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Heart & White  作者: 白先綾
最終季「冬日のシンフォニー」 

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25/26

第一節「赤」~第六節「アイ」

第一節「赤」


 赤い、赤い血液の羽根を生やした人々が天高く飛び散っている。

 どうしてなのだろう。


第二節「橙」


 橙色の太陽が人々の静寂を焼き殺しながら明るい。

 明るさが悲しいだなんて。


第三節「黄」


 黄色い砂の人々が悲しく笑う、泣く代わり。

 涙を流し過ぎ、乾いたからの砂の体。


第四節「緑」


 緑を汚し侵し殺し潰し薙倒し人々は何処へ。

 貴方がたの楽園は、一体何色なのですか。


第五節「青」


 青い世界に生きている人々が生きて散るのが

 大空への、青い花火で有ればと何時にも願う。


第六節「アイ」


 星の七色の悲しみを読む子

 そして、青き星の青さを潰えぬ永遠の導と知る子

 聞きなさい

 私と言う存在は、かつてエイツヴェイク、『希望の器』を名乗って四人の子供の為の色をその身に封じ込めた魔道士の最後の欠片です、私自身の魂では有りません、私の作った自分の幻影です

 これから私の遺言を伝えます

 尚、貴方はこの伝言の後新たな存在として正式に誕生します、今は生まれる前の赤子です、それでも意識だけははっきりしていると思いますが、私に対する返答は残念ながら出来ません


 我々人間は知るべきではない八番目の色を見てしまいました

 黒、人の心の中の黒を見てしまいました

 我々には魔法が使えました

 その魔法は人の心の黒を除去する事が出来ました

 がしかしそうすると星がその黒を取り込んでしまいました

 星が、黒い心を抱いてしまったのです


 星は、黒い心を抱いた星は我々新生人の心の白さに嫉妬し、

 今度は我々を自分の中に取り込もうとしました

 その人間の捕食の為に星が作り上げたのがこの異空間です

 いえ、これは星の心そのもので有るのかも知れません

 星は貪欲に人間の心を食らい、黒い心を白に近付けていきました

 だがしかし、その白の量、人の量にも限りが有ります、

 完全に白い心を手にする事は不可能であると星は悟りました

 星は、嘆きました、稲妻にて叫び、驟雨にて泣きました

 そして星は深く深く心閉ざしてしまいました

 黒と白で灰色に染まったこの場所をそのままにして…

 

 生き残った我々は或る事に気付きました、色が消え失せていたのです

 世界の色が、星が心を閉ざしたが故に消えてしまったのです

 我々は、魔法が使えました

 その魔法で我々は色が見えていた、という過去を、我々が魔法と言うものを使えていた事、星が心を持ってしまった事まで含めて全く無い物として除去しました、勿論魔法に関する物的証拠も魔法によって消してあります、色を知っている我々にとって色の無い世界で生きていく事は余りにも辛過ぎました

 その後の過去を無くした我々は、過去が無い、とは言っても今まで色や魔法無しで歩んできたと言う事に疑いを持たないだけの偽りの過去は持っていました


 本当ならこの事は私の様に本来の過去の記憶を持っている人間が断定で語る事は出来ない筈です

 何故なら、我々はそれを体験していないからです

 過去を全く無い物として除去した我々とその過去をちゃんと過去として認識していた我々はもはや別人です、そしてお互いが干渉し合う事も出来ません、我々は、我々自身と袂を分かったのです

 ただ私の場合はここからずっと世界を見つめて来たので彼ら、もはや他人である我々の言動からその事が判断できたのです

 それで、その決定的な精神的自殺の前に、我々にはやっておかねばならない事がありました、

 心を閉ざしてしまった星の笑顔を取り戻すきっかけを作る事です

 我々はもう死のうとしているのですから、過去を無くして生きていく我々にその笑顔の回復を託す事にしたのです、正確には、過去を無くして生きていく我々の希望の子供達、貴方達に、ですが

 我々は全人類の魔力を結集しました、そしてその魔力で色を作りました、七色の虹を

 その虹は星の心に届きました、星がその色を受け入れたのです

 色は星に吸収され、こちら側の世界から見る虹は灰色に沈んでしまいました、

 しかしそれは成功の証である事は間違い有りませんでした


 我々は星との対話に成功します、かなりの魔力を使い切った我々は魔力によって保っていた心の白さを失い星と近い存在にまで堕ちたから星も少しだけ心を開いてくれたのです

 星は要求を突きつけました、自分が美しい心を持てないのなら、せめて自分と永遠に生きてくれる美しい心の持ち主が、色の見えない世界でも色の見えている子供達が欲しいと

 心閉ざしてしまった自分を、七色の希望へと導いてくれる天使達が欲しいと

 我々は彼らを星に捧げる事を約束しました


 我々は星に色を少しだけ返してもらう事になりました、少しと言っても、星の持つ色の中で最も美しい部位を全て削り取ってやっと抽出出来ると言う様な、星の純粋さの全て、莫大な原石の中の寡少な宝石でしたが

