クイ
ねえ、聴いておられます?
世の中、色んな方が居るじゃないですか。
若い方やお年を召した方、男の方や女の方。
太った方、痩せた方。挙げ始めたらキリがありませんよね。
中でも美しい方というのは、絶大の人気を誇っているようなのですが、これには疑問を呈さずにはいられないんですよね。
なんでかって?考えてもご覧なさいな。
見せ掛けは綺麗に繕っても中身は吐き気がするほどに汚い。
この一言に尽きると思います。
え?いえいえ。性格の問題ではございませんよ?もっと根本的問題。物理的問題とでもいうのでしょうか。
ところで、アナタは九相図、というのをご存知かしら?
あら、知りませんか。
これはですね、お亡くなりになった方を屋外に打ち捨てて朽ちていく過程というものを画に描いたものなんですが、えぇえぇ、人間、どんなに美しかろうと死すれば同じ、美醜関係なく、腐ちて逝き、軈ては土に返る。それを現した画なんですよ。
どんなに惑わされようと、素を辿れば同じモノ。逝き付く先は皆同じ。
ふふふ、実に無常ですよね。
今アナタもこうしている間にも、刻一刻とその瞬間に進んでいるのですよ。
え?なんでしょうか?聞き取れませんでしたわ。もう少しハッキリと言っていただけませんか?
あ、お食事中にするような話ではございませんでしたね。マナー違反でしたわ。ごめんなさいね。
そうではない?
あら、痛かったのかしらね。ごめんなさいね。
優雅に咲き誇った花、芳醇な果実。
仄甘さが広がり新たなる境地へと誘う。
なんて詩的に言ってみましたが。ふふふ、やっぱり鮮度は大切ですわね。
数多は誰かの死を糧に輪となって連なっていっているのですよ。
中身が皆、等しく汚くとも生きるためにいかされている。
だから、だからこそ、その命を無駄にしないように精一杯に生きて逝くべきなのではないでしょうか。
あらあら、ちょっと話に夢中になりすぎて、静かになっていたことに全然気がつきませんでしたわ。
ふふふふふ。
それでは
ご馳走様。