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ドラゴンだって弱いんです  作者: 留坂豪
マイマザー 後編
43/72

第七組織とかいう厨二集団



 アヴリルの銃声が聞こえた。


 どう考えても異常事態だろ。


 瞬時に身体に緊張が走って喉がひりつく。

 携帯していた光剣の重みが増した気がした。


 あの建物で射撃練習という可能性は……ないだろ、今建物を“空間断絶”が覆った。


 出遅れた。

 やばい。


 とりあえず、ゴー!


 翼を使って急加速、風魔法でぶっ飛ばす。

 身体に魔素を回し能力向上。


 アヴリルと何か繋がる感覚。

 契約有効範囲に入った。


 これでアヴリルも無詠唱で魔法が使える。


 ……が、それだけじゃ多分ダメだ。


 “空間断絶”を割らなくては。


 何か手段は……と。


 透明な壁はもう目の前だ。


 やれるか微妙だけど……やれ!


 “咆哮”!


「ーーーァァァアアアアア!!!!!」


 パチッと魔素が弾け、空間に穴が開く。


 小さい……が、僕なら通れる。


 風魔法が止まってしまったけど、問題ない。


 よし!

 建物はすぐそこだ。


 身体に回した魔素で無理矢理スピードを上げて突進。


 跳躍、窓を突き破って中へ!


 中に人は……七人と大狼。


 魔素を視て察してたけど、アヴリル一人に対して六人が囲んでいる。


 イケメンも、敵側だ。

 これで大狼もろとも正当にぶっ殺せるな。


 全員……いや、アヴリル以外は唐突に窓から横入りしてきた僕に驚いたような目線を向ける。


 ざまぁみろ!


 とりま目の前にいた敵の持った槍を真ん中から斬り飛ばす。

 その流れで身体にも刃を向けたがそれは後ろへ飛んで躱された。


 こちらも飛んでアヴリルの前へ。

 すぐさま貼られる“空間断絶”。


 直後、イケメンのほうから魔法が飛んでくるが“空間断絶”は抜かれない。

 更に奥の一人が銃を乱射するがそれも……。


 が。


「いっ……!?」


 “空間断絶”を何発か銃弾が貫通した。

 左肩を掠めていく。


 嘘、なんで?

 スキルかなんかか?


 “空間断絶”って破れるのか!


 けれど、全部が貫けたわけじゃないみたいだ。


 銃が止んだ瞬間、リロードのスキをつき“空間断絶”を消し今度は“気絶”を飛ばす。

 銃を持っていたやつはそのまま倒れた。


 よし、これで一旦は大丈夫。

 一段落ついたところで見てみる。


 一人奥で蹲っているやつが一人。

 すぐそばに銃が一丁。


 こいつは僕が来る前にアヴリルが銃でやったのか。

 そこそこの血が流れてる。

 どうやったか知らないけど、身体が思うように動かない状態みたいだ。


 槍を持っていたやつは下がったままだ。

 もう武器もないし気にしなくていいだろう。


 それと先程“気絶”をくらったやつ。


 あとはイケメンと大狼のコンビと剣士、魔法使いがいる。


 全員が揃いも揃って黒いフード付きコートを着ている。

 いつの間にかイケメンも、だ。


 ……なんだこの集団。

 厨二病か。


 あ、もう一人いた。


 台に突っ伏して動かない、受付の担当らしき人。


 魔素を感じない。

 ……もう、だいぶ前に死んでいる。


 犯人はこいつらだろう。


 殺しを躊躇しないのか。

 やばいぞこいつら。


 あと、アヴリルも負傷している。

 何箇所かから血が流れている。

 大きな怪我ではないが、銃はもう持てなさそうだ。

 むしろこれで済んでいるのはラッキーだ。


 だけど。


 ……あれこれ普通にやばくね?


 なんだかんだ言ってもこのイケメン、実力は次席だったわけだし。


 しかもそれだけじゃない。

 二階にも何人かいるみたいだ。

 そのうちの一人が外に“空間断絶”を貼っていたのだろう。


 アヴリルと“念話”が繋がった。

 制御はそのまま僕の方へ移行。


『なんでイアがここにいるのかは、ちゃんと後で話聞くからね』


『ヒッ』


 ゾッとする声音。


 というか真っ先に言うのがそれかよ。


 あちらはこちらの様子を伺っているようだ。

 今のうちに作戦会議といこう。


『人は二階にもいる?』


『うん。三人かな。一人はこの建物の周りに“空間断絶”してるから気にしなくていいと思うよ』


 と、そこで嫌な予感。


『……あ。やばいよアヴリル、建物の周りに人が集まってる。敵、二十人くらい』


『そんなに……?』


 僕が来ただけじゃきつい。


 おいおいどうしろってんだこれ。


 っつーかこの人達は何?

