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イレールの宝石店  作者: 幽玄
第二章 魔法族は星のもとに集う
58/104

22Carat 忘却の聖水

―――「そう呼んでくれるな。その名ではなく、こう呼んではくれないか―――――」

ますます楽しげな表情を浮かべながら、イレールたちに嘲笑してみせる。



「――――――――“Eulalia(エウラリア)”と。」



―――それを聞いたクラウンが、鋭く叫んだ。

「――――エウラリアっ?!!エウラリアだとっ――――??!!!」


「―――クラウンっ?!!!!!!」

動揺した様子で叫ぶクラウンにイレールが振り向く。

彼――エウラリアはニヤッと犬歯をのぞかせて笑った。


「アナタはご存じだったか。リュシーはオマエにだけはワタシのことを教えてしまっていたようだな……困った奴だ。自分の誕生日さえも忘れてしまうような呆れた奴―――なぁ?仮面をつけても本質は変わらないモノ………さまざまな名を持つ道化死神。通称クラウン。


いや―――――



―――――餓鬼大将の“Felix(フェリクス)”?」






22Carat 忘却の聖水


―――「……懐かしい名で呼んでくれるね。」

クラウンが仮面を片手で押さえる。その口調はどこか寂しげであった。


「ワタシの記憶の中で、オマエは餓鬼大将フェリクスでしかないのでねぇ……」

エウラリアは状況を楽しむかのように、ねっとりと言った。

イレールたちの鋭い、刺すような視線を一身に受けながら、エウラリアは軽やかに別の屋根へと飛び移った。足元近くまで伸ばされた真っ直ぐな黒髪をサラリとなびかせて、彼らに嘲笑を含んだ赤い瞳を向ける。



―――完全に、エウラリアがその姿を現した。


イレールのカドゥケウスが周囲を円状に照らし出したその領域に、黒い、どこまでも暗い深淵を思わせる―――黒魔術師が降り立った。

 金の刺繍が凝らされ、大きく裾が広がったロングコート型の黒いローブ。胸元からは貴族を思わせる豪奢な白いフリルが覗き、首元には黒い逆十字のロザリオがかかる。腰には彼が手にした剣の鞘。そして二つの黒革のベルトが巻き付き、四つのその先端は地へと長く伸びて蛇のようにうねっている。


――――「少し遊ばないか?Lævateinn(レーヴァテイン)が聖者の血をご所望だ。」

 エウラリアは好戦的に言って、首元に剣を構えた。

それは――刀身も柄もすべてが黒く、不気味な、闇の剣。

黒い日本刀のような形状をして、月光を受けて怪しく光っている。

イレールがカドゥケウスを構えつつ感情を押し殺した声で言った。

「黒魔術族の宝刀も今や貴方だけの物、という訳ですか。」


――エウラリアの目がキッとつり上がった。


「―――――だまれッ!!!!!このお人好しがッ!!!!!!!」


彼の嘲笑は消え、憤怒の声が響く。

「キサマが“奴”の狂気に気づかなかったばかりにワタシは全てを失ったッッ!!!!」

「――――………ッ!!!」

イレールが眉をひそめ、苦しげに小さくうめいた。エウラリアはますます声を張り上げる。

「なぜあんな奴を信用したッ!!!?奴の心の奥底に潜んでいた狂気に、なぜ気づかない!!?」


「やめろッ!!あれはイレールのせいではない!!!!」

「そうよ!ただイレールは人を心から信頼しただけだわっ!!!」

「あの時イレールもたった一人の家族を亡くしたんだぞッ!!分かってんのかッ!!!」

クラウンが、ミカエラが、ジョルジュが、鋭く叫ぶ。


「キサマらがどう思おうが、過去を覆すことはできない!!

結果的にコイツがきっかけを作ったのだ!ワタシがすべてを失うきっかけをッ!!!

故郷も、家族も、友人も―――たった一人の理解者さえも……ッ!!!」

――チャキッ!!!

