第38話:思考
「な、なんだ。ただのガキじゃねぇか。お前もこっちに来やがれ。」
そう言いながら強引に腕を引っ張って横道に連れて行かれる
「ああ、なんでこうも俺は運が悪いかなぁ。」
本当に泣きそうだ。
まずは状況整理
改めて目の前の3人組を見てみる
大きなナイフを持った小柄な男、ヒゲを生やして腰から剣をぶら下げてる男、何も持ってるようには見えないけど大柄な男。
え?もちろん勝てる気がしない
そして俺を呼び止めた女の子
年は俺と同い年くらいかな?
汚いローブを着ているショータと違って汚れ一つない綺麗な服を着ていた。誰からの目から見てもただの市民とは言えないだろう。
たぶん、どこかの貴族だったりするんだろうなぁ
泣きそうな顔をしていたショータの横から声が聞こえた。
「いきなり呼び止めてすまぬ。主よ、妾を助けてはくれまいか?礼はたっぷりするぞ」
「おちついて聞いてくれ。俺はただの非力な少年なんだ。武器もまともに扱えないし、魔法もほとんどダメだ。」
小声で言い返すと女の子が口を開けて数秒固まる。
「そ、それはすまんことをしたのぉ。主は強そうに見えたんじゃ・・・」
「妾の人を見る目は確かなはずなんじゃが・・・」
がっかりした様子で下を向く
確かにこの世界じゃ外見だけが強さじゃない。
魔法なんてものが有るから相手の強さが分からない
剣を持ってるから丸腰の相手に勝てるなんてこの世界じゃ通用しないからなぁ
「くひひっひっひ、そこの兄ちゃんも有り金と持ち物を全部出しな!」
小柄な男が笑いながらナイフをプラプラと振る
調理用ナイフ、鞄、全部ティファに預けて有るんだぞ、それに一文無しだ。
「悪い、俺は何も持ってない」
「妾もじゃ、すまんのぉ」
「くひひひっ、ふざけてると血を見るぜ?10秒数える、それまでに出さないとその腕を切り落とすぜ。くひひっ」
笑いながら目の前でナイフを振られる
そして周りの二人も笑ってる
いや、俺は嘘じゃないからね!。ふざけてないからね!。本当に何も持ってないからね!
隣の女の子も嘘は言ってないのだろう。命よりも大事なものを持っているのなら別だが
「きゅーう」
カウントが始まった。
せめてナイフでもあれば威嚇くらいは出来たんだけど
「はぁーち」
隣の女の子は・・・持ってないだろうな
持っていたら既に出してるだろうし、ここから逃げれるような魔法があれば使ってただろう
「なぁーな」
使えなくても武器を持ってればハッタリ位にはなっただろうに
あれ?ハッタリ?
ハッタリなら・・・
「ろぉーく」
ふと思い浮かんだ言葉がひっかかる
目を瞑って真剣に考える
いや、だめだ。ハッタリだけじゃ無理だ・・・
いや、待てよ・・・これなら・・・
そして、ここから逃げる方法を、この状況を打破する方法を・・・
「ごぉーお」
そして、閉じていた目をパッと開けて隣に居る女の子に小声で声をかける。
見ると少し震えていた。
「今から言うことに真剣に答えてくれ!」
「え?」
予想外の声に少し驚いたようだ
「この都市に仲間は?」
「いる」
「あんたの地位はここの騎士より上か?」
「たぶん」
「あんたは犯罪者か?」
「ちがう!」
簡単な質問をすると即答してくる。
よし、これなら勝てるかもしれない
「ぜぇーろ、時間切れだ。脅しだと思ってたのか?くひひ、本当に腕は要らないようだな。ひひっひっ」
そして、男は笑いながらショータに向かって大きなナイフを振り上げた。