第6話:魔法
元気良くウェスタと別れ、気持ちの良いスタートを切ったショータだが
歩いて20分後、ホーンベアー再来
「新手のイジメですか?神様・・・・」
居るかどうか分からない神様に文句も言いたくなるさ
別にショータは森の中を突き進んでたわけではない、ちゃんとした道を地図を見ながら歩いていただけだ
そろそろ町が見えてくるかな、と思いつつ地図から顔を上げると
「グォォォォォォォォォォ」
「それって、もしかして挨拶なのか?悪い俺は急いでるんだ」
というより、いつの間に現れたんだよ・・・
俺、地図読んでたよな。ふと前を見ると熊ってどういう状況だよ
と、考える暇も無く。突進してくる。
なぜ初対面なのに敵意むき出しで突進して来るんだよ
さすがに両手を広げて抱きしめるわけも無く
それを横に転がって避ける
ここは魔法って奴を使ってみるか
この世界の魔法の呪文みたいな物はは英語だったし何とかなるだろう
しかし、いま重大なことに気付いた
何を唱えるとどんな事が起こるかわからない
例えば『fire』と唱えたとしよう
何が起こるか、わからない。きっと火に関係することが起こるのだろう
手から炎が出るのか?
それとも地面から?
上から降ってくるのか?
場所を指定、出来るのか?
実際に見ないと分からない。もし唱えた瞬間に手が燃え出したりしたら・・・
考えたくも無いね
しかし、俺が知ってる魔法が一つだけある。実際に見たし、何が起こるかも分かる魔法だ
俺は熊に右手の手のひらを向けて唱えた
『fire arrow』
これで手のひらから棒状の炎が熊に向かって飛ぶはずだ
たぶん・・・
手から飛び出たのは炎というよりレーザーだった
パシュンといいながら飛んでいったその赤い光は熊の後ろにある木に当たった
当たった瞬間、轟音が鳴り響く、そしてバキバキバキと木が倒れた
隣にある木に折れた木が当たったが光が当たった木だけが燃えている
ホーンベアーが後ずさって驚いているが、使った本人は開いた口が閉じないほど驚いていた
2秒ほど間が空いた後ホーンベアーが全速力で逃げていく。さすがにこれは怖いだろう、実際、使った俺も怖い・・・
「おいいいいい、ウェスタの使った魔法と全然違うじゃないか!」
見事なツッコミだ
ウェスタは「ホーンベアーを倒せるほど強力な魔法は使えません」と言っていたがこの魔法だけで木を丸ごと一本、ゴウゴウと燃やすほどの威力だ
ショータは自分の手のひらをまじまじと見つめた、普通の右手だ。
「ここから出たんだよな・・・」
もう一度、燃えている木を見てみる、木は燃え尽きて炭の固まりになっていた
ここでまたウェスタの声が頭に浮かぶ「異世界から来た人は魔力が桁違いなので・・・」
ここまですごいとは驚きだ。寝言で英語を喋っちまったらどうするんだよ
これは今晩は寝れそうに無いな
ショータは町があるであろう方向に向かって歩き出す
このままじゃマズイな、異世界から来たってばれてしまう・・・
多分、俺の魔力ってのは回復してしまっているのだろう
さっきの魔法で確信した、あれは普通じゃない
それなら俺を召喚した奴らに探知されてしまう、どうやって探知するのかは分からないが魔法で探すのには間違いないだろう
魔法は極力使わないほうがいいな、俺が魔法を使えば死人が出てしまうだろうし、人前で見せるのも危険だ。
別につかまったら殺されるとか閉じ込められるとかは無いだろう、むしろ国王として良い待遇で迎えられるだろうが元の世界に返る希望が消える
そう考えると前国王たちが「元の世界に帰りたい」と言って暴れ無いのも不思議だな
いや、まてよ。魔法で撃退しつつ進めばいいんじゃないか?
ダメだな、それなら異世界から召喚した人を国王にする制度が成り立たない
何か、いろいろとありそうだな。でないと126代まで国家が続かないよな・・・
これはウェスタに聞いた話だが、セト王国は3800年前に建国されてから今まで126人の国王が召喚されてきたそうだ
現在の国王が死ねば、また新しく召喚して・・それを繰り返して国を成り立たせる
まあ、召喚されてすぐに熊とかに運悪く遭遇して命を落とすものも居たのだろう
今の俺の肩書きは
旅人ショータ=127代セト王国、国王アサヤマ ショータ
なわけだ、なんだか笑えてくる
そうして考えているうちに町の入り口に着いた。