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ドラゴンだって弱いんです  作者: 留坂豪
マイマザー 後編
25/72

とうとう始まりますね

 


 飛行機は事故ることもなく、ドラゴンに襲われることもなく無事に帝都セイリアに着いた。


 まぁ正確には着いたのは隣町で、さらに電車で三十分ほど揺られたのだが。


 引越しの荷物が届くのは明日なので、すぐに必要なあれこれを詰めたスーツケースを転がしながら寮へ。


 白い壁のデザイン性よりも実用性を取りましたというような寮だ。


 全部で六棟、その四棟へ。

 大きめの一人部屋は一番端の部屋。

 五階建ての二階に僕らの部屋は当てられた。

 201号室が僕らのこれからの家となる。


 ほとんどの部屋の光がついていたので、どうやら僕らは入るのが遅いほうだったようだ。


「明日以降の予定ってどうなってるの?」


「明日はほかの荷物が届くから、それの整理。明後日は何もなし、その先が入学式だよ」


 入学式か。

 懐かしいな。

 ネクタイの結び方がわからなくてネットで調べてたな。


「入学式って僕はどうするの?」


「一緒に行くよ。でも魔獣も全員言うことなんでも聞けるわけじゃないから、魔獣は別室でまとめて管理だったかな」


 なんだと……。

 アヴリルの晴れ姿を見ることが出来ないというのか。


「なんとか一緒に入れません?」


「ドラゴンはわがままで有名だから無理だと思うよ」


 ちくしょう同族め!

 少しは自重しろ!


「で、入学式の翌日からオリエンテーションとかが始まるらしいよ」


 あー、覚えがあるなぁ。


 大学の教授って教師じゃないから教えるの下手で、話すのも下手だからガイダンスからつまんなくて辛かった。


 あ、でもここは偏差値高いしそこらへん大丈夫かもしれない。


 あとはサークル勧誘か。


 一枚ビラを受け取ったが最後、何枚も積まれたっけ。


 結局どこにも入らなかったけど。


 おかげで過去問とか手に入らなくて苦労したっけな。


 ……うん、この話はやめよう。


「アヴリルはサークルとか入るの?」


「んー、どうだろう。何か入りたいけどあんまり興味あるのないからまだ分かんない」


 これは入らないパターンかな。


 サークルはやっぱ趣味のあうやつだけど、そういやアヴリルの趣味ってなんなんだろう。


 ずっと魔法やってるイメージだからな。


 魔法が趣味か。


 でもそれなら魔法研究サークルみたいなのありそうだな。

 なら、どこかしら入るのだろうか。


 テニスしないテニスサークルとかに入ろうとしない限り僕は何も言うまい。


 そういや、どこぞの大学じゃキャンパスごととかなんとかでテニスサークルが二十個あるとか。


 ……この話もやめよう。


 その前にそもそも異世界にテニスはあるのか?


 魔法があるわけだし魔法を使ったスポーツとかあるはずだよな。


 見てみたいかも。


 ちょっと気になるスポーツの勧誘を聞いたらアヴリルにどんなのか聞いてみようかな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 まぁそんこんなでゴタゴタして、入学式当日になった。


 昨日はアヴリルの高校時代の友達が二人来て、色々話してた。


 僕?

 女子の話についていけるわけないじゃん?


 静かに部屋の隅で魔素操作してました。


 話題に僕の話はそこそこ上がったようでチラチラこちらを見られるのがなんか恥ずかしかった。


 一回こっちおいでと呼ばれ、近づいたらもみくちゃにされあちこち触られ……。


 ……そのあとの記憶が無いな。


 気づいたらベットの中で小さく震えてた気がする。


 軽くトラウマだよ……。


 小さく羽の生えたオオトカゲの何がいいんだ。


 ガクブル、と昨日の事に恐怖しているあいだにセイリア大学に到着した。


 入学式は大学内の講堂でやるそうだ。


 僕には関係ないけどな!


 一応お伺いはしたが結局入れませんと言われてしまった。


『魔獣連れの方はこちら』という看板を見つけ、アヴリルと共にそちらへ。


 同じ方向へ向かう人は数人いる。


 連れているのは立派な狼やデカいカラスなど。


 うわーやっべーつよそー。


 僕らが入る魔術学部契約魔獣科の同級生となるのだろう人達だけど。


 ……大丈夫か?

 僕だけなんか雑魚そう。


 そもそもまだ子供なのいなくない?


 嫌な予感しかしないなぁ。


 だってほらもうあの狼の目がね。

 お前美味そうだなって言ってる。


 え、嘘でしょ?


 こんな理性の欠片も感じない獣共と始業式の数時間過ごさなきゃいけないの?


 命の危険しか感じないんですけど。


 この大学に早速二個目のトラウマができそう。


 引きこもるよ?


 リムークのお家に帰りたい、と願いながら看板に従って進むとそれらしい教場が見えた。

 中には入ると、並んだ大量の檻。


 大小様々。

 見ると、それぞれに名前が書いてある。


 とすると僕のもどこかにあるはずだけど。


「檻と言えばいつかの誘拐を思いだします」


「大丈夫、また助けに行くから」


 ……この世界のトラウマ多いな!


 そのうち本当に引きこもりになりそうだ。


「あ、ここみたいだよ」


 アヴリルに言われ、わざと見逃した自分の檻に仕方なく入る。


 ガチャリと鍵の閉まる音。


「ちゃんと開けに来てよ?」


「いい子にしてたらね」


 はい、そうします。


「すいません、通してもらっていいですか?」


 他の人が来たようだ。


「あ、すいません。じゃあイア、また後で」


 バイバイと手を振る。


 いつかと違って電気がついてるからまだ気は楽だ。


 ……だった。


 さっきの人の魔獣は僕の隣の檻に入った。


 ……例の狼だった。


 嫌!

 もう嫌!


 早くここから出して、アヴリルー!




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