第31話:救援
さて、目の前で臨戦態勢のトラと後ろでコフゥーコフゥーと言ってるクマ
この状態でもう何分足っただろう。
そういえば魔法以外にも武器を持ってた。
そう思い出して腰に挟んであるナイフをゆっくりと抜く
武器屋ではハーヴェイに「使い物にならない」と言われたナイフ・・・
たしか料理とかを作る時に使う調理用のナイフらしい
それを握り締めてゆっくりと構える。
え?コレで戦えって?またまたご冗談を・・・
ただ構えて ナイフですよ~危ないですよ~ とアピールしてるだけだ。
あれ、トラのほうが唸ってる。怒らせてしまったのか・・・
といきなりトラが走ってくる、それも一瞬だった。
なんという瞬発力、時速何キロだろう・・・
一瞬で俺の目の前に来たかと思うと口をあけて噛み付こうとする。
一口で頭を持っていかれそうな口だ。
頭から牙まで数十センチ、後数秒で頭が無くなる。
俺はと言うとナイフで応戦するでもなく魔法を使うでもなく
いやまあ俺にはそんな勇気もそんな身体能力も無いわけで
しゃがんで頭を手で押さえて丸くなった。そしてギュっと目を瞑る。
ああ、短い人生だった、でも死亡原因が”食われた”ってのは嫌だなぁ
・・・
・・
・
あれ?
食われてない
そして聞こえてきた動物の悲鳴
「キャウン」
ゆっくりと首を上げるとトラが右のほうで倒れてる。
まさか!誰か助けに来てくれたのか!
やっぱり普通の道だから人通りもあるだろうし・・・
手に持っていたナイフを鞘に戻してゆっくりと立ち上がり後ろを見る
そこには助けてくれたであろう者が居た。
そして助けてくれた恩人を見上げた。
たぶんその大きな手で殴ったんだろう
しかし、やけに毛深いな・・・
そしてお礼を・・・
「ありがとう」
「グォ!」
クマだった。
見まごう事なきクマだった。
「だよなぁ、薄々判ってたんだよ。」
こんなトラとクマが一緒に居る状況で助けに入る人なんて居ないよなぁ
そしてこの状況を一部始終を見てた者、ホーンベアーしか居ないよな
あれ?このホーンベアーどこかで見たことある。
首に傷があって、額だけが白く染められたような色をしている。
俺がこの異世界に来て始めて会った生き物、あの時のホーンベアーだった。
修正液と消しゴムとカッターで戦った時のことを思い出す。
たしかに仕留めた筈なのにまだ生きていたのか・・・
やはり絶体絶命。また食いに来たのか・・・何という執念
そしてクマが俺を両手で持ち上げた。精一杯抵抗をしてみたが軽々と地面から足が離れる。
そのまま頭をがぶりと・・・はいかなかった
しかし、なぜお姫様抱っこだ?
ってトラが起き始めてるし・・・
何故かクマにお姫様抱っこをされているショータ
目前では機嫌の悪そうに立ち上がろうとしてるトラ
そんな奇妙な光景はそこにあった。