第9話:市場
ハーヴェイの右腕には複雑な模様の刻んである鉄の腕輪がはめられていた
「これが奴隷の証だよ、この腕輪は着けると魔力が一切出せなくなるんだ。」
なるほど、この世界は科学技術が発達しないで魔法で進歩してきたのだから魔法が使えなくなると何も出来なくなってしまうな
火をおこすのも光をともすのもこの世界では全部魔法っぽいからなぁ
森で熊と遭遇してもナイフでは勝てないだろうし、かといってこの世界には銃なんて気の利いたものなんて無い
「そんな腕輪、外しちまえばいいじゃないか」
「この腕輪はつけた本人のゴードンかそれ以上の地位の者、ゴードンは2級貴族だからそれ以上の地位の奴が外さない限り取れないんだ。」
「やっぱり自分では取れないように出来てるのか、よくできたシステムだな。」
この町に貴族はゴードン1人、ゴードン自身が奴隷をわざわざ逃がすことは無いだろうから、町の外にいる貴族に頼んで外してもらわないといけないわけだ
しかし、町の外にはホーンベーアーとか危険な動物がいる。運よく他の町にたどり着けたとしても貴族に合える保証もないし、外して貰えるどうかかも怪しい
しかも、その貴族が2級貴族以上で無ければならないらしい。
死にに行くようなものだ。
「でも確立は0じゃない、諦めるにはまだ早いんじゃないか?そりゃあ、やる気も失うわな。でも、一生だぞ。一生奴隷のままでいいのか?なんなら俺が待ちの外に連れて行ってやろうか?」
そう言うとハーヴェイは俯いて答えた
「仲間が居るんだよ・・・、俺のほかにも奴隷は居る。その仲間を見捨てて俺だけ逃げるわけにはいかねぇ。」
「そうか・・・、ちなみに仲間は何人くらいいるんだ?」
「俺を合わせて50人程度だな」
「それはさすがに多すぎるな、外部からの助けも求めれないように仕組んでるのか、つくづく酷いやつだなゴードンって奴は」
話し合ってる間に市場に着いたようだ。
見たこともないような果実、何に使うかよく分からない緑の液体、そして剣などの武器だ。
何に使うのかは分からないがホーンベアーの頭が置いてある店もある
「すごいだろ、ここでは欲しいものがあれば大体のものが揃うぜ」
さきほどの暗い話を吹き飛ばすような元気でハーヴェイが言った
さすがにこれはすごい、おおきな商店街みたいなものだな
好奇心がくすぐられる。
まずは疑問その1
「す、すごいな・・・。あの緑の液体は何だ?」
「あれはスアフィールって言う調味料だ、味は分からないけどな」
疑問その2
「調味料か・・・じゃあ、あの丸いビー玉みたいなのは?」
「ビー玉?ああ、マジックボールのことか、あの玉は魔法をこめることが出来るんだよ、例えばファイアの魔法をマジックボールにこめて置くと、
魔法が使えない奴でもマジックボールを使ってファイアが使えるようになるんだ。使える回数や威力は魔法をこめる術者しだいだな。
空のマジックボールの相場は1個で銅貨1枚だとさ、でも強力な魔法がこめられたマジックボールは値段が跳ね上がるんだ。だから上位の魔法使いはマジックボールに魔法をこめて売るだけで金には困らないのさ」
「便利な道具があるんだな・・・」
「俺も子供の頃は上位の魔法使いを目指してたんだけどな、そういえば俺、ファイアの魔法がこめられてる奴をマジックボールなら1個持ってるぜ、一度も使ったことが無いけどな」
そう言いながらポケットから赤いビー玉のようなものを取り出す。
魔法が使えない奴でも使える道具ね・・・・
「それを使ってみんなで逃げればいいじゃないか!」
「何だよいきなり叫んで、ファイアの魔法でどうやって町から出るんだよ。頭を燃やして何になるんだ!」
逆に叫ばれた
頭を燃やす?なにかことわざみたいなものか?
「え?、頭を燃やすって?」
「ファイアの魔法も知らないのかよ、ファイアは自分の髪の毛に火をつける魔法だぜ」
「ちょっとまて、ファイアって言うから。てっきり攻撃系とかの魔法かと思ったら髪の毛を燃やす魔法かよ」
ホーンベアーとの戦闘でうっかり使わなくてよかったー
もし使っていたら・・・
ホーンベアーと遭遇
↓
魔法発動!
↓
燃え盛る俺の髪の毛
↓
・・・
考えたくもねぇ!
いや、まじで死んでたかもしれない。俺の使う魔法はかなり強力だ。
というかなんて使い道のない魔法なんだ・・・
誰だよこの魔法を考えた奴
「怖いな・・・」
「おい、どうしたんだ顔を真っ青にして」
「いやなんでもない、大丈夫だ。次を案内してくれ」
「次は武器屋でも行ってみるか?」
「ああ」