表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の乙女が穢れを祓う  作者: まひる
第2章─導き
18/128

8.轢かれちゃう


 ヴァルトの立ち位置まで、あっという間に走ってくる猪魔獣。


─嫌っ!轢かれちゃう!


 怖くて見ていられず、リサはギュッと強く目を閉じる。


 ヴァルトはそんなリサの心情は露知らず、走り込んできた猪魔獣の猛進を、その場で跳躍する事でヒラリと避けていた。

 そして魔獣の背中に軽々と着地すると、頸椎目掛けて一気に剣を突き立てる。


 魔獣とはいえ、頭が身体と繋がっていなければ動けない。こういった大型の魔獣相手では、いち早く急所を攻撃した方が良いのだ。


 ブギァオォォォォ!


 魔獣の雄叫びが森を震わせる。

 同時にリサの肩も大きく揺れたが、何とか木から落ちずに済んだ。


 サクサクと歩いてくる軽い足音。明らかに魔獣ではないと思い、でも恐る恐るリサは目を開ける。


 想像通りそこにはヴァルトがいて、先程の魔獣は何処にもいない。


「あ…れ?逃げちゃったの?」

「はあ?何言ってんの、お前。魔獣を俺が逃がすとか、有り得ねぇ」


 瞬きをしながら、ヴァルトに問い掛けた。

 だが、返ってきた言葉は刺々しいものである。


 そもそもリサは、魔獣が死すると消滅してしまう事を知らない。そしてヴァルトは、リサが黄昏を通してこちら側に来た事を知らないのだ。


「な、何よ、偉そうにっ。誰様?俺様?」

「当たり前だ。実際に、俺は偉いんだ」


 売り言葉に買い言葉。二人はお互いの事情を知らないが、キャンキャンと言い合う。

 木の上にいるリサと、木の下にいるヴァルト。どちらも引かなかった。


「団長っ」


 そこへ、ヴァルトを捜して聖騎士団の二人が現れる。

 ヴァルトがゆっくりと視線を移し、騎乗している団員を確認した。


「どうした。ノルドヴィスト」


 ヴァルトは男女二人の団員のうち、男のヴィルヘム・ノルドヴィストに声を掛ける。─理由は単に、彼の方が立場が上だから。


「はっ。お戻りが遅いのでと、クロイドン隊長が心配なされていました」

「つまりは、俺の捜索に駆り出された訳か。そんな暇があったならば、黄昏の一つや二つ、探せるだろうに」

「申し訳ございません、団長」


 問い掛けに答えたヴィルヘムに、ヴァルトは嫌味のように告げた。

 すぐに謝罪したのは、もう一人の─サイラス隊の紅一点─アーラ・セレブリコである。


 今回の討伐隊は、サイラス隊を伴っていたのだ。


「分かった、戻る。お前達がクドクド言われるしな」


 小さく溜め息をついたヴァルトだが、勝手に隊を離れた自分にも責を欠いたと判断。すぐに二人に返答をした。

 だが、問題が一つある。


「おい、お前」


 ヴァルトは木の上に向かって、声を掛けた。

 勿論、リサはいない振りを決め込んでいたので、ビクッと肩を揺らす。


「降りてこい」


 ぞんざいな物言いだが、その実リサに対し、両手を伸ばしていた。


─えっ?何?どうしろって言うの?


 しがみついているだけが精一杯のリサに、ヴァルトは降りるよう指示をしている。

 そして当たり前だが、リサはその対応に困っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