 目的は?


 アヴリルを狙ってこんなに人が集まるもんなのか?


『……多分、連中が狙っているのはこの杖だよ』


 あぁ……なんだっけ、双子座の杖?

 そんなやばいもんなのか?


 いや、それはいいや、今はこの状況を何とかしないと。


 っと。


『一人階段から降りてくる』


『……更に人が増えるのね』


 まずい。

 時間をかければかけるほど状況は悪くなる。


 ……けど。


「……え?」


 降りてきた人には見覚えがあった。


 いつか、僕が誘拐された時に会った、スキンヘッドさん。


「よぉ。久しぶりだな、白竜」


「……これは、どういうことですか?珍獣コレクター集団が今度は人殺しですか」


 スキンヘッドさんは武器を持っていなかった。


 ……当然のように黒コートを着ている。

 そう言えば前に会った時も来ていたかもしれない。


 どうやらこの集団のボスっぽい。


 武器を持っていないのは、余裕だからか?

 それとも打属性スキルを使うのか。


「っぷ、ははは!やめてくれ、あんな集団と同類扱いしないでくれ。我々は珍獣コレクターでは無い。それよりよっぽど悪い集団だよ」


 なんだよ、それ。

 やべぇヤツらに目をつけられたのか、僕らは。


 いや、そもそもあの時から僕らの行動は監視されていたのか。


『……知り合い?』


『あー、えっと、さらわれた時にすぐに逃げた人』


『?……あぁ、なんか言ってたっけ』


 もう一年くらい前の話だ。


 スキンヘッドさんは胸ポケットから何かを取り出した。


 ……サイコロ?


 「聞いたことくらいあるだろう?この世界の国はその成り立ちから六種類に分類されるっていうやつ」


 ……まぁ、それは。

 どんな派閥だったか忘れたけど。


「うん?説明したほうがいいか?革命派、保守派、科学派、信仰派、魔導派、自然派ってやつだ。一回くらい聞いたことはないか?」


 ……あるような、ないような。


 で、それがなんなんだ?


「さて、それぞれをこのサイコロに当てはめてみよう。それぞれ派閥は相対する派閥が存在する。1と6、2と5、3と4のようにね。それぞれの組み合わせにはまた別の数字がつきまとう。7だ。その7こそが我々、第七組織である」


 なんか得意気に語ってる。


 やっぱ厨二病か。

 何がひどいってイタいくせに力を持っているのがひどい。


「まぁそんなことはいいんだ。我らの目的は世界平和。戦争のない世界を作ることだ」


「……は?絶賛戦ってんじゃねぇか」


「必要最低限だよ。できれば反発しないでくれると嬉しい」


 しないわけないだろ。

 そんな連中に強い武器渡すとか嫌な予感しかしない。


「具体的になにがしたいんですか?条件によっては、飲みます」


 えっおい、アヴリル!


「おぉ、肝が座ってんねぇ。嫌いじゃねぇぞ。そうだな、条件はお前らの死亡と杖の引渡し。もしくは第七組織への加入だ」


 は?

 なんだよそれ、無理だ。


 けど、こんなに囲まれてなんとかできるとも言いきれない。


「戦争のない世界を作るためにはな、武器を無くすこと。勝てると思えなくすることだ。それでな、お前らの存在はその勝てると思う原因になる。まず間違いなく戦争は起こる。前の一件で実力も見た。オーガとの一件や妖狐との関わりで白竜も予想より成長してしまっている。結果がこれだ」


 ……くそ、どうしろってんだ。


「俺だってなるべく人は殺したくないんだ。加入してくれると嬉しいな」


「それはないわ。受付の人だって、関係ないのに殺してる人達に、私はなりたくない!」


 おぉ!

 アヴリルよく言った!


「……そうかい。それは残念だ」


 その目が、冷酷に光った。


 やべぇな、これ。


「お前ら、殺れ」



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