表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鏡の国のアリス、兎の不思議なオモチャ箱〜SSSランクの神ウサギがカッコつけて異世界となった地球を歩く〜

作者: さいは

 僕のオモチャ箱が、壊された。


 僕の瞳に映る物。知識に間違えが無ければ人間の女の子。どうやら入浴中の様だね、いや入浴前の洗浄作業中かな?


 何故なら僕はお湯でずぶ濡れ。そして彼女の体が泡まみれだからだ。


 中々に可愛らしい少女だ。黒目黒髪のロングヘアー、年の頃は15〜16と言ったところか。


 まずい事態だね。もっと壮大な緊急事態でもあるが目下の問題はまさに目前にある。


 少女の悲鳴が木霊する。


「誰!? 誰ですか! チャラ男!? 何処から入ったんです! 出てってください! そして見ないでください!」


 少女は日本人の様だ。やれやれ、これだから人間の少女は……。


 それにしても誰、か。困った事にどうやら僕は人の姿を手に入れてしまったらしい。


「All right.落ち着きたまえ。僕はヴァン・エターナル・オーラ・オリジンフィーネ一世。通称アリスラビットさ」


「出てってください!!」


 絶叫。そして力づくで浴槽から引き上げられ体を押される。中々に力強い、外見よりも逞しい少女だな。


「落ち着きたまえと言った筈だ、離しなさい」


 少女を落ち着かせる魔法の言葉を放つ。だがその効果は無く浴室の外へと追いやられていく。


「お父さん! お風呂場にヘンタイが!!」


 おや、これはまずい事態が続くね。僕の予想が正しければ彼女の血縁、産みの親である保護者が来てしまう。

 その結果導き出される答え。突如浴槽へと忍び込んだ変質者として、僕はきっと酷い目にあってしまう。


「何者だ貴様はぁ!! 私の娘に何をしている!!」


 彼女の父のご登場だ。オールバックの髪型に銀フレームの眼鏡がキラリと光り、知的そうな印象を与えてくれる。

 しかしその顔は怒りに歪み、瞳からは敵を見つめる血走った光が伺える。

 そしてその右手には武器だろうか? モップの様な物が握られている。


「少女の保護者たる父よ、落ち着きなさい。僕は世界を見守る者、君たちに害を加える者じゃないさ」


「やかましい! 私は娘を守る者だ!!」


 男はモップを振り回し攻撃を仕掛けてくる。


 痛い! やめなさい! 話をすれば分かり合える筈だ!


「出て行け!! 警察を呼ぶぞ!」


 警察だと? 私を誰だかわかっているのか? どうやらわかっていない様だな。痛い! やめろと言っているのに!


