第33話:恋愛
目の前にいる少女の名前はティファ・・・だったかな
身長は小学生くらいで髪の毛は燃えるような赤、そして瞳の色も赤色だ。
見た目は普通の小さな女の子だ
しかし、こんな小さな体であのトラを一撃で・・・・
明らかに普通じゃない
この子、かなり強い。というより物理法則を無視してるようなきがするぞ
ナイフを置いて俺の目の前までテクテクと歩いてくる
「ショータおにいちゃんには言われたけど、やっぱり私はショータおにいちゃんに着いて行きたい!」
「ティファ・・・助けてもらってなんだけど、やっぱり護衛はいらないよ。自分の好きに生きれば良いって言ったじゃないか。俺みたいなのについて来ても何も無いぞ?」
本当にただ俺が元の世界に帰るための旅だ。ついてきたって何も得には為らない
「ショータおにいちゃんは"自分の好きに生きれば良い"って言ったよね。だから私はショータおにいちゃんの護衛をしたいの。」
たしかに護衛としては申し分ない強さだった。
「でも・・・」
「断っても着いていくよ?私の好きにするもん。私の人生だから私がやりたいことを好きに決める!」
こう言われてしまったら反論できない。自分で言ってしまったからなぁ。好きに生きろって・・・
「分かった、俺の負けだ。でも俺が異世界に帰るための旅なんだぞ、俺はいつか異世界にかえってしまう。俺は居なくなってしまうんだぞ?それでもついてきたいのか?」
「うん、ショータおにいちゃんが無事にもとの世界に帰れるまででも一緒に行きたい!」
「よし!じゃあ行くか!」
「うん!」
そして二人は次の町へと・・・
「って、ちょっと待て。そろそろ降ろせよ!このクマぁ!それ以前にティファ、突っ込め!」
現在の俺の状況を思い出してほしい。いまだクマのフサフサした腕でお姫様抱っこをされた状態だ。もちろん抱っこされた状態でティファと会話をしていたのだが・・・
ティファとの会話がこの不自然な状況で自然に進んだことが不思議だ。
とりあえずこのクマに害意が無いことは分かったけど、この状況が理解できない
その瞬間、三つの視線が交差した
俺はクマに"早くおろせ、なんでこんなことになってんだ?"という視線
クマはティファに"こいつは敵か?"という視線
ティファは俺に"ショータおにいちゃん・・・どうしてこんなことに・・・"という視線
目は口ほどにものを言う、今まさにその意味が分かった気がした。
そして、ティファが何かに気づいたように言う
「ショータおにいちゃん、もしかしてこのホーンベーアを倒したりした?」
なんだかすごく嫌な予感がする
「ああ、カッターナイフで首をブッスリと・・・でも刃が途中で折れたんだろうな。こうやって生きてるし・・・頭に修正液がついたあとがあるし。まず間違いない。まさか、ホーンベーアには負けた相手に弟子入りするとか変な習性は無いよな?」
「うん、それは無いよ。」
少し安心した
「なんだ、すこし焦ったじゃないか」
その直後
「ホーンベアーは負けた相手に婚約を申し込むんだよ。より強い子孫を残すためにだって。」
ホッとして笑顔になった俺の顔が引きつった。
最悪だった。
よりによってクマと・・・
さっきからのお姫様抱っこの理由が理解できた。
そして、あのトラから俺を守ったのは婚約者を守るため・・
あと、ここまで追いかけてきたのは食べるためじゃなくて愛してるからか!?
「って言うことはこいつはメスなのか?」
そんなことはどうでも良かったが、とりあえず聞いておく
「見たところそのクマはオスだよ?」
おもむろにクマの顔を覗き込む
「グォ!」
「いや、グォって言われても分からない!。それに俺は人間だ。お前にはもっとふさわしいクマの妻が見つかるさ。それに残念だが俺は男だ。」
「グォ~グォ」
意思疎通を試みた俺が馬鹿だったようだ。