第18話:筆記
ゴーン、ゴーン、ゴーン
「なあ、ハーヴェイ。これって5時の鐘だよな」
一応確認を取っておく
「ああ、5時だ。」
よし、作戦開始だ!
まあ、今の俺が出来ることは全員がこの場所に来れるように祈りつつ待つだけだが・・・
考えても仕方ない、今の俺に出来ることは無いのだから
「ハーヴェイ、シルス。紙とを持ってないか?あと、書く物も・・・」
今のうちに出来ることをやっておく
「紙?おれは持って無いな。シルスなら持ってるんじゃないか」
そういいながらシルスのほうを見る
「はい、持ってますよ。会計の仕事をしてましたから、いつも紙は持ち歩いてます。でも紙なんて何に使うんです?」
シルスは小さなかばんの中からA4用紙くらいの紙と羽ペンを取り出して渡してくれた。
「ちょっと借りるよ、やらないといけないことがあるんだ」
紙をひざの上に乗せて羽ペンで書こうとして気付いた。
今まで使ったことの無い羽ペンと膝の上で文字を書くなんてかなり難しいがここは我慢する
ゴードンの契約書にサインしたときも羽ペンで書きにくかった
せめてボールペンとか鉛筆があればなぁ・・・・
まてよ、持ってるじゃないか!かばんの中にボールペンが
かばんの中から筆箱をを取り出してボールペンを探す
あった、これで書きやすいはずだ
・・・・・・
そういえば俺、字は読めるけど・・・書けねぇ
「悪い、シルス。今から言うことをこの紙に書いてくれないか?」
そういってボールペンと紙をシルスに渡す
「これは?」
シルスが首をかしげながらボールペンを見つめる。横にいたハーヴェイもどれどれと覗き込む
「ああ、字を書く道具でボールペンって言うんだ。こっちの世界には無いんだろうな。羽ペンよりも書きやすいと思うよ」
「それじゃあシルス、今から言うことを書いてくれよ?」
目を輝かせながらボールペンをカチカチと触ってるシルスに言う
「はい、わかりました!」
「契約書、アサヤマショータは貴族ゴードンと交わした契約にて生じた利益をハーヴェイに譲渡する」
簡単な文章だけど大切な事だ
「書けました、このぼーるぺんってすごいです!インクを着けなくても勝手にインクが出るんですね!」
目がキラキラだ、このまま光線が出るかもしれないくらいキラキラだ。
「ああ、じゃあ、その紙を貸してくれ。」
受け取った紙の下に自分の名前を書き込む
「ハーヴェイもこの紙にサインしてくれ」
「なになに?ゴードンとの契約で生じた利益?」
「まあ、いいから信じてサインしてくれ。これが後々すごいことになるから」
「よくわからないけどサインするよ」
ショータが書いたサインの下にスラスラとハーヴェイが名前を書く
「それじゃあ、その紙を大事に持ってるんだ。すべて終わったら役所に届けるんだぞ。」
「ああ、分かった」
「あと、シルス。このボールペンはプレゼントだ」
近くのホームセンターで買った安いボールペンだがこの世界では珍しいものだろう
「ほ、本当にいいんですか!こんな、高価なものを・・・」
「俺が持ってても使うことは無いだろうしあげるよ」
まだ筆箱には数本ペンは持ってるし、まずこの旅にボールペンは必要ないだろう
わぁー、って目を輝かせてるシルス
なんだか新しい玩具を買ってもらった子供みたいだ
「おっと、1人目が来たぜ」
そう言ってハーヴェイ指をさす
指の指す方向を見ると1人、2人と事前に解放したハーヴェイの仲間がやってきていた