第44話:文字
ふと考える
魔術文字が英語で機能するのなら、俺がそこらへんの棒に英語で文字を書いても機能するのだろうか・・・
なんだか無性に試したくなってきた。
自分は文字を書くだけ、魔法は使わないなら大丈夫だろう。
「ティファ、ちょっとこっちに来てくれ」
そう言って地面に指で小さく文字を書く
【Light】
っと・・・
「なーに?ショータおにいちゃん」
しゃがんで手元を覗いて来る
「ここに魔力を少しだけ流して欲しいんだ」
そう言って地面を指差す。
うなずいて文字に手を置くティファ。
数秒後、ティファが文字から手を離すとその文字は少し光ってた。
「おー、光ってる」
なんだか嬉しい
ティファが横で驚いた顔をしている。
ふと気配を感じて顔を上げるとさっきの親子が居た。
「お母さん。あの人、地面に向かって話しかけてるよー?」
こんどは足早に去っていくのではなくてこっちにやって来た。
そして、しゃがんでるショータと横に立って驚いてるティファを見ておばさんはティファに言った。
「このお金でこの人に何か美味しいものでも食べさせてください。」
そう言って鞄から何枚かの銀貨をティファに渡した。
そして、今度は俺を見てこう言った。
「人生、色んな辛い事が有るけど頑張るのよ!」
そう言うと子供を連れて去っていった。
「なぜだ!」
これは喜ぶべきだろうか怒るべきだろうか・・・
いや、怒るべきだった。
「ショータおにいちゃん、魔術文字を使えるなんてすごいね!」
笑いながら銀貨をポケットの中に入れて聞いてくる。
今の出来事をスルーするつもりだ!優しさが感じられるけど笑いが抑えられてないからね
しかも銀貨はポケットの中、ちゃっかりしてる
「この世界での魔術文字は俺が居た世界の文字と同じみたいだからある程度は書けるよ。」
まあ、英語の成績は余り良くなかったけど簡単なものなら書ける。
「あれ?でも魔術文字を扱える人間はごく少数って言ってたけど文字だから覚えれば誰でも書けるんじゃないの?」
文法はともかく単語なら簡単に覚えられるはずだ。
「書くだけだとダメなんだよ。書く人がちゃんと文字を理解して発動する効果も理解してないと書いてもただの落書きと同じなんだよ。」
「ああ、なるほど。」
考えると確かに難しい。文字の組み合わせは無限にあるし、
その中から魔法と関係がある単語を見つけるとなると、それは大変だろう。文となればなお更だ。
それに、この世界での文字は見たこともない文字だった。ティファに一度説明されたけどぜんぜん理解できなかった。
たぶん、この世界の人が英文を理解するのもかなり難しいのだろう。
なんだか変な知識ばっかり着いてくるな・・・
「さて、次はどこに行こうかな?」
立ち上がって考える。
「あれ?ショータおにいちゃん。腕輪はどうしたの?」
「そういえば言ってなかったけど、砕けた。」
あれだけ砕けていれば修理とかそんな問題じゃないだろう。
「ああ、ショータおにいちゃんの魔力が凄いから耐え切れなくなって・・・」
ティファがぼそっとつぶやく
「ん?何か言った?」
「ううん、それより生きたい所があるんだ!」
「よし、どこに行く?」
ティファはポケットから銀貨を取り出してにこやかにこう言った。
「美味しいものでも食べにいこう!」
ショータはいまだ光ってる地面の文字を靴でこすって消した。
大丈夫です。まだ作者は生きてます!