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アイス
夕暮れの小さな公園。アイスを片手に持った少女と、両手を下に下ろした少年が一つのベンチに座っている。
「なあ」
少年が少女の方に首を回す。
少女は挑発するように、アイスキャンディをぺろぺろとなめながら、目だけを少年向ける。
「先輩、なんですか? アイス食べたいんですか?」
なめていたアイスを少女が少年に向けるが、少年は首を振って少女の手を押す。
面白くなさそうに少女がアイスを口に戻して、少年に怪訝そうな目を向けた。
少女の迫力に押された少年が、震える声を出す。
「僕は、君が嫌いだ」
「奇遇ですね。私も先輩が嫌いです」
「だよなー」
少年は空を見上げて、力の抜けた声を出す隣で、少女は気にした様子もなくアイスを食べていた。