 私は逃げる様に彼の家を駆け回る。ドアを開き逃げ、いくつかの道を試した後にようやく玄関を見つけ外に出る事に成功する。


「二度と来るなぁー!!」


 好きで来たわけじゃないさ、だが二度目に来るか来ないかは約束出来ないな。この世界に絶対など……、きっと無いのだから。


 涼やかな夜風舞う暗い住宅街を逃げ走り、賑わいを見せる通りへと出る。

 ここは……。映る景色、先ほど出会った人間の様子からすると日本か。困った事になったな。


 立ち止まり、閉店後のショーウィンドウを眺める。鏡写しに映る僕の姿は人間の物。

 茶色の長髪、高い背丈。ふむ、人型としては美形の部類だな。

 着ている服装は燕尾服の様な物。だがジャケットが無いな、白シャツにベストのみか。


 確認を終えて歩き出す。


 しかし本当に困った。思考しながらの動くのは危険だな、周囲の危険に対して疎かになってしまう。


「てめえ兄ちゃんぶつかっといて挨拶も無しか?」

「なんだてめえ、どこぞのホストか?」

「随分と小洒落た格好してるじゃねーか」


 ぶつかったばかりだと言うのに挨拶無しとは、気の短い者だな。


 顔に傷のある男、スーツを着ている事から極道、と分類される人間か。

 なんて事だ。さっきの人間たちもだが、この者たちも僕が誰かわからないらしい。

 ……僕は滅多に人前に出ないし当然か。


「初めまして。僕はヴァン・エターナルーー」


 瞬間、男の拳が眼前へと迫る。


 それを回避する為に言葉が中断されてしまう。


「何をするんだい? 人の子よ」


 疑問を率直に口にする。突如ぶつかってしまった僕に対し不快感を露わにし、その怒りを発散する為に殴りかかる。野蛮だな。

 しかしおかしい。拳で殴ってしまえば彼の手だって痛い筈。


「てめえ何避けてんだ」

「こいつ外人か?」

「俺らの事舐めてるのか?」


 先程よりも危険が大きそうな気配がする。こんな所で力を使いたくなかったが、仕方あるまい。

 体に魔力を巡らせる。そして彼らの眼前に右手を差し出し、指を鳴らす。


「眠れ」


 そして振り返り歩き出す。


「なに、怪我をさせるつもりは無いさ。だが一晩ぐっすりと眠るが良い」


 歩き出した僕の肩が何者かに掴まれる。


「何ふざけた事してんだ?」

「逃がすと思ってんのか?」

「少し痛い目見なきゃわかんねえみたいだな」


 男達の体に力が満ちる。炎が風が、雷がそれぞれの拳に宿り力を放つ。


「Oops」


 思わず声が漏れてしまう。参ったね、まさか人間に魔法が使えてしまうとは。そしてどうやら僕の魔力は大きく減衰してしまったらしい。


 兎にかく、逃げるしか無さそうだな。


 肩にかかる手を払いのけ素早く駆け出す。


「おい待ちやがれこの野郎!!」

「絶対にぶっ殺してやる!」

「逃げ切れると思ってんじゃねえ!」


 やれやれ、こんなに走るなんて久しぶりだ。いつかの勇者と戦争した時以来か、いや魔王と世界を救った時だったかな?