 その色は星の要求した四人の子供達が一生見続けられる量の色でした、ここで言う彼らの一生とは、星と共に歩んでいく途方も無い、限り無く永遠に近い年月の事です

 それを管理する者は、人類の中でたまたま最も残存魔力の強かった私になりました、たまたまとは言っても、この虹の有る場所から最も遠い地域に住んでいた私を含む者達の魔力は積極的には集められなかった、と言う理由はあるのですが

 ともかく私の周りで生まれた四人の子供だけ色が見える事になった筈です、貴方がそうであるように

 そして『希望の器』に選ばれた私は、自分の幻影を、つまり今ここで語っている私を虹の中に遺しました、貴方にこの悲劇の真相を伝える為に

 最後に、貴方がた子供達を捧げるに当たって我々はこの契約含む自分達の色が見えていたと言う事に関する記憶を全て消去してしまうので我々が彼らを引き渡すのは無理だ、と言う事を伝えると星はそれを了承しました、彼らは自分で導く事が出来るから構わない、

 と言うよりも、自分の方からもそれはお願いしたい、この契約を結んだ後、つまり純粋さを失いまた黒い心になってしまった後自分は間違い無く貴方がたや大地を食い尽くす事になるから、その痛みその悲しみを忘れる意味でもそうして置いて貰いたい―

 もはや我々に生存の道は無い、それは何処かで我々全員が覚悟していた事でした―それでも束の間の心の平穏が得られればと、色を、魔法を、自分たち自身を忘れる決断をしたのですが、そう残酷に、そう悲痛に言い放たれた星の言葉でその決意を新たにした我々は、星の純粋な部分を受け取り、そして、過去を消し、今までの我々を殺しました


 その後、純粋さを失った星は過去を失った我々同様まるで別人の様に活動を始めます

 まず、色の見えない世界で色が見えている子供が一体どんな風に扱われるかと言う事を考えてみた時、恐ろしい考えしか浮かばなかったのでしょう、星はその子供達をどうしても護ろうとしました

 それ以前に星は残りの人間を全て食い潰す予定だったでしょうが、この理由、黒い暗い心に差し込む唯一確かな光の為で無ければここまで即座に人間を味わい尽くす必要は無かった筈です、今現在の黒い心の星と対話をするのは不可能なのでこう言った事はどうしても推測なのですが

 それで星は過去を無くしてからの我々の心に芽生えた、色が見えたなら心の色も見える筈と言う、つまりは過去を失う前の我々の色が見えていたと言う記憶と全く同等の苦しみの元となる考え、結局我々は色の無い世界での苦しみから逃げられなかった訳ですが、それを利用しました

 本来見えるはずの心の色の見えない不安で我々がお互いに拒絶し合っているその事実を

 そして私と近しい人間だけをこの世に残そうとしたのです

 結果その目論見は成功します

 星が魔力の虹周辺に住む人間に与えた超破壊兵器、以前と同様黒い心を少しでも白くする為の人を吸収する力でも有りましたが、それ以上に異空間に子供達が遊び回れる大地を取り込む為に人を大地ごと吸収できる力にまで強化した魔力の塊、それで以って人類は全員、私の近隣者以外は全員が消滅しました

 虹、星の子供の受け入れ口から異空間に入るのでは無い人間達は“消滅”します、それは星の捕食であり、人間の心も体も全て消化し尽くしてしまう過程だからです、記憶を失ってからの我々で虹の道を通って異空間に入り込んだ者は中途半端に存在を受け入れられ、消滅してしまうと言う事はありませんでしたがその存在を歪められてしまいました、鳥だとか、木だとか、とにかく人ではない形に、その者の心を、入り込んでしまった訳の分からない場所から逃れたい、そこでの苦しみを和らげたいと言うその心を顕す形に

 私達が消滅せずに済んだのは私達の住む場所はその魔力兵器の位置、つまり虹の位置から最も離れた場所であった為です、その場所を最後に狙おうとした魔力兵器使用者達は星自身の魔力兵器行使により消滅させられたのです、我々の作った虹の守護殿だけを消滅させないようにして

 ちなみに、この虹は星が異空間へ人間を送り込む時以外には視覚出来ない物でした、虹の魔力の供給者星がその時以外には虹を仮の状態にして魔力を温存していたからです、ただ異空間での虹はその存在が貴方がた子供達の試練の為でもあったのでその試練時にも星は虹を発現させていた様です、特別に色を感じ取れる貴方がただけが見える形であったらしく推測する事しか出来ないのですが

 それで、星が何故作業のように自分で一気に私の近隣者以外の人間を消去しなかったかと言う点については、星が黒い心の子供であったから、と言う事で説明できるように思います、多分星は人間で遊んだのです、人間を人間に殺させて遊んだのです、私の居場所の安全性も星の遊び心をくすぐったに違い有りません、子供の受け入れ口である虹から全く取り込む必要の無い筈の人間を徒に何百人も取り込んだ事もこの推測を裏付けていると思います、星は恐らく黒い心なりにこれから来てくれる子供達のように振舞おうと考えたのでしょう、何にせよ、記憶の無くなった我々の悲劇は変わり様がありませんが

