第50話:発想
顔を上げるとそこに居たのは・・・
「シルス?」
「そうですよ!少し前に助けてもらったシルスです!大丈夫ですか?」
驚きで目を丸くして手を差し出してくる。
その手を取ってよいしょっと起き上がる。
「凄い偶然ですね!これだけ広い商業都市で再開できるなんて驚きました。」
「どうしてここに?」
「ちょっとした商売です。ここで新しい商売を始めれば必ずと言っていいほど成功しますから。あれ?ショータさん。ティファは何処に?一緒に行ったと思ってたんですが・・・」
「シルス、少し助けてくれないか。俺、もうどうしたらいいかわからなくて」
「わかりました、ここではなんですので近くの酒場にでも入りましょう」
必死さが伝わったのだろうか、シルスが真剣な顔をして答えてくれた。
「・・・ということなんだ。」
「それは・・・大変でしたね。」
シルスに何か飲みますか?と聞かれ酒は飲めないと丁重に断り、ここであった事を一つ残らず話した。
「ティファは俺が捕まらないようにと罪をかぶったんだ。何とか助けなきゃダメなんだ。でもどうすればいいのか分からなくて」
シルスが右手の親指でで顎をかきながら真剣に悩んでいる。
10秒、20秒と沈黙が続いた。
「ショータさん。状況は最悪です。ショータさんの言う通りならティファは重罪人です。強盗に窃盗、殺人未遂、町で噂になってますが他国の王女も襲ったとか・・・
その男達の罪を全部かぶることになってしまいます。」
「そしてここで最も注意しなければならないのはティファの行動です。ティファはショータさんが罪をかぶらないように捕まった。そうなるとショータさんを守るために全ての罪を認めてしまうでしょう。
そうなれば一生牢獄から出れません、最悪の場合は死刑です。」
死刑と言う言葉がどっとのしかかる。
「だめだ・・・絶対にそんなことはさせない。だってティファは無実なんだ。何もしてない。無関係なんだよ。」
「落ち着いてください。助ける方法はあります。男達の行方ですが検討は付きます。男達はこの都市にに必ず居ます」
「え・・・。でも・・」
シルスが三本の指をたててこう言った
「理由は三つあります。邪魔者が消えたので逃げる必要が無いんです。」
一つ指を折る
「それに此処は商業都市、見つけるのは不可能に近いです。」
もう一つ指を折る
「最後に、怪我をして此処を出るのは危険だからです。ここから次の町まで数日は掛かりますから」
「男を捜せないのならダメじゃないか・・・どう頑張っても無理だ。」
「ショータさん。男を捜す必要は無いんです。」
「何故だ?男に真実を話させないとティファの無実が証明できない」
「考え方が逆ですよ。”ティファの無実を訴えれば騎士が男達を捜してくれます”」
「考え方が逆?でも、どうやって・・・」
「今日は12日ですから・・・裁判の日は18日後ですね。」
「その裁判の日に証拠がなくても良いんです。ただ、起こったことを正直に話せば騎士はそれを無視することは出来ないんです。
どんなに、突拍子のないことを言っても矛盾が無ければ騎士はそれを調べなくては為らないんです。騎士が男達を見つけられなかったとしても時間は稼げます。」
やっぱりシルスは頭が良い。こんな考え全然気づかなかった。考え方が逆とは・・
「そうですね、裁判の日までに出来るだけこちらが有利になる情報を集めましょう。」
「て、手伝ってくれるのか?」
「あたりまえですよ、ショータさんには返しても返しきれないくらいの恩が有るんですから!」
にっこりと笑って答えてくれた。その笑顔には何故か力強さがあった。