 何にせよ僕の逃げ足を舐めないでくれたまえ。例え慣れない身体、魔法が使えなくとも逃げ足には自信がある。




 どれだけ走ったろうか。僕を追う三人の声は消え去り街並みは明るくなり周囲の人間の数も増えている。


「ここは……、駅前か。人混みが凄いね」


 駅前の広場では歌や踊り、様々なパフォーマンスをして人々を楽しませる者がいる。


 そして残念な事に、パフォーマーの中には魔法や超能力を披露している者もいる。

 水流を操る者、体を分裂させる者、竜にまたがり空を駆る者。


 そして竜を見上げると金属の塊、いくつもの円形の物体が、物理法則など気にせずに空を舞う。そしてそれを避ける様に中生代白亜紀の翼竜が飛んでいく。


「なんてことだ……。この世界に僕のオモチャがばら撒かれてしまった……」


 悲劇的だな。思わず口にしてしまう。

 感傷に浸るのはこの辺にしておこう。大事なのは今後どうするか、か。


「あなた……! さっきの変質者……!!」


「おや、恐らくだがお互いに望まない再会だね。どうだろう、お互い見なかった事にしてこの場を離れるというのは」


 素早く声へと振り向き距離を取る。


「ふざけないでください!!」


 こんな人混みの中でそんなに叫ばないでくれたまえ。見るがいい、周囲の人間たちが注目しているじゃないか。


「ふざけているつもりは無いのだが……。よし、来るんだ」


 少女の手を取り走り出す。


「ちょ、何するんですか! 離してください!!」


「君を連れて逃げ出している。そして離す訳にはいかないね。Because.僕は世界を見守る者であり、時として生命を護る者だからさ」


 そう告げると同時。先程まで僕たちがいた位置が、爆発に包まれる。


 少女も同じ様に悲鳴を上げる。だが止まる訳にはいかないな。

 人々で賑わう夜の街を駆け抜ける。


「今の何ですか!? あなた何なんですか!?」


「おや、名乗った筈だよ? それに説明もした。だが理解の遅いアリスに教えてあげよう。僕はヴァン。君を護る為に敵から逃げている」


「ヴァン……? 今は一体何から逃げてるんですか!? それに周りの人も逃げてないし、他の人も変な人ばっかりなんですけど!?」


 後方から爆風が押し寄せる。逃げながらだと言うのに質問責めとは、元気な女の子だ。


「アリス……、質問は一つずつにしてくれないか? それに今は忙しい、後にしてくれ」


「さっきからアリスアリスって何なんですか! 私には永野美咲って名前があるんですけど!」


「僕にとって、人間は等しくアリスさ。わかったらアリス、スピードを上げるよ!!」


 魔力を漲らせる。微弱な物だがこのままでは爆弾魔に追い付かれてしまう。


「スピードを上げる、ってーー」


 瞬間。後方に迫る爆風が弱まり、僕らを加速させる追い風となる。

 そしてそれは吹き続ける。


「あまり喋らない方が良い、舌を噛むからね。君が喋らない間に質問に答えてあげよう。三つだったかな?

 その1。何に追われているか。

 君は爆弾魔に狙われている。何らかの超能力者か魔術師かエイリアンか魔物か別種の何かに。

 その2。何故周囲の様子がおかしいのか。そういう世界になったからだ。

 その3。周囲の者が何故僕らを気にしないか。そういう世界になったからだ」


 喋る間も魔力を途切れさせずに追い風を吹かせる、だが限度があるな。既に爆風のエネルギーは消え失せ風は止み、僕らの足も疲弊し始めている。


「何言ってるか! 全然わかんないんですけど!!」


「アリス、今はそれで良い。ところで僕からの質問だ。この辺に大きな鏡は無いかい? 姿鏡より大きめの物が望ましい」


「は? 何言って……。そんなもんありませんよ!」


「それは困る。これではその内追い付かれてしまうからね。何か鏡写しになるものが欲しいんだ」


 言葉を発すると同時にアリスを突き飛ばす。


 そして僕の体は爆発によって吹き飛ばされる。


「ヴァンさん!?」


 吹き飛んだ体が地に叩きつけられ地べたを転がる。


 中々に激痛だ。これが続けば今の弱った体では死んでしまうかも知れないな。


 足音が聞こえる。爆弾魔の物か。

 そちらを見ると低い背丈、ゴツゴツとした不恰好な体。緑色の皮膚。


 周囲の人々は動かない。まるで見えていないかの様に。


「おやおや……、どうやら爆弾魔の正体は、魔物だった様だね……。この外見から察するにボムゴブリンか、どこのファンタジーから……、抜け出したのかな……?」


 声を振り絞る。これでアリスの質問に答える事が出来た。


「ヴァンさん! どうして避けなかったんですか!? 大丈夫ですか? 立てますか?」


「ヴァンで構わないよ……。何故避けなかったと問われれば、避けられなかったからだ……。故に……、君を突き飛ばした。レディに乱暴な真似をして……、すまなかったね……」


 アリスが僕に肩を貸して立ち上がらせる。


「ならヴァン! そんな事は良いから早く逃げようよ! なんで見ず知らずの私なんかを……!」


「言っただろう……、僕は生命を護る存在だと……。だから君はさっさと逃げるんだ、見ず知らずの僕を助ける義理は無いだろう」


 アリスが僕を支えて歩くがそのスピードは遅い。ゴブリンから逃げる事は叶わないだろう。


「助けてくれた人を……、ヴァンを置いていけません!」


「ゲェッ、ゲェッ。茶番はその辺にしてそろそろ死ぬが良い!」


 Amazing.もう日本語を覚えたのか……! ゴブリンとは思えない素晴らしい学習能力だ、評価に値する。


 魔物が爆弾を放り、僕もろともにアリスが吹き飛ばされる。


「アリス、もう良いだろう。僕は大丈夫だ」


「私はアリスじゃない! ミサキって言ったでしょ! それにヴァンが大丈夫だなんて思えない!」


 やれやれ、困ったアリスだ。本当に困った。このままでは僕のせいで少女が殺されてしまう。


「アリス、鏡は無いのかい? 僕らの体が入るほど大きな鏡だ」


「鏡なんて無いよ!」


「映る物で構わない。何でも良いんだ」


 アリスの足が止まる。どうした? もう疲れてしまったかい?


