第15話:契約
ゴードンの屋敷にて
今、メイドさんらしき人に部屋へ案内されているわけだが
廊下もピカピカ、天井もピカピカ、壁もピカピカの何処を見回してもピカピカな屋敷だった
言ってる意味が分からないって?
高級ホテルをさらにテカテカさせたものを想像すれば丁度いいくらいだ
ゴードンの屋敷のドアをノックして数秒後、このメイドさんが現れた
そして
「何か御用ですか?」
と笑顔で聞かれた
こちらも笑顔で
「ゴードンさんに奴隷の貸し出しについて話したいんですが」
「はい、ではこちらへ・・・」
と今に至るわけだ
平民が貴族の屋敷に入れるかどうか、それは宿屋のオヤジが奴隷を借りてるんだから俺もは入れるとわかってた
とりあえず侵入成功
「ではこの部屋でお待ちください」
つれてこられた部屋もやはりピカピカだった、置いてある椅子も、机も・・・そろそろピカピカしすぎて目が痛くなってくる
誇り一つ無いような部屋だ、どれだけ綺麗好きなんだよ。
近くにある椅子に腰掛けてゴードンの登場を待つ。
ゴードンを倒すために一つ演技をしなくちゃならない。
さて、うまくいくだろうか
ゴードンを倒して奴隷を解放する・・・
言ってみれば綺麗な事かもしれない
しかし、これはただの偽善だ
ゴードンはこの世界で頑張ってこの奴隷の事業を始めたのかもしれないし
ゴードンには奴隷の貸し出しなんて酷いことをしなくちゃならない理由があるかもしれない
ハーヴェイたちだって何か理由があったのかもしれないし
自業自得で奴隷になった者もいるかもしれない
会ったこともないゴードンを悪と決め付けるのはダメなんじゃないだろうか
そして、本当に俺のやってることは正しいのだろうか
数分後、ゴードンが現れた
簡単に言うとデブだ。そしてテカテカしてる
のそのそと歩いて俺の前の椅子に腰掛ける
「あの、俺、ショータといいます。今回はゴードンさんが奴隷の貸し出しをしてると聞いて来たんですが・・・」
「ふむ、私がゴードンだ。ゴードンさんだと?平民が!ゴードン様と呼べ」
ここでキレちゃダメだ、冷静に・・・
「すみません、ゴードン様。早速ですが奴隷を借りたんですが」
「あの糞どもか、何人借りたいんだ?1人の値段は銀貨1枚だ」
今度は人を糞呼ばわりだ、頭に血が上る。ここでキレたら台無しだ。冷静に・・・
「えーと、早急に10人ほど借りたいんですが」
「10人か・・・重労働にでも使うのか。ふむ・・・・いいだろう。さて契約書はどこにやったかな」
そりゃあ用意できるだろうさ屋敷には常時10人いるんだから
「あの、絶対にお貸ししていただけるんでしょうね」
「なんだと?」
ゴードンの顔つきが変わる
「いや、ゴードン様を信用して無いのではなくて。必ず奴隷10人が必要な仕事なんです。こちらも生活がかかってるので、なにか保障があればと・・・」
今にも怒り出しそうな顔だ
「何を言ってる、私が貸すといったら必ず貸す。保障とはなんだ?」
ここからが重要だ
「私は明日、奴隷10人を使って金貨10枚を稼げる仕事をするんです、しかし失敗すると金貨10枚の負債を抱えてしまうんです。
なのでゴードン様が奴隷を10人貸し出せない場合は1人につき金貨1枚を払ってもらえないでしょうか。そして奴隷を全員貸し出せれば私が金貨2枚をお支払いします。どうでしょう悪い話じゃないでしょう」
「なるほどな、私がちゃんと10人貸せれば金貨2枚、貸せない場合は1人につき金貨1枚か・・・」
これはゴードンが必ず勝てる条件だ、なにせ屋敷に居る奴隷10人を屋敷の外に出さなければ勝てるのだから
しかしショータは罠にかかった獲物を見る目でゴードンを見る
「本当に俺のやってることは正しいのだろうか・・・」そんな気持ちは吹っ飛んだ、こいつは悪だ
「いいだろう」
ニヤニヤ顔で契約書らしきものに書き込んでいく
まあ普通に考えて金貨2枚をタダで貰えるような物だからな
一泊3食付の宿が銅貨3枚、銀貨1枚だと3日泊まれる、そして金貨1枚だと33日だ、それが2枚だと66日
普通に2ヶ月、暮らせるような大金だ
「では、貸し出しの日は明日。奴隷の返却は1週間後。奴隷10人を銀貨10枚・・・だから金貨1枚で借ります。」
「よし、契約書が出来たぞ。サインしろ」
契約書を読み返して間違いが無いことを確認して自分の名前を書いた
なぜか不思議と文字は読めた
「変な文字を書くんだな、見たこと無い・・・、まあ良いこれで契約成立だ。おい、そこの!この契約書を役所に届けて来い」
人をなんだと思ってるんだよ。
「あの、ゴードン様。失礼ですが今の時刻は・・・」
「あ?、今は・・・4時だな。何か用事か?」
4時、なかなか良い時間だ
「い、いえ。最後に借りる奴隷を見ておきたいんですが」
「ふん、そうだな。借りる奴隷が使い物にならなかったら困るだろうからな」
「よし、では地下牢に行くとするか・・・」
「はい」
準備は整った、ここからが本番だ