第25話:宿屋
「宿屋ってあの宿屋か?俺が働いてたあの」
ハーヴェイが驚いた顔で聞いてくる。
こんなに驚いていたら顔の形が変わらないだろうか、心配だ。
「ああ、もう遅いからとりあえず休もう、ここで野宿はしたくないからな。ついでに宿屋でこれからのことを話し合うつもりだ」
「これから?」
「みんな奴隷から解放されたわけだけど、これからどうするのか」
50人のこれからを話し合うんだ、時間もかかるだろうし
「よし、じゃあ行くか」
ここで予想外のことが起こった
そこには
白いローブを着た少年、その後ろに最近まで奴隷として働いていた約50人が町の中を堂々と行進していた。
さすがに目を引いた
もう夜だというのに出歩いている人は何人か居たわけだ
前から歩いてきたおばあさんは何故か奇声を発しながら走り去っていくし、交差点では知らないおっさんと偶然にも目が合った時、大きな口を開けて熱い視線をもらった。
「これじゃあ、待ち合わせを町の入り口じゃなくて宿屋にしとけばよかったかな」
でも、町の入り口が一番最適だった、50人固まっても誰の迷惑にもならないし。みんな知ってる場所だろうし、距離的にも屋敷から中々の位置だ
そんなことを考えているうちに宿屋に着いた
「よし、お前等。ちょっと待っててくれ。宿屋の親父に50人泊まれるか聞いてくるから」
宿屋の扉をそっと開ける
「すみません〜。泊まりたいんですが・・・」
とりあえず、控えめに呼んだ
もうこんな時間だ、ほかのお客を起こしてはまずいだろう
すると奥のほうから宿屋の親父が出てきた
「貴方ですか。遅かったですね、あの奴隷はどこです?」
なんだか常連化してる気がする
「宿屋の外に待たせてあるよ、今日も泊まりたいんだが」
「奴隷は外に?ああ、泊まりですね今回も1泊ですかい?」
「ああ、1泊だけど今回は人数が多いんだ、何部屋空いてるんだ?」
「30部屋くらいは空いてますよ、60人は入れますよ。あの奴隷、そうだな今日は外で寝てもらおうか」
なんだかニヤニヤ顔でひどいことを言う奴だ
「じゃあ50人くらいなんだが大丈夫かな?」
「ええ、50人なら大丈夫ですよ、お泊めできます。・・・え?」
宿屋のオヤジが不思議そうに俺の顔をじっと見る
俺は笑顔で親父を見つめる
そして
「よしみんな!泊めてくれるってさ!」
くるりと方向転換して入り口に向かって控えめに叫んだ
その瞬間、ドアがバタンと音を立てたかと思うと約50人全員がなだれ込んできた
「お世話になります!」
「食事はつくんだろうな?」
「相部屋かぁ」
「あの・・・トイレはどこですか?」
「とりあえず部屋に行くこうぜ」
「ハーヴェイ、案内してくれよ」
ああ、宿屋がにぎやかになったものだ
ここであることに気付く
あれ、おれ今文無しじゃなかったっけ・・・