 エウラリアがレーヴァテインを構え、一気にイレールのもとへと切りかかった。


 「お兄さんは下がっていてっ!!」

「……ッ、分かりました……!!!」

ミカエラがハープに指を沿えながら背後のラファエルに叫んだ。ラファエルは悔しげに舌打ちをすると、彼らから距離をとる。

 「まずいなッ!!人間にこの騒ぎを聞きつけられては面倒だ!時間は止めておくぜッ!!」

ジョルジュがアスカロンを胸の前に立てて目をつぶった。

―――「我、国を統べる者。その覇者たるや龍を制す。」

目が見開かれ、アメジストの瞳が真っ赤に染め上がる―――


「例外を以て時を統べし……!!!!―――――


――――――――はぁッ!!」


―――勢いよくアスカロンが屋根に突き刺された


ジョルジュを中心に紫の魔法陣が地に浮かび上がる―――――――――

フッ……

一瞬にしてその魔法陣が消え失せると、住宅という住宅から生活音が途絶えた。



―――カキンッッ!!!

耳をつんざくような金属音がして、剣と杖が衝突する。

それは『破壊のレーヴァテイン』と、『統合のカドゥケウス』。

「「…………ッ!!!!!!」」

衝突する黒と白。

どちらもお互いを睨みつけ、憤怒の感情をぶつけ合う。

「貴方が百合さんを狙う目的は彼女を贄とするためですねッ!!なぜ何の関係もない彼女を巻き込むのですッ!!!!?」

「ハハッ……!!流石にそれは分かっていたか!だがッ、まだ教えてはやれんなッ……!!はぁああッ!!」

「……ッ!!私の大切な人をッッッ!!!私が憎いなら私だけを苦しめればいいものをッ!!!」

―――カキッ!!

首元へと突き出された刃を、イレールはカドゥケウスの柄で下に払いのける。

「イレールッ!!!」

互角の鍔迫り合いの中、クラウンがエウラリアの背後に切りかかる。エウラリアは身を翻し、サッとイレールから距離をとった。

「―――ッ!!私が追いつけないだとッ!!」

「害成す杖レーヴァテインに認められし者は死神の運動能力さえも凌駕する。軽い気持ちで向かって来ないことだなッ!!!」


ミカエラが素早くハープに指を這わせた。

―――「悲しみの聖譚曲(オラトリオ)っ!!」

心の底から悲しみが湧き上がってくるかのような旋律が流れた。

「……くッ!!」

エウラリアの周囲に暴風が吹き立ち、音楽記号の嵐が吹き荒れ、風の刃が、悲しみの感情が、彼を襲う。

―――ビュルルルルルルルルッッ……………!

「人の悲しみを想い、悔い改めなさいっ!!」

ミカエラが厳しく叫ぶ。

――バシューーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ!!!!

風を切り裂く音がした。

―――「この程度の悲しみで、ワタシの心が折れると思ったか?―――ズタズタに切り裂けレーヴァテインッ、この不快な感情の嵐をッ!!!」

シュッシュンッ!!!

エウラリアの素早い二太刀が風を十字に切り払った。

あれほど吹き荒れていた嵐はプツンと終息して消え失せる。


ジョルジュが間髪を入れず、エウラリアに正面から飛びかかった。

「時間を止める権限をアナタは特別にお持ちでしたな。それはそうと、王子様は王宮で御ゆるりとしていてはどうだ?」

エウラリアがアスカロンをかわし、ニヤリと笑う。ジョルジュはケッ…!と呟いて、嫌悪感をあらわにして言った。

「お生憎様だけどよッ!!オレは超庶民的な王子を目指してんだよッ、こいつらが戦ってんのにのうのうとしてられっかッ!!」

クラウンが肩に巻いたスカーフの下からトランプを取り出し、片手に広げる。

「スペードよ、黒きスパーダよッ!!剣の体に戻りて、十三の死の刃となれッ!!!!」

―――シュババババババッッ!!!!

