図書館Ⅲ
「そ…それ?」
肩に手が恐ろしいほど食い込んでいく痛みに耐えながら私は問いかけた
「ええ、そう。あなたが今持っている大事なもの…それについて調べに来るんじゃないかってここで待ってたら案外あっさり来てくれて助かったわ。」
ただ後ろから語りかけられているだけなのに何か恐ろしい威圧感を感じる
「…………あなたはなぜ『それ』を欲しがるの?」
……おそらくこの人は私が持ってるネックレスのことを狙ってる
そして…知っている
…………図書館の本にすら情報がなかったこれについての情報を
その問いを聞いてその人はふふっと息をはきだした
「ええそうね…『歴史を変える代物』とでも言っておこうかしら」
歴史を………変える?
ただのアクセサリーが?
「さあ、そんなことどうでもいいの。早くこちらに渡しなさい…そうすれば何もしないわ」
この人が欲しがっているのは歴史を変える代物…だという…
そんなものだと言われたら気軽に渡せるはずがない
しかも図書館にもない情報を知る見知らぬ人にだ
………絶対良くないことが起こるに決まってる
手をぎゅっと握りしめてじっと耐えた
どうしよう…どうしよう…なんとかしなきゃ…
その時、バチンという音があたりに響いて、明かりが消えて一気にあたりが暗闇に包まれる
………そういえばここの図書館の照明はすべて自動化されているらしかった
開館時間後の照明は消し忘れ防止のため職員が予め延長をしないと、閉館時間後一定で消えるようになっている…と図書館の紹介文に書いてあった
…………閉館時間を過ぎて、自動で電気が消えたんだ
「レイ!伏せろ!!」
オルクの叫び声が横から聞こえ、反射的にその場にしゃがみこんだ
その瞬間、私の頭の上をシュッと炎が通過した
「もう…おとなしくしてて、って言ったのに」
恐る恐る上を向くと女の人は、妖艶な笑みを浮かべながら片手で炎を握りしめていた
「図書館で火遊びなんて悪い子ね…しょうがないわ、ボクに付き合ってあげる時間はないんだけど……っ」
肩を掴んでいた腕が思いっきり後ろに引かれる
「キャア!!」
「レイ!!」
私を後ろへ吹き飛ばすと、女の人はオルクと向かい合った
「悪い子にはお仕置きしないとね…それとあなたにも少々用があるしね」
反射的に耳を塞ぎたくなるほどの爆発音とともに本棚が壊れ、次々と本が床へ散らかる
ズキズキと痛む肩を抑えながら体を起こした。
うす暗くてよく見えないが、前方でオルクがあの女の人と戦っているみたい…
……………でもここは場所が悪すぎる
……彼は炎の魔法使いだから
「クソっ、ここじゃ魔法が使えねえ」
「あらあらあら…逃げてばっかりじゃ面白くないわよ。もっと楽しませて頂戴」
女の人は小さなオーブのようなものを3つ周囲に浮かべて、そこから稲妻のようなものを出してじわじわと彼を壁際に追い詰めていた
……………雷電属性の人なんだろうか?
ってそんなことより、早くオルクをなんとかしないと…
何か…何かいい方法があれば…
「ぐわああっ!」
オルクの叫び声とものすごい衝撃音が部屋の奥から聞こえた。
……くらってしまったのだろうか?
「お、オルク!大丈夫なの?」
「はあ…はあ…クッソ…」
返事は聞こえなかったが、大丈夫みたいだ
…………少しだけホッとした
「あら?もうおしまいなの?そんなのつまらないわ」
女の人のオーブが輝き出す
「オルク!!っ…」
1歩足を踏み出すが、踏み出した右足に激痛がはしり、その場で倒れ込んだ
さっきふっとばされたときにひねったのだろうか?
奥に見えるシルエットがゆっくりと振り返る
「うふふ…大丈夫よ。ちゃーんと手加減してるから。彼に死んでもらうわけにはいかないもの…でもこれだけじゃお仕置きにならないわよねえ…もう一撃くらいどうかしら?」
なんとかしないと……
…必死に頭を働かせるが何も思いつかない
自分にできること………たった一つだけある
…………やるしかない
ネックレスを服の下から取り出しそっと両手で包んだ
大事なテストの前にいつもするようにつぶやいた
…………ひいおじいちゃん、助けてください
ネックレスは何も反応しなかったが、少しだけ勇気が出た
……………行くぞ…
私は床に散らばっていた本の中から分厚くて、表紙が硬そうな数冊に目をつけた
それらに視点を合わせ、集中する…
……………………浮いて!!
静かに念じて手をギュッと握ると本たちはふわふわと宙を漂い始めるそのまま天井近くまで浮かべた
…………あとは……
「ま、待って…オルクを…殺さないで!」
必死の形相で大声を出した。
「あらあら…うふふふ、そ~んなに心配なの?大丈夫だって言ってるのに」
楽しげにこちらを振り返る女の人にバレないようにゆっくりと天井付近の本をシルエットの頭上ヘ動かす
…………………今だ!!!
パッと手を開く
浮いていた本がバサバサと女の人に降り注いだ
「キャアアア!」
バリーーン…
女の人の悲鳴が聞こえると同時に、オーブが地面に落ちて砕けちった