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すげーいい奴が転生してきました。

たまにはいい奴も転生してきていいと思います。

渓さんを送り返すと決意した次の日に、渓さんは町から帰ってきた。僕達は今までのように食事を3人で取っていた。だが、今までより言動に気をつけなければならない。渓さんに勘付かれ、疑われたらほぼゲームオーバーだろう。


「そういえば、俺が町に出ている間2人は何してたんだ?」


「…えっと…ですね?」


強制ゲームオーバーになる質問を最初からしてこないで欲しい。こんなときは神様に頼ってしまおう。神様にちらちら視線を送る。


「…私は食糧君と一緒に今後の課題を考えていたよ。能力の使い方についてとかね〜。渓は町でいつもみたいに冒険者と殴り合っていたのかい?」


核の部分を避けつつ、話題を渓さんに逸らす完璧な答えをしてくれた神様。


「そうだな。冒険者のレベルは結構上がってきている。あれなら、道中のモンスターごときには負けないだろう。」


そういえば異世界の人にはまだ会ったことがないな。せっかくの転生なのに全く異世界っぽいことしてないな。僕がしたことといえば食糧を出しただけ。名前すら呼ばれてないな。お前とか食糧君とか。てか覚えてるのかな。


「…ところで気になっていたんだが、お前の食糧はどこから出ているんだ?どこかにストックがあって出しているって訳ではないんだろう?」


「…僕なんかには原理が全く分かりませんよ。能力を使えば出てくるってだけです。」


ちなみに能力の使い方は特典取得のときに覚えた。


「食糧を出すってだけなのか?なんか随分とあっさりしてるな。」


「無から有を出すってだけでもすごいじゃないですか。それだけで十分ですよ。」


その発言をしたとき、一瞬神様は消えた。おいおい、あんたも点滅する信号だったのかよ。


「…能力がそれだけ?何か隠してないか?」


「え」


そこで自分のミスに気づく。食糧の方の能力はそれだけだと思うが、僕は元の世界に送り返す能力も得たのだ。なのに能力はそれだけと言ってしまった僕の無意識の嘘が、渓さんの能力で見抜かれてしまったらしい。あれ、詰んでね?この状況。

なんかこっちめっちゃ見てる!!心拍数がはやい!ドキドキする!これが…恋…?


「渓、新しい転生者がきたっぽいよ〜。頑張ってねぇ〜」


「そうか、行ってくる。」


そう言い、渓さんは家から出て行った。


「神様まじ神っす。ありがとうございました。」


「まぁ正真正銘神なんでね!君がボロを出したから急いで転生させて来たよ。詰めが甘いなぁ食糧君。」


「いや!でも難しいですよ!嘘をつかないで誤魔化すなんて!」


「そういうときは真実を交えて話すんだよ。まぁ慣れるまでは私が君のフォローをしてあげるから早く誤魔化し能力を上げな?」


「頑張ります。めっちゃ焦りました。」



ーーーーーーーー


「ようこそ異世界へ!」以下略。

テンプレ以外に挑戦するのもいいと思いますよ渓さん。僕はもうその挨拶覚えちゃったよ。


「今日の転生者は急いでたから、よく分からない人だったよ。特典もあんまり良いものじゃ無かった気がする。」


隣で神様はそう言い僕を見る。なんか神様からあんまり覚えられてないの可哀想だな。僕がさっき発言やらかしたのが原因だけど。やめろ、そんなジト目で僕を見るな。

転生者に目を移す。またも僕より少し若い感じのメガネの少年。かなり細い。17歳くらいかな。


「お前はこの世界で何をするつもりだ?」


渓さんはお決まりの質問をする。


「ボクは…この世界では真っ当に生きて、みんなの役に立ちたいです!そのためならボクはモンスターや魔王にだって挑めます!!」


「この世界では、ですか…神様。」


「あぁ、彼は元の世界では誰からも必要とされない空気のような人間だったんだろうね。そういう人間は元の世界に戻りたくないという思いが強すぎるから、異世界に転生させるケースがあるんだ。現実逃避をずっと望んでる人かもねあの子は。」


たしかに僕がよく読んでいたラノベ主人公は、みんな揃いも揃って、現世でいじめられてるだの、引きこもりだの、友達に裏切られただの現実世界に恨みがあったもんな。そういう奴ほど異世界てを無双とかしてるんだがな。

僕の立場と入れ替わってみろラノベ主人公。嘘禁止、筋肉と神と共同生活、筋肉の方はやべー奴、有用な能力は食糧生成のみ。なんでこんな縛りが多すぎるんだ…


「お前の心意気は分かった!今からお前の実力テストを行わせてもらう!」


渓さん達は戦闘を始めたようだ。


「神様、メガネくんの特典はなんですか?」


「【弱さを強さに変える能力】だったかな。肉体の強化と、弱いところが強くなる。どちらかといえばハズレの方だね。肉体強化ならもっと良いのがある。なのに選んだってことは…」


