表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の乙女が穢れを祓う  作者: まひる
第2章─導き
14/128

4.失敗した


─あ~…、うん。失敗した、本当にごめん。


 誰にともなく謝りたくなった、リサの現状。─木の幹を、よじ登るつもりで抱き付いたまま。


 つまりは、巻きスカートという服装が理由でもあったが、実はそれほど運動神経が良くなかった。─そこらにいる女子高生が、木登りをスイスイ出来るものおかしなものだが。


─そうだよね、無理だよね。うん、考えれば分かるんだ。


 脱力して項垂れる。

 周囲では小動物が、不思議そうに見ていなくもない。


 ザワリ…。


 溜め息を溢そうとしていたリサ─だが、突如として空気が変わった。

 溢れんばかりに周囲を取り囲んでいた小動物が、一瞬にして姿を消す。


─え…、何?どうしたの?


 肌に纏わり付くような嫌な空気が、平和な日本で育ってきたリサにも感じられた。


 一言で言うならば、異質。

 森という自然の存在にあって、そこだけが墨を落としたかのような黒が感じられる。


─な、何か…ヤバそうなのは分かるんだよね。けど、どうしたら良いのか分かんないんだってばっ。


 不安げに周囲を警戒するが、原因自体を確認する事までは出来なかった。


─と、とりあえずここから移動した方が良いかも…?


 本能からか、地に足を下ろし、木の幹を背にしていたリサ。視界が利かない背後は、一番危険である。

 それ故、無意識に緊張していたのだろう。


 カサリ。

 何かが動いた。


「っ!」


 飛び上がらんばかりに驚いたリサだが、咄嗟に口を両手で覆う。

 相手が何か分からない事もあり、音を発する危険性を危惧したからだ。


 そしてそれは現れる。


─うそ~っ!だ、誰でも良いから、冗談だと言って~っ。


 半泣きの状態で、心で叫ぶリサ。

 何故ならば目の前に、小さなゾウ程の大きさの、ギラついた紅い目の猪─っぽい─生き物がいたからだ。

 実は魔獣なのだが、初見のリサには区別がつかない。


 両手で口を覆ったまま、リサは知らず後退りする。


 パキッ。

 お約束のように、小枝を踏んでしまった。


 紅い目がリサを捉える。


─いや~っ、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!


 一目散に走り出すリサ。

 猪は時速40㎞以上のスピードを出すと言われている。勿論リサがそんな事を知るよしもないが、野性動物に出会った場合、背を向けて走り出す事は論外である。

 そして走れば、追いたくなるのが本能というもの。─勿論、魔獣なら尚更だ。


─何で追い掛けて来るのよ~っ!


 枝葉に身体を切り裂かれるが、背後から突進してくる恐怖以上のものはなかった。


 そうかといって、スカートでは─そうじゃなくても─木に登れない。高い場所へ逃げれば良いのだろうが、周囲にあるのは木々ばかり。


 唯一助かっているのは、木々の間隔が狭い事。

 猪が逃げるリサを追うには、都度立ちはだかる木々を倒していかなければならないからだ。


─も…、足が…っ。


 疲労のあまり、もつれそうになる足を懸命に動かす。


 だが、踏み出した先に地面はなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