 私と私の近隣者の子供達を異空間に送り出してからの処分に関しては星は徐々に身体を蝕む食べ方で対応しましたが、それ以前に私達は集団自決の道を選んだようですね


 …これで我々と星の悲しい因果についての話は終わりです、それと、貴方は覚えていないでしょうが実は貴方との一方的な会話はこれが初めてでは無く、私達、話がややこしくなるから貴方がたと言うことにします、貴方がたが星の呼び掛けに応じて虹の守護殿に集った時、貴方は私の意志、意志とは手紙のような物で対話が出来るような存在では無かったのですが、それの宿った虹の十字架に触れ事の真相には触れない程度にこの世界の秘密を聞かされた筈です…あの時全てを語ってしまっても良かったのですが、貴方がた子供達を導いてきた彼らが最期にこんな悲惨な事実を知ってしまっては死んでも死に切れないだろうと思ったので止めました

 よくぞここまで頑張ってくれた彼らをこれ以上苦しめるような真似はしたくない、何より、彼らは我々自身なのだから、そう思うと、どうしても真実をあの時語る事は出来ませんでした

 こんなどうしようもない結末を導く要因を作った我々の存在を知られるのが恥ずかしかったのかも知れません

 それだから貴方に色々詮索されないようにと私はあの時自分自身で対話するのではなく意志と言う手紙を貴方に送ったのです

 本当は、私の分身が愛した貴方とは一度は対話したかったです、でも、もはや何もかも手遅れですね


 最後に、これはあの最初で最後の星との対話の時に直接聞いた事なのですが、何故、永遠の子供を欲した星が今の年齢の貴方達を選んだのか、と言う部分に触れておく事にします

 子供達、貴方を含めた希望の子らは基本的に子供と呼ぶには年を取り過ぎ、また大人と呼ぶには幼いくらいの年齢に在る者ばかりですが、星がその年代の子を求めたのには理由があります、星は、子供と大人を同時に求めたのです

 星は子供の純粋さを大人の力強さを欲しました

 がしかし星は大人を完全に受け入れるには幼すぎた為、貴方がたが大人として生きた部分の記憶を奪いました、星は、大人になりたいと思うと同時にずっと子供のままで居たいと言う願いも捨てきれない、丁度貴方がたと同じ様な、いえ貴方がたより少し下の精神年齢に当たる存在なのです、星は貴方がたを模範としてこれからを生き、成長していきたいと思っているのです

 星が持っている心は人の心と同質の物ですから、恋愛への興味も有る様で希望の子らの中にそう言った感情を抱き合っている二人が居る事に心ときめかせても居る様です、星が求めた四人を作った魔力の中に組み込まれた筋書き通りに二人が愛を抱き合っていると言うのは少し空しい事ですが

 求めた四人中三人が貴方の様に女性と言うのにも理由が有ります、それは星が新しきを産み落としていく存在だからです、女性は異性を男性を必要としますが新しい子を産むのは女性の体です、星は異性を必要としないにせよ女性的無性である究極母体です、だからこそ母体を持ち得る女性により共鳴するのです


 これら全ての宿命に基づき、今貴方と貴方の友達がこちらの世界に居るのです

 貴方の友達は星の異空間の中にいます、その存在の強さ気高さを死に至る試練にて試され、その試練を越えて肉体を離れた永遠の意識体と化して

 貴方は既に意識体ですが、貴方の居場所はそこではありません、

 貴方の居る場所は、星の異空間と星を繋ぐ虹の中です

 貴方は星の夢の世界と星の現実の世界、星の子供である部分と星の大人である部分の境界線に立っています

 前に言ったように、星は、心を持った星は次第に大人に成って行きますが、我々人と違ってその成長が余りにも遅いので、その成長の過程を簡単に忘れてしまう事が出来ません

 子供であった時の温もりを、一生涯忘れる事が出来ないのです

 我々人間にもそうゆう部分は有りますが、この星の場合ほど切実ではありません、その切実さが貴方がたの大人的な部分を星に強く拒絶させたのですから

 だから貴方はこの星の母親となってあげてください、一生年老いる事の無い、永遠の

 星が黒い心の殻に閉じ篭っていると言うのも、貴方の目覚めと共に終了する筈です

 そして星が星の現実世界において世界を作り上げていくと言う時、子供達によって浄化された大地を、人の心を少しずつ現実世界に戻していく時、何時でもその導き手となってあげてください、それが貴方にとっての試練です

 悲しみの七色を、いつの日か喜びの七色と呼べる事を祈っています


 さようなら、私の、我々の希望の子

 私は貴方に今までの事を伝える為だけに虹に封印されて世界を観察していた遺言製作体です、その遺言が一度語られたならそれで私の役目はお終いです

 これからは貴方がこの虹から世界を見つめ続けてください、その優しく美しい瞳で

 その瞳が、星の心の太陽となり世界を光で包み込みますように…

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