「それってガラスで良いの? それなら近くに沢山……」


 その言葉を聞いて周囲を見回す。


「おやおや、僕とした事が失念していたよ。どうやら僕も焦っていたみたいだ」


 周囲は街中。ガラス張りのドア。ショーウィンドウ。様々な物が光を反射させ鏡写しの世界を創っている。


「失礼したねアリス。そこの正面のガラスに突っ込んでくれ」


「いきなり何を……!?」


「良いから無心で突っ込むんだ。目を閉じて走り抜けろ」


 言うと同時に自分の体へと魔力を流す。光と陰を操作して幻影を作り出す。


 生み出した幻影はゴブリンを惑わす蜃気楼となる。


「これで時間を稼ぐ。早く心の準備を済ませてくれ」


「そんな事言ったって……」


「君だけが頼りだ。ミサキ」


「ヴァン、名前を……?」


 爆音。複数の爆撃が周囲を燃やす。だが建物は崩れず人々にも被害は無い。

 それでも僕らに当たってしまえば間違いなくダメージを受けるだろう。


「ミサキ! もう時間が無い。Just do it.兎にかく行くんだ!」


 叫び。僕らしくもない心からの叫び。

 そしてミサキが絶叫してガラス張りのドア。閉店時間を迎えた暗い世界の扉へと駆け抜ける。


「開け鏡の世界、来るが良いボムゴブリン。遊んでやろう!」


「ゲェッ! 行き止まりに行こうと無駄だ!」


 爆弾が投げつけられる。それは鏡と化したガラスもろとも僕らの体を焼滅させていく。


「ゲェ、ゲェ。ようやく死んだか」


 魔物が僕らの死体を確認する為に歩みを進める。


 歩き、死体まで辿り着いた時。僕らの姿が消滅する。


 その異様さにゴブリンが首を傾げる。


「良い夢は見れたかい?」


 僕は魔物の前に、小さな姿を現し声をかける。


「ゲェ、何が起きている。お前何をした!」


「君の学習能力が高いとはいえ、この程度だと思っていたよ。何度でも幻影に惑わされてくれると信じていた

 ようこそ、鏡の世界へ」


「ヴァン……? ヴァンなの? 私たちガラスに突っ込んだんじゃ……?」


 周囲に人影は無い。そして物体は全ての左右が反転した鏡の世界。


「姿が変わって驚いたかい? この白黒なウサギが僕の本当の姿さ。

 ここは鏡の世界。良かったね、中々来る人はいないんだよ。頑張ったねミサキ、そしてもう少し頑張って貰おう」


 駆け出してミサキの肩へと登っていく。


「ゲェ。何処に逃げ込もうと姿が変わろうと、お前らじゃオレに勝てないぃ!」


 ゴブリンがその手に爆弾を生み出す。


「ミサキ、僕が察するまで逃げ続けてね」


「えっ!? これで勝てるんじゃないの?」


「勝てるさ、けどもう少し準備がいるんだ。とりあえず、横に跳ねて避けると良いよ」


 投げられた爆弾は熱と衝撃を生み出して僕らを襲う。だが事前に回避行動を取っていた為に爆風が軽く体を撫でるだけだ。


 観察、考察、推察。僕は彼を見る。


「その爆弾。魔法かい? 能力かい? それともスキルと呼ぶべきかな。

 威力は大したこと無いね。もし本物に火薬か何かを使った物だったら、僕らなんて跡形も無く消し飛ぶね」


「ゲェ! ごちゃごちゃと!」


ミサキは僕を抱いて走り続ける。その後ろをゴブリンが追い、爆弾を放る。


「魔力の流れも気の滾りも感じない。やはりスキルかな、理論はわからないけど現象がわかればそれで良い。

 何処からともなく劣化爆弾を出す能力。僕の力だね。

 ミサキ、手の平を上にして構えるんだ」


「へっ? 突然何を言って!?」


「もう逃げる必要は無いよ。そうだな、出来れば彼と、ゴブリンと同じポーズが望ましい。やれるかい?」


「…………わかった」


 覚悟は出来たみたいだね。僕は鏡の世界へと語りかける。


