飴(先)
吹奏楽部に所属している僕だけれど、自分の才能のなさに早々に身を引いた結果、僕の立ち位置は半分マネージャーになっているし、僕もその位置で満足している。
後輩の勧誘に失敗して、のこのこ部活に戻ったときにも、皆快く僕を受け入れてくれた。
「この学校の吹奏楽部って、どれくらいの頻度で練習してるんでしたっけ」
「入ってくれる気に」
「なってないです。ただ、二日に一回くらい連れ回してましてますが、先輩が部活にいけてるのかなと思っただけです」
「二日に一回は、確実に行かないといけなくて、間の日は自由練習って事になってるから、最低限は行ってるよ」
吹奏楽部に興味を持ってくれたと思ったのに。
でも、こちらに気を使ってくれているのかと思ったら、後輩が「それなら良かったです」と続けた。
「先輩がまだ部活に行っていなかったら、私のことをまだ勧誘してるって事になりますからね。
先輩が戻ったことで、私が吹奏楽部に入る気はないって伝わるでしょう」
この後輩が、僕に優しさを見せると思ったのが間違いだったのだ。
「あ、先輩。飴食べます?」
でも、食べた飴はおいしかったから、もう少しだけ期待しても良いかもしれない。