到着!
「えっと……何してるんです?」
「……?休憩ですよ?ドラゴンが近くにいればこの辺りの魔獣は来ないでしょうから」
小一時間ほど仮眠をとって、目が覚めた。
なんかまだいるな、と見てみれば冒険者三人組は僕のすぐ前で休憩してた。
戦闘の意思は無いとはいえ、ドラゴンの前だぞ、いいのかそれで。
ちなみに、ナイフ持ちは戦闘終わってわりとすぐに『もう死んだフリは良いですかね?』とか言ってあっさり起き上がっていた。
クリーンヒットしたと思ってたんだけどな。
ドラゴンはやっぱ潜在能力というか、人間よりも遥かに体の性能が良い。
おかげでまぁ、人間じゃあんま負けないとは思ってたけど。
こいつら案外強いのか……。
それから図太い神経してるのか、休憩まで始めるとは。
相変わらず盾持ちだけは警戒しているようだが。
まぁいいや。
ようやく取れた休憩だし、ゆっくり休ませてもらおう。
それにしても、冒険者か。
そういやアヴリルもそれで小遣い稼ぎしてたよな。
儲かるのかな。
……僕の爪やウロコって売れるのかな。
お金がほんとに必要になったらそれもありか……。
ナイフ持ちが物欲しそうにこっちをチラチラ見てるし。
いやでも無属性って価値あるのかな……。
どっか変なとこに流れて、実験動物として捕獲されない?
……怖い妄想はやめとこう。
いつかの誘拐とか、冗談じゃねぇな。
で、冒険者って小説だと、めっちゃ儲かることもある夢の職業だったり、底辺の職業だったり色々だけど、この世界だとどうなんだろう。
アヴリルに一回連れられた時は、役所みたいなとこだったしな。
公務員みたいなものなのかも。
後は似たような職業には、傭兵ってのもある。
冒険者が対魔獣なら、傭兵は対人間。
ここ、ツシャル大陸は平和だけど、他の大陸では戦争はよくあるらしいし、これも儲かるのだろうか。
命懸けてるんだから、それなりのお金は入ると思うけど。
負けたらどうなるんだか。
まぁいいか。
どうせドラゴンはそこらへんと関われないだろうし。
ふぁ、と軽くあくび。
うーん、そろそろ行くか。
「じゃあ僕は行きますんで」
「あ、はい。ありがとうございました」
「……もうこっちに来るんじゃねぇぞ」
「あ、一枚だけでもウロコを……いや、なんでもないです」
こいつら図太いなほんと。
ちなみにナイフ持ちは睨んでおいた。
これは僕が自分で売って、自分の金にするんだからな!
今んとこその予定は無いけど。
……アヴリルの遺したお金が多くてね。
なら一枚くらいあげてもいいのかな。
まぁいい。
ウロコ剥がすの痛いし、自然に剥がれるやつはそんなに価値ないらしいし。
翼を広げ、魔法を使って、浮く。
方角よし。
体調よし。
飛翔開始!
三人組がどんどん小さくなっていく。
うん、まぁいい奴らだったよ。
アレノス山から飛べばすぐに海へ出た。
とうとう、マリハース王国から出たわけだ。
まだ領海があるだろう、とか言うな。
そこまでは知らん。
ダルテア大陸はすでに山から見えていた。
海を越えながら、そちらへ真っ直ぐ向かっていく。
地図で見た感じ、もっと遠いかと思ったけどそうでもないみたいだ。
多分、地球よりも表面積が小さいんだろうな。
あと、僕が飛行機より速いってのもあるだろう。
おぉ、東の海面がなんかキラキラ光ってる。
良いねぇ。
飛行機とかでもそうだけど、こうやって上から見ると、地図ってよく出来てるなぁって思う。
おっ、海になんかの影がある。
魚の群れかな?
魔素の濃度が濃い……けどなんか変だな。
なんかちょっと嫌な予感。
大きい魔獣か……?
早めに離れとこう。
それにしても、暑いな。
赤道に近いのもあるし、上空だからってのもあるんだろうな。
やっぱ夜に飛ぶのが一番だな。
と、そんな感じで一時間弱。
雷竜の里が近づいてきました。
なんとなく、魔素も黄色く見えてしまうな。
てか実際黄色いな。
マジか、すげぇ。
お、早速チラホラ雷竜が飛んでるのが見える。
うん?
いや、早速すぎるしチラホラが多すぎる!?
え、なに、ドラゴンってこんなにこの世に溢れてるの?
ドラゴンってラスボスキャラだよな?
この世界じゃそうでも無いのか……。
いや、強いんだから繁殖するし生き残りやいし、か。
あと寿命も長いし。
人間まだ滅びないのか、すごいな。
いや、里の竜は人間から美味しい食べ物もらってるんだもんな。
滅ぼすわけないか。
いや、それはいいんだけど。
たくさんのドラゴンが僕のことチラチラ見てるんですけど!
よそ者だもんな、パッと見光属性だもんな!
とりあえず、雷神竜のいる里の中心に行きたいんだけど……。
行かせてもらえるんだろうか。
里の民って神竜を信仰してるから、僕が近付くの妨害してくるんじゃね?
まぁ別にほとんどのドラゴンは他属性でも、抵抗ないらしいし。
友好的なドラゴンとかどっかにいないかなー。
「なぁ、お前!」
そうそう、そんな感じにって。
……早速いたよ。
飛んでる最中に来るんかい。
まぁいいか。
「はい、なんでしょう?」
「ここじゃ見ない顔だよな?お前どこから来たんだ?」
話しかけてきたのは純粋な雷竜。
体のサイズ的に、年齢は多分僕の二個上くらい。
精神年齢は人間の中学生くらいなはずだ。
初対面なやつに話しかける?
コミュ力高い系ですね?
まぁ質問には正直に返すので良いだろう。
「マリハース王国から来ました」
「そこで産まれたのか?てことは、親が混血でお前は純粋な属性を得たってことか?」
「まぁ、そんな感じです」
……無属性とか言えない。
「そっか、だからお前“雷竜の加護”を貰いに来たんだな?」
「ーーは?」
そして、そいつは得意げな顔で意味わからんことを言ってきた。