

寒空の下、男は歩いていた。

足を進めるたびにザクザクとブーツが音を鳴らして孤独感を紛らわす。

時折ズボンのポッケに突っ込んでいた手を挙げて頭に積もる雪を叩き落としては鼻をすすっていた。男が考えていたのは家の暖房ただ一つである。そこには何か特別な悩みや感情は持ち合わせておらず寒いから早く暖かい場所に行きたいという純粋たる思いだけだ。月光が反射してやや明るい道を足早に進み、ブーツの音だけがそこに残った。




かじかむ手でドアを開け、家に入った男は外套の雪を手で払いながら足だけで靴を脱ぎ散らかしては一目散にストーブへ駆け寄り、電源を入れる。鼻腔をつつく独特な匂いを感じながらやかんをその上に置いて湯を沸かし、近くの椅子に腰を掛ける。


座ったとたんに疲れがどっと足を中心に押し寄せてくる。ああ、今日の仕事も大変であった。明日も雪が降るのだろう、それはとても憂鬱なことである。


ボーッとストーブが音を作るだけの静かな世界。この世界にいると余計なことを考えてしまう。暖かくも冷たくもないこの中途半端な時間を男は愛していた。また、男は決まってこういう時は取り留めのないことが気になりだしてはぐるぐると頭を議論させて一人で完結してきた。それは趣味であり、習慣であり、自分が毎日を変わりなく過ごしていくためのルーティーンであると男は感じていた。


そもそも雪はなぜこんなにも寒いのだろうか、と男は今日も腰掛けながら考えていた。

雪が寒い、いや違う。そもそも雪は冷たいだ。寒いとは言うまい。寒いとはなんだ、この気候、この気温である。冷たいも寒いも同じだ、そこに違いなどありゃしない。文で考えたら違和感だろう。ああ雪は固形だ、しかし温めたら溶けてしまう。では液体と化した雪は雪といえるのか、否言えまい。それは水なのだ。もうそこに私が定義する雪は存在し得ない。


その時、突如世界はやかんの汽笛の音色で幕を閉じる。

億劫そうに立ち上がり、やかんをどかして湯を注ぐ。

湯を飲めばじんわりと体を温める。この温まりは先ほどまでとは別の世界だ。

暖かなぬくもりの世界ではそこに安堵が生まれる。安堵は安らぎだ。だから今私は最も安らいでいるのだ。そう思いながらお湯をコップに注いでは体を温めていき、何杯目かで男の考えは飛躍した。

そうとも、こんな湯も、もとは雪だったのだ。雪はお湯になった、それならば外の雪も私のお湯なのだ、暖かな世界なのだ。ああ、それならば雪は温かなものになれる、可能性の塊だ。それならば外は……

窓に目を向ければそこにあるのは白き暖かな世界。いてもたってもいられずに男は外に飛び出した。家から、世界から。すがすがしい解放感と幸せを抱き、そして男は温かな雪に囲まれて満足そうに眼を閉じた。






「向こうの通りに気が触れてるおっさんがいたろ?アイツ四日前に凍死してたらしいぜ。」

「あら、最近見なかったけど亡くなっていたの、でも凍死なんて不思議ね、あの男性のお宅ちゃんとストーブがあるじゃない。石油のタンクを外に置いとくところ見かけるわよね。」

「ところがどっこい、外で死んでたのさ。なんでも家の前で大の字になって死んでたんだと。」

「そらなんでまた外なんかに。」

「警察の人が部屋に入ったら窓が開いてなかったんだと。頭が回らなかったんだな。かわいそうに。」


思いついたので初めて短編小説を書いてみました。拙くてすみません。

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