「ゲェ! 今更何をしようと無駄だって言ってるだろ!」


「その力、返してもらうよ」


 ゴブリンが両手を構え爆弾を生み出す。


 そしてミサキの手の平へと爆弾が置かれる。


「え……? 何で私の手に?」


「彼の能力を映させて貰った。僕の魔法でね。それよりミサキ、早く投げた方が良いんじゃ無いかな?」


「えっ!? あっ、ハイ!」


 慌てた様子でミサキがゴブリンへと爆弾を投げつける。

 魔物が目を見開き、赤く燃える爆風に包まれる。

 けどやはり弱いな。一発じゃ全然足りない。


「ミサキ、構えるんだ。もっと沢山投げていこう」


「ゲェ、何故だ? 何故スキルが奪われた?」


 言ってる間もミサキがポンポンと爆弾を量産し投げ続けている。

 攻守交代だな。先ほどまで逃げるばかりだった僕らが攻め、ゴブリンが逃げ惑っている。


「元々僕の物だったからね。君はただのゴブリンなのさ、バッドボーイ」


 ミサキもゴブリンも、聞いちゃいないな。とても忙しそうだ。

 ミサキの頬をつつく。


「へっ? ヴァン?」


「そろそろ止めてあげよう。彼が死んでしまうからね」


「えっ、いや! 倒さないと!!」


「言っただろう? 僕は生命を護る存在だ。殺す為に力を貸したんじゃない」


「けど、あんなの放っといたら……」


「大丈夫、放っとくわけじゃないさ。後は僕に任せてくれ」


 ミサキの肩から飛び降りてバッドボーイの元へと向かい、前脚で彼に触れる。


「さぁ、ゴブリンよ。帰るが良い。君自身の世界へと」


 魔物の体が光に包まれる。同時に世界の扉が開く。ゴブリンが光の粒子になり、扉に吸い込まれていく。


 これでやっと一つか、先は長いな。


「ミサキ、終わったよ」


 そう告げて今度は彼女の頭へと昇る。


「もう、大丈夫なの? 私たち助かったの?」


「よく頑張ったね、もう安心だ。最後にご褒美をあげよう」


「ご褒美……?」


 ミサキが黒目を丸く開いて首を傾げる。


「あぁ、ご褒美だ。例えば、何か魔法が使えるなら何がしたい?」


「へ……?」


 その瞬間、彼女の脳裏に浮かんだ力を彼女に授ける。


「これで、君は魔法が使える様になった。鏡の外に出ても世界に馴染めるだろう」


「え、何を言って……?」


「もう出ようアリス、女の子の夜遊びはここまでだ」


 ミサキが頭に乗る僕を降ろして抱きしめる。


 ミサキ?


「アリスじゃないってば……」


 そうだったかい? 失礼したね。


「アリス。鏡の中に長くいると死んでしまうよ?」


「えっ!? ヴァン何それ! 先に言ってよ!」


 彼女はそう叫ぶと僕らが入ってきた入り口のガラスへと飛び込む。




「あれ……? 私なんでこんな所に……? 可愛いウサちゃん……?」


 僕は彼女の腕から抜け出し夜の闇へと逃げ去って姿を隠す。


「ウサちゃん……?」


 アリスは立ち止まり、逡巡すると駅前の広場へと駆け出していく。


 彼女の歩いた後の道へと花が咲き誇っていく。


 これが彼女の魔法か、少し魔力を強く与えすぎたかな?


「さて、僕はもう行くか。早くこの世界を修正しないと」


 僕はアリスから目を背け、人の姿へと変化して歩き去る。


「さようなら、ミサキ。感謝しよう」


 僕の口から言葉が零れた。

カッコ良い?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのした設定がよかったです( ´∀` )
2018/05/27 01:33 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