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ドラゴンだって弱いんです  作者: 留坂豪
マイマザー 後編
30/72

え、待って、え?

 


 ……知らない天井だ。


 嘘です。

 寮の部屋ですね。


 日差しの感じからして朝か。


 昨日もこんな目覚めじゃなかったか?

 どうなってんだちくしょう。


「あ、起きた?」


 しばらくして、アヴリルが部屋を覗きに来た。


 昨日って結局どうなったんだっけ……?

 確かスキルを使ってみようとしたんだよな。


 あれ?

 なんで倒れたんだ?


「えーっと、何があったんでしょう?」


「んー、まぁ簡単に言うと事故かな?」


「事故?」


 詳しく聞いてみるとなるほど事故だ。


 魔素、というものは奇跡を起こす物質であるとされている。

 物理法則を無視したことを起こす、とも言う。


 さて、体内の魔素とは何のために存在しているのか。

 もちろん、生命の維持だ。


 ドラゴンなんていう色々アレな生物は、人間よりも体内の魔素量は必要なのだとか。


 この差が問題だった。


 光剣には生命維持に必要な量を超過しないためのセーフティが存在する。

 しかし昨日僕が使った光剣は人間に必要な量でセーフティがかかるようになっていたらしい。


 そして過剰に魔素の喪失した魔物は本能的にスリープモード、つまりは意識を失うわけだ。


 過剰に魔素を喪失した原因こと光剣だが。


 魔物なら大丈夫だろ、とリミッター解除されており、刃が際限なく伸びるようになっていたらしい。


 つまり、体内の魔素の操作がまだ下手な状態で適当に魔素を操るとごっそり魔素が持っていかれる。


 ……あれ、事故か?

 大体光剣のせいじゃね?


 光剣って誰のだっけ。


 教授か。

 教授のせいか!


「ちなみに今教授は魔物も安全に使えるようにするための調整をしているらしいよ。どうもあの光剣、イアの魔素のデータを記録する機能もあったらしくて」


 遅せぇよ。

 先にやれや。


 下手すりゃ死ぬとこだったじゃんか!


「しばらく光剣は見たくない」


「光剣って体内の魔素の感覚を掴むのに最適で初心者向けなんだけど」


「見たくない」


 よっと身体を起こしてアヴリルの側へ寄ろうといて、気づく。


「あれ?なんか身体軽い?」


 スキル暴発は午前中だったから昼も夜も食べてない。

 そのせいか?


 いや空腹はあるけどそれとは違うような……。

 なんか体の調子が良い気がする。


「あぁ、それ多分世界に認められたんだよ」


「はい?」


 世界に認められた?

 意味が分からん。


 あ、いや待て。


 あれか。

 ジョブか。


「就職おめでとう、多分“剣士”だね」


「マジ?」


「うん、マジ」


 ジョブ“剣士”。

 習得条件、片手剣に分類される武器で斬属性上級スキルを使うこと。

 ジョブスキル“剣才”を獲得。

 さらに身体能力の向上が見られる。


 ……なるほど。


 いや、え?


 上級スキル?

 使ったの?僕が?


「昨日も聞いたと思うけど、スキルの級は魔素量で決まってるの。それで、昨日イアが最後にやったのが斬属性上級スキル“豪剣”って世界に認められたみたい」


 マジか。


「すごかったよ、イアの姿が霞んだかと思えばいつの間にか丸太を八本くらい切り飛ばしてたんだもん。その後すぐ倒れちゃって慌てたけど」


 ほへー。


 丸太の間隔ってそこそこあったよな。

 刃どんだけ伸びてたんだ。


「あと、そう!シンシアさんもスキルの才能はそこそこあるはずだって言ってたよ」


 マジか!

 それは嬉しい。


 魔法はほんとからっきしって感じだし、良かったー!


 これはアレだな、ジョブの選択も捗りますな。


「そうだ、ジョブの一覧みたいなのってないの?」


「そっか、イアはまだあんまり知らないもんね。図書館行けばあると思うけど」


「図書館……」


 うわー。

 行きたくない……。


 なんかほら、周りみんな頭良く見える不思議空間。

 僕入ると場違い感すごいんだよなぁ。


 あとここの大学って頭いいとこだろ?


 行きたくねぇ……!


「あー、行きたくない感じ?」


 なんでわかった!?


「今日の予定だとイアは一日何も無いから、お留守番してて。私が図書館で借りてくるから夕方くらいかな、それから一緒に見てみよう」


 おぉさすがアヴリル、天使ですわ。


「っと、もうこんな時間!じゃあ私は行くね。朝ごはんと昼ごはん置いといたから」


「了解です、いってらっしゃーい」


「うん、いってきます」


 すぐにドアの開く音がして、バタンと閉じた音が響く。


 お留守番はそこそこの回数今までもあった。

 買物だなんやかんやに一々ドラゴンを連れるのは目立つせいだ。


 今までならこの暇な時間を魔素操作の練習に当ててたんだけど……。

 どうしよう?

 魔法系のジョブってもう選択しないよな。

 補正があちこちブレるのって器用貧乏な雑魚だろ?


 とすると……スキルの練習?

 でも、武器もなければスペースもないし。

 何より暴発した時、周りに誰もいないのとか危険そうだし。


 そういや、アヴリルは暇つぶしとか何してるんだろう。

 あ、アヴリルは魔素操作か。


 アヴリル以外。

 全員が全員魔素操作日常的にやってますってことは無いだろう。

 魔法を使わない人だっているはずだし、何より魔素操作ってかなり辛い。


 じゃあ何してんのって事だけど。


 この世界の娯楽って知らないや。

 まぁ大学にどんなサークルがあるか分かんねーって思ってた時点でアレだけどさ。


 地球のことを考えると。


 携帯ゲームとかか。


 この世界の携帯電話はオクトキューブって呼ばれる立方体だ。

 宙に浮いてて持つ必要なし、魔法でほかの人は触れない、ホログラムを形成し高度なことができる、という魔法やら科学やらの結晶だ。


 ゲーム楽しそうだなおい。


 あ、でもこの世界がゲームみたいなもんだしなぁ。

 ゲームってないのか?

 いやそんなことないか。

 地球にも格ゲーあるもんな。


 オクトキューブ欲しいかも。

 ……ドラゴンも使えるのかな。





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