「自分の弱いところを変えたいんですかね。人はちょっとした能力ごときでは変わることはできないですが。」


「……」


僕らは肉弾戦を始めた2人に視線を移す。


「おいおい、お前は役に立ちたいんだろ!?もっと本気で向かってこいよ!」


分かっていたけど、渓さんが余裕で押している。

メガネくんは多分人と争うことははじめてだろうな。


「能力の使い方は神から習っているだろう。この異世界では、弱ければ死ぬぞ。」


渓さんはそう言い、メガネくんの足を蹴り、転ばせる。


「…っ!ボクだって!」


メガネくんが渓さんに殴りかかる。渓さんなら避けれただろうが、正面から受け止める。そこには能力により、貧弱な腕が立派になった腕がある。渓さんと同じくらい太いんじゃないか…?いや肉体強化も乗ってる腕と、何の能力もかかってない渓さんの腕が同じくらいな方が異常だった。僕も人生6周すればああなるのかな。


「お前はこの異世界にとって役に立つのか!?」


渓さんがメガネくんを殴る。これも分かってたけど容赦ねぇな。異世界の現実を見せてる。


「立ってやりますよ!役に立たないとダメなんです!」


負けじとメガネくんも渓さんを殴る。見ていてもわかる重い一撃だった。 それに対し、渓さんはメガネくんの脇腹を蹴飛ばす。脇腹は鍛えることが難しく、攻撃を喰らうとかなり辛くなるはず。某陽キャなら一撃で終わってるな。

だが、

「まだだぁ!!」

メガネくんは痛がりながらも食らいつく。彼の原動力は何なのか。


「ボクはこの世界で色んな人の役に立って、みんなを笑わせてやるんだ!!」


すっげぇ良い奴じゃん。今までの某陽キャとかより全然良い奴だ。 某陽キャが僕に与えた印象がでかすぎる件。


それから、1時間ほどが経っただろうか。

「…お前をそこまで動かすものはなんだ?」


メガネくん程ではないがボロボロの渓さんは問う。


「……多分察してると思いますがボクは元の世界でいなくても困らない存在として生きてました。親もボクの兄ばかりでボクは家族の一員ではありませんでした。

だから、今度は誰かの役に立って!ボクの存在の証明をしたいんです!!」


自らを鼓舞するように叫び、渓さんに向かう。


普通は迫害してきた他の奴らに復讐とかに走りそうだが、自分を変えるとは。かっこよ。お前がラノベ主人公でいいよもう。弱い部分が強さに変わる。現世での弱い心を強い心に変えることができたのは特典ではなく、本人の気の持ちようだろう。


「…お前の気持ちはよく分かった。自分の存在意義を確立させ、周りの役に立ちたい。


かっこいいじゃねぇか!グレないで真っ直ぐなその心。気に入った!お前の異世界入りを祝福してやろう!!」


第3号メガネ君はボロボロの体で少し驚いたような顔で笑う。そりゃそうだ。目の前の怖い筋肉に急に認められたら誰でも恐怖を感じる。


真っ当な人間がレアだったのか、別の何かがあるのか、神様は少し悩む素振りを見せる。


「…こう見てると渓って良い奴だよね。なんで、私達があいつを送り返さなきゃならないんだか。1周目のあいつに聞いてやりたいよ。それにメガネの子もいい子だ。現世でもあの性格なら馴染めただろうに。」


「それで悩んでたんですか。複雑になるのも分かりますね。」


渓さんはメガネくんと自己紹介を交わしている。


「いや、悩んでいたのはそれだけじゃないよ。

君のことだ。」


「え。僕ですか?」


何をしたのだ僕!?某陽キャをいじりすぎたのが悪いか!?ごめんね某陽キャ!


「普段転生者を選ぶときは、現世でやらかしたこととかで決まるっていうのは説明したよね?それでまだ腑に落ちないことがあってね…。

君が現世でやべー奴だったのか、未練が無いのかがまだハッキリしてないんだ。

原則として転生者のこれまでの生活などは神は知っているんだけど、君の生活には彼のように雑に扱われたりはしてなかったはずだろう?」


「つまり君は内面がヤバい奴だったんだね?食糧君。」


「…そうですかね。ボクはボクのことしか分からないので、自分がヤバい奴かの判断は難しいです。特に内面なんて。」


「そうか。そうだよね。悪いね変なこと聞いて。さぁそろそろ私達もメガネの子に自己紹介をしに行こうじゃないか!」


神様は少し離れた渓さん達のところは向かう。その後を僕は追う。


さっきの会話の相手が神様で心底良かった、渓さんだったら嘘が見抜かれていたな、と思いながら。





今後も時々脳内に、某陽キャが出てくるかもです。

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