第41話:知略
「あ?この状況で勝ちだって?ひっひひ、頭でもおかしくッ・・」
男の言葉は最後まで続かなかった。
横から人が物凄い勢いで何かが突っ込んできたからだ。
横から突っ込んできた人物は男に綺麗な膝蹴りをお見舞いしていた。
甲冑を着けた右足で・・
その右足が男の頭の側面を綺麗に捕らえて男を弾き飛ばす。
ああ、アレは痛いだろうなぁ。
そこで考えておいた言葉を早口で言う
「助けてください!いきなりあの男が襲ってきたんです!」
今さっき膝蹴りを食らわせた男に言う。
見た目で騎士だとすぐ分かった。その後ろにも数人、騎士の格好をした人が居る
騎士はこっちをチラッと見ると男に向かって剣を抜いた。
「分かった、お前達は下がっていろ。私はこの都市の警備を任されているものだ」
この状況、男が無防備な少年の首にナイフをつきつけ
後ろでは女の子が泣きそうな顔でへたり込んでる。
誰が見てもナイフを持ってる男が悪者だと言うだろう
「おい、そこの男。暴行の罪で連行する!」
男は無言だった。
というより気絶してるようだった。
さすがに、あの不意打ちじゃあ受身も取れないしモロに食らったんだろうな
その間にやることがある
「なあ、大丈夫か。おーい、助かったぞー」
へたり込んでる女の子に声をかける
「い、いまのはなんじゃ?ぬしはいったい・・・」
「それより頼みがある。騎士に何か聞かれたら俺の身元を証明してくれ」
「それはいいが・・あとでちゃんと説明するのじゃぞ」
だいぶ落ち着いたようだ。
男が気絶しているのを確認すると騎士がこっちに近づいてきた。
後ろで待機しているところを見ればこの人がリーダーみたいだ
「君達、大丈夫かい?それよりさっきこの近くで赤い光が物凄い魔力と共に放たれたそうだが、君達は何かしらないかい?」
「助けてくれて有難うございます。あの気絶している男が出したんです!なんだか”俺は異世界から来たんだ!”と変なことを良いながら」
「あの男が・・・そうか、この都市の近くに来ているという噂は聞いていたが。本当だったのか・・・」
もちろん嘘だ。
「失礼、大事な用が出来たの私は失礼する。ここらの路地は危ないから気をつけるんだぞ」
「「はい」」
二人そろって返事をする。
騎士は気絶している男を丁寧に抱えるとすたすたと歩いていった。
人、一人を軽々と持ち上げるなんて騎士ってのはどんな鍛え方をしているのだろうか・・
「主、今のはなんじゃ?どうして騎士が来ると分かっていたのじゃ?それに・・・」
騎士が見えなくなると女の子が矢継ぎ早に質問してくる
「順番に説明しようか。俺はそんなに強くないし、本当に魔法もろくなのが使えない。だから助けを呼ぶことにしたのさ。相手との会話を大声でしたり。それでも誰も来なかったから強烈な光と轟音なら誰か来るかと思って」
もちろん男に当てることも出来たんだけど、アレが当たれば相手は確実に死ぬだろう。
でもどうしても人は殺したくなかった。
「誰も来なかったかも知れぬじゃろ?」
「いや、絶対に来ると分かっていた。今、この国は国王を探そうと必死になってる。だからどこの町にも感知型の騎士が居ると思ったんだ。それに、ここは商業都市だから犯罪もたくさんあるだろうし騎士は必然的に必要だ。それにさっき歩いてる時にチラッと騎士を見かけたから」
「じゃあ、さっきの魔法は!?」
「それは秘密」
にっこりと答える
さすがに教えるのはリスクが高すぎる。
「むぅ、では妾にいろいろ質問したのは・・・」
「騎士が来た時に何かとトラブルにならないためだよ。」
「ふむ・・・。とにかく助けてくれて有難う。感謝している」
「感謝されてもなぁ、俺は感謝されるようなことは・・・・」
「そうだ、礼といっては何だが主にこれをやろう」
そう言うと服の中に手を突っ込んでゴソゴソと何かを取り出す。
服から出てきたのは石
握りこぶしくらいの大きさの
そこらへんに転がってそうな丸い石だった。
「あ、ありがとう。なんだか良く判らないけど貰っておくよ」
ずっしりと重い石を渡される
服の中から石って・・・
石の収集家か何かなのだろうか、
到底価値があるとは思えない
「主!名前はなんと言う?妾はカーシャだ」
「俺の名前はショータ」
「ショータか覚えておく。じゃあ、妾は行くところがあるのでな。この恩は絶対に忘れぬぞ、いつか必ず恩返しに行く!約束だ」
そう言うとトテトテと走り去っていった。
なんだったんだよ・・・
迷子になった結果
適度な疲労感と戦利品の何の変哲も無い石
もう、裏路地を通ろうなんて二度と考えるものか
そう心に誓うショータであった
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「姫様!どこに行っていたんですか!ずいぶんと探しましたぞ。一国を治める主として・・・」
「ふっふ、この国の若者に会ったぞ。乱暴な奴も居るがなかなか骨のある奴も居るのぉ」
「姫様?」
「ショータと言ったか、いつか会いに行って驚かしてやろう。ふっふふ」
もう、ストーリが滅茶苦茶になってきた。
小説って書くのは難しいものだと今更ながら痛感しています。