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例え話

作者: 狩屋ユツキ

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例え話


作:狩屋ユツキ




10分程度




一人語り




語り部:




------------------


例えばの話だ。


もしもの話だ。


これは例えようもなく「if」のお話だ。


君が何かを認識する時、誰かを伴うことは多いだろう。


だが、その世界の共有が、本当になされているとは言い難いことは認識しているだろうか。


例えば赤い花を見たとする。


君は赤い花を見たと思う。


でも隣りにいる君の大切な人はその花をピンクだと認識するかもしれない。


今からするのはそういうお話だ。


どうしようもなく悲しいお話だ。


どうしようもなく切ないお話だ。


そしてどこまでも救いのないお話だ。


それでもまだ続けるかい?


……いいだろう。


君のそういうところは嫌いじゃない。


さて、認識に齟齬そごが生まれた場合、それによって更に何が生じるか。


普通は軋轢あつれき、というものが生じる。


だが、それは往々にして表には出ない。


君は赤い花を見て「きれいだね」と言う。


君の大切な人は「そうね、きれいね」と応える。


会話はそうやって成り立っている。


つまり此処には「きれい」という認識だけが共通していて、花の色に齟齬そごが生じていてもそれは「なかったこと」にされるということだ。


「なかったこと」にされた花の色はどうなるか。


もちろん、その花に色は「なかった」ことにされるのさ。


どうだい、わかるかな。


きれいな花には、色はなかった。


そういうお話になってくるのさ。


無色透明の花を君たちはきれいだと持て囃したわけだが、そこにはなんの問題も起こらない。


……わかるかな?


君たちは花の個性を無意識に「なかったこと」にしたということに。


ああ、責めているわけじゃないよ。


そういう認識が殆どで、取りこぼす言葉の意味は産声も上げずに殺されるということだけ覚えてくれればいい。


そうやって人は生きている。


認識を一つ一つお互いに改めていたら、多分世界は平和からもっとかけ離れたものになっていただろうから。


平和のために、小を殺し、平和のために、大を取る。


何の問題もないさ。


ああ、何の問題もない。


……ところで君は、どうして私がこんな話をしているかわかるかな?


それはね、君が自分の個性は全部人に伝わっていると勘違いしているからだよ。


全部、というのは言いすぎかな。


一部でも伝わっていると勘違いしている、のほうが正しいかもしれない。





……見かけ、大事だよね。


第一印象は見かけの十秒で決まってしまう。


そんな大事なことは共有すべきだ。


違うかい?


君は可愛いのかもしれない。かっこいいのかもしれない。


君はブサイクなのかもしれない。ダサいのかもしれない。


でもそんなこと、他人にとっては「どうでもいい」ことだという話だよ。


悲しいお話だと言っただろう?


君の容姿など、他人にとってはどうでもいい認識で、話題に上らない「殺された」個性なんだ。


君がどんなに素敵な容姿をしていたって、


君がどんなに酷い容姿をしていたって、


他人は正直、それを君の個性として認識しない。


美しければ褒めそやしてくれるかもしれない。


醜ければ慰めてくれるかもしれない。


君がその話題に触れてさえくれば、個性としてまだ生きる道はある。


だがね、それが君にとってどんなメリットが有る?


褒めそやされたり慰められたりして気持ちのいい思いをしても、他人との感覚共有が完璧でない以上、それは言葉上の感覚共有であり、真の意味で君と他人は全く別の認識をしているはずだ。


よく心の美しさが顔に現れる、というけれど、あれも一種の認識齟齬にんしきそごだね。


例えば君の優しさが本物かどうかなんて、他人の誰もが、君本人でさえもわからないというのに。


心の美しさが見かけに現れるなら、どんなに世界は醜かったろうね。


私は性悪説を信じているんだ。申し訳ない。


だがね、救いはある。


これは悲しいお話だが、どこにだって欠片の救いくらいはあるものさ。


これは全て例え話だ。


これは全て「if」の物語だ。


最初に言っただろう?


安心したまえ、このお話は全て無に帰す「殺された思考」の一つに過ぎない。


何故なら私と君との認識もまた、違うものであるはずなのだから。





……ところで君は、世界は五分前に始まったという哲学の考え方があるのはご存知かな?


目を閉じて五分後に君の世界は始まった、つまり五分前にはそこには何もなかったという考え方だよ。


全ては五分の繋がりに過ぎないという刹那的な考え方だが、これは実に先程の話によく似ている。


殺された五分の


それは一体どれだけの世界とどれだけの可能性を殺して、君の世界は成り立っているのだろうね。





例えばの話だ。


もしもの話だ。


これは例えようもなく「if」のお話だ。


だから私は君にいつも問いかけている。


無意識の海というところから、いつもいつも問いかけている。


返事はないがね。


いつだって返事はない。


だが思い出してほしいときくらい、私にだってあるのさ。


何かを認識するときにちらりとでもいい。


この私の例え話が脳裏をよぎったなら。


それだけで私は満足だ。


私の名前?


それが必要かい?


仕方ない、君がそういうのであれば名乗っておこう。


私のことは忘れてもらって構わない。


どうせ覚えていられないのだから。


……私の名前はスーパーエゴ。


君であって君以上に君である、君だよ。




【連絡先】

@MoonlitStraycat(Twitter。@を半角にしてください)

kariya.yutuki@gmail.com(@を半角にしてください)


反応が早いのはTwitterのDMです。

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