クラウンの片手から勢いよく投げられた十三枚のトランプは、空中で短剣に変わって、エウラリアに容赦なく降り注ぐ。

「小賢しいッ!!」

エウラリアは怯むことなく素早くそれらを振るい落とすと、不敵にニヤリと笑った。

「ここは人間どもの世界。オマエ達の出方にも奴らの家々への遠慮が見受けられる。確かに建物を倒壊させるのはワタシも遠慮したい。これからもこの町には世話になるつもりなのでね。魔法界の重役にでも目を付けられては面倒だ。」

こちらを睨むラファエルをチラッと一瞥すると、彼は別の屋根に飛び移った。


――「今宵の目的を果たしておこうか。」

「目的とは何です……?」

イレールが冷たく尋ねる。その反応をエウラリアは鼻で笑うと、下の住宅をレーヴァテインで示した。


「この家の住人を一人残らず殺してやろう。」


何のためらいもないその言葉。

イレールたちの目がキッとつり上がって、その場の空気がさらに緊張感を増す。

ただ一人、ラファエルが叫んだ。

「武器を下ろしなさいっ!あなたの目的には、わたしが関係しているのではないですかっ!!!?わざわざ大天使を呼び寄せるなんて不可解ですっ!!!」

エウラリアは満足そうに口角を上げた。

「ご名答。さすが『神に癒されし者』の名をもつ大天使(アークエンジェルス)、ラファエル殿。今回の目的は二つある……。一つは賢者様たちにご挨拶申し上げること。そしてもう一つはあなたの所持物を分けて頂くこと………」

レーヴァテインを依然として屋根のほうに傾向けながら、彼は続けて言った。

――「“忘却の聖水”を分けて頂けますかな?」

皆、驚きの表情を浮かべた。

ラファエルが堂々とした面持ちでイレールたちの前に歩み出た。

「これが目的とは。」

彼が手を広げると、そこにはコルクで蓋をされた小さな瓶が握られていた。一見するとただの水の入った瓶。しかし、その水はキラキラと輝き、聖なる力にあふれている。

大天使ラファエルにも、エウラリアは物怖じすることなしに冷静に言った。

「キリスト教において人は死を迎え肉体が滅んだ時、魂……即ち心は、地獄か天国か、向かうべき場所を審判されるまで眠りについている。その心に蓄えられし記憶を……一時的に眠りにつかせるための道具が、“忘却の聖水”。当然のことながら天使といえど大天使以上の者しか所有できない。よってお呼びしたのだ……大天使ラファエル殿を。」

エウラリアは手を伸ばす。

――「さぁ、それをお渡し願おう。もちろんタダでとは言わない。取引だ。」

「それは……その家の住人の命と引き換えに、というわけですかっ………!!」

「そういうことだ。そしてもう一つ、今宵の出来事は守秘していただきたい。これには賢者様たちも賛同していただけるだろう………?」

―――ラファエルの脳裏を、大事にしたくない、というイレールの言葉がよぎった。

後ろを振り返ってみれば、皆、すがるような視線でこちらを見つめている。ラファエルは苦悶の表情を浮かべて下唇を噛んだが、すぐにエウラリアに向き合った。

「………いいでしょう。今夜のことは何人にも言いません……これもお渡ししましょう。」

ラファエルが小瓶を投げた。大きく弧を描いて飛んでくるそれを、エウラリアは片手で掴み取る。

――パシッ……!

「ご協力感謝しよう、ラファエル殿。」

 彼は小瓶を懐にしまうと、イレールに不敵な笑みを向けた。

「さて……今宵はお開きにするとしよう。キサマが愛してやまぬ、儚く美しい白百合の君。せいぜい大切にするといい。」

「言われずとも……彼女は私が守ります。全てをかけて……ッ!!!」

「ほぅ……。百合を愛でつつ、腕に抱き寄せられぬ半端なSaintサン-Hilaireティエール様に、果たしてそれができるかな……?」

「……………ッ!!」

嘲笑がにじみ出るエウラリアの言葉に、イレールは悔しげに舌打ちすると、冷たく呟いた。


―――「だまりなさい………貴