属性外魔法なるもの
「属性外魔法?」
なんじゃそりゃ。
魔法の種類多すぎやしませんかね。
「前に属性は八つ、火、水、雷、土、風、氷、光、闇っていうのは教えたよね?……覚えてる?」
お、覚えてますよ……?
前世のゲームっぽいし覚えやすいからね。
……えぇ、氷とかパッと思い出せないだけだから。
べ、別に覚えてない訳じゃないんだからねっ!
アヴリルがじと目でこちらを見てくるけど気にしない!
が、なんだか見返していられなくてすっと目を逸らす。
はぁ、とため息をつくアヴリル。
やめてください、割と傷つくんですが。
「まぁ、そのうち覚えるか。属性外魔法はね、今の八つの発展形みたいなもの。それぞれ消滅、生命、堕天、創造、覚醒、時間、精神、空間ね」
こ、これはまた……。
覚えられそうにないなぁ。
「これはまだ気にしなくていいよ、こんなのもあるんだって先に知っとくぐらいでいい。難易度がさらに跳ね上がるし。消滅魔法の極大級はすごいよ、動画が残ってたんだけど、あたりが一瞬で更地になったりするんだから」
「マジすか」
そりゃぁすごい。
となると他もそれぐらいするのかな。
生命とか回復魔法だろうし、全部が全部ってわけでもないか。
「空間魔法ももう少し使えるようになればワープとか私もできるようになるんだけど、それはまだ先かな」
アヴリルが使える属性魔法は最高で超大級まで。
そのレベルでも属性外魔法は中級で精いっぱいなのだそうだ。
なるほど、僕じゃ無理だな。
「で、その分消費魔素も多い、と。このあたりもう魔素が残ってないけど、今日の練習はどうなるの?」
「……私の能力自慢とか属性外魔法の実演ってことで、練習時間つぶしたのは許して?」
今日はもう帰ることになった。
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「じゃあ帰りはギルド寄っていくよ」
ギルド!
前からその存在を聞いてはいたけれど実際行くのは初めてだ。
ギルドは前世で聞いたシステムと似たようなものだ。
ただ、ギルドにも種類があるとか、組合とはまた違うという点が前世の小説と違うかもしれない。
……自信が無いのはそこまで真面目に読んでいないからだ。
相変わらずの低スペック。
ちくしょう。
まぁ自己嫌悪は置いといて。
ギルドは二種類ある。
冒険者ギルドと傭兵ギルドだ。
冒険者は対魔物、傭兵は対人間とされ、役割も割り振られる仕事も違う。
逆に言ってしまえばそれ以外は同じで、ギルドに依頼が集められ、それを受けた人が問題を解決する。
成功すれば報酬がもらえ、失敗すれば違約金が発生する。
ちなみに冒険者の主な仕事は、危険な場所での調査や採集、魔物の討伐など。
傭兵は戦争時の臨時軍や秘密組織の壊滅任務など。
……荷物はトラックや船、飛行機で運ぶ現代、盗賊なんていないそうだ。
いるのはヤクザとか薬物を取り扱う組織など。
現実なんてそんなもんだ。
相手するのが能力の高い魔物か、頭の良い人間か。
要するに違いはそんなものだろう。
あとギルドの特徴と言えば国家を超越していることか。
組合、例えば農業組合や商業組合は国益だ貿易だ関税だで国家がある程度関わる。
そこが特徴と言えば特徴といったところか。
と言うわけでそんな冒険者ギルドにやって来ました。
それにしても、ギルド!
あぁなんと素敵な響きだろう!
入ると同時に集まる視線!
細かな動きから実力を測り、どよめく観衆!
そして名が少し売れただけで調子に乗った冒険者の洗礼を軽くいなし!
そしてやって来る数々の困難な依頼!
時には失敗して泣いたり。
時には仲間とケンカしたり。
しかし最後には!
世界一有名な冒険者に……!
なんて言うのは幻想だった。
まずギルドに酒場が併設されていない。
ものすごくお役所な雰囲気に静かな館内。
人が全然いなかった。
「あ、アヴリルさん、お疲れ様です。本日はどのようなご用件でしょうか?」
マジか、もしかしなくてもアヴリルさん常連?
さすがです。
「はい、安全域にフォレストボアが出たのでその討伐と報告、買取をお願いしようかと」
あぁ、そういえば練習に使っているところって魔物の出ないぎりぎりのところなんだっけ。
「安全域でフォレストボアですか?原因は……その様子じゃわからなそうですね」
「すいません力不足で。この子の安全第一なので。それに、あの辺りは全くでないってわけでもないのでそこまで気にすることはないかなと」
あれ?俺めっちゃ足引っ張ってたり?
「そうですね。では初心者用にして調査依頼出しておきます」
なるほどこんな感じで初心者の訓練するのか。
仕事を出すのも大変だな。
でもこれって成功失敗の基準はどうするんだろう。
というか科学の力だなんだじゃできないのだろうか。
……気にしたら負けか。突っ込まないことにしよう。
「では、二階の買取カウンターのほうへお願いします」
言われるままに建物の奥の階段へ。
アヴリルも何度か言ったことがあるのだろう、その足は迷わない。
階段を昇ればまた下の受付のようなカウンターがあり、そこで再び手続きするようだ。
「お久しぶりです、アヴリルさん。今日は何を?」
やっぱりアヴリルは顔覚えられているのな。
「お疲れ様です。フォレストボア、持ってきました」
「残念、今日は地味ですね。この前みたいなラージスネークならまた高く買いますよ」
俺を食おうとしてたあの蛇、アヴリル回収してたのかよ。
抜け目ないな。
「今はお金には困ってないので。無くなったら考えますよ」
「その時はお願いします。ではこちらのほうに」
指示されたのはカウンター横のベルトコンベア。
空港の荷物受付みたいな感じだ。
アヴリルがまた魔法を唱え、フォレストボアの死体を出現させる。
すると機械が自動で重さや大きさ、保存状態までチェックし始めた。
なるほど、これなら買取については公平に行える。
「いつも通りいい状態ですね。これなら皮、肉、角のどれにしても高く買えます。値段は……二千五百円ですね、ではこちらに」
チャリーン、と金が引き出されアヴリルに渡される。
アヴリルもその数を確認する。
「はい、ありがとうございます」
「では、またのお越しをお待ちしております」
そんなこんなで初めてのギルド来訪は終わった。
……俺の期待を返せ。