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Heart & White  作者: 白先綾
第一季「春風のララバイ」

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第五節「黒の夜、白の風」

 少女は歩いている。勿論、自分の意志で。何かに急かされるでもなく、何かに怯えている風でもなく、少女の足取りは安定して地面上に描いた彼女の瞼の裏側の道筋を辿っている。だが、少女は上空を気にしている、上空から希望の風に乗った鳳が舞い降りて彼女をここから救い出してくれるのを待っている、そして天に住まう者に問うているのだ、神様、私の辿る道はこれで正しいのでしょうか、私は光差す小川の辺を、木漏れ日のくすぐる森の蔭を、星空が抱いてくれる夕暮れの向こう側を、目指せているのでしょうか、私の祈りは貴方に聞こえているのでしょうか、そして貴方は、私の心、私の翼に何時、自由を、大空への力を、お与えになるおつもりでしょうか。答えは無い、いや答えは有った、彼女が今この灰色の鎖に縛り付けられて大空へ飛ぶ事が許されていない事、それこそが動かしがたいそして唯一の答えだ、だが、それは彼女の望む答え、彼女の信じている神の言葉ではない、だから答えはまだ無い。彼女の一歩一歩、彼女の眼差しの向かう先の一点一点が彼女の止め処無い神への問いかけとなり、そしていつか大空を取り戻す時の大いなる助走となっている。だから、彼女が空の先に見ている鳥は、未来の自分自身の姿であるのかも知れない。彼女の瞳がどんな夢を映しているか定かではないが、その夢は彼女の口元に緩みを、笑みを齎した。だが、それでも、どんなに彼女の微笑みが安らいでいても、零れるようにして光る口元の白は無い、希望の、情熱の色に燃える黒い瞳は無い、全てが灰色、全てが偽り、全てが空虚だ。それでも彼女は歩く。彼女の胸に宿る思いは、決して空虚で偽りで灰色な飾り物ではないからだ。

 少女は思い出していた、夜には何もかも黒に隠れてしまうけれど、夜空には夜の黒を貫く白が有った事を。星、無数の星達、星達の白は昼と言う絶対の輝きをなくした光の子供達が精一杯その昼を呼ぼうとしてその昼になろうとして小さな小さな光を作り出しているように見えた。彼女は窓の向こう側に見えるそれらが、きっと自分と同じように昼を待ち遠しく思っている遠い何処かの仲間達なのだろうと信じていた。だから彼女は、自分の部屋の電気を消してしまうのをとても申し訳なく思ったものだ、他の仲間達が一生懸命明かりを付けて昼を待っているのに、どうして私は電気を消して休んでしまおうとしているのだろう、でも、親の一言で彼女はそれを納得した、それはね、あの空の子達は本当は昼の中にいて、貴方が昼にするのと同じ様に遊んでいるのよ、とっても嬉しく。でも、貴方は夜。それを可哀想に思った空の子達は、貴方に昼を分けてあげたくてああやって空から光を、昼のかけらを投げてくれているのよ。そうか、その日以来、彼女は寝るということにためらいを覚えなくなった。それどころか早く寝て、翌日一生懸命昼の喜びを味わってそれをあの空の子供達におすそ分けしてあげなくちゃいけないんだな、という考え方をするようになった。砂場で遊んでいて光る硝子の破片を見つけたり、シャボン玉を膨らませてみたり、太陽を掴もうとして家の屋根に登ったり、色々と光を手に入れる工夫をした。でも、彼女は雨の日が嫌いだった。砂場が固まってしまって、シャボン玉も割れてしまって、何より太陽が何処にあるのか分からない、そんな灰色の雨の日が嫌いだった。夜の窓から仲間を見る事の出来ない雨の夜も彼女は憂鬱になったりした物だ。だけど、その灰色が晴れない事は今まで無かったのだ。こんな風に、灰色に閉じ込められてしまっていると言う事は経験した事が無い。彼女は灰色の日にこれまでこれと言って何かをした事は無かったけれど、今度は努力をしてこの灰色を晴らさなくちゃいけないんだな、とそう思った。彼女は、何か光を生み出せる物を探している。光は彼女の胸の内に有る。それを投射出来る、彼女の心の映る物を探している。草原の風を思う、彼女の心の光は、何処までも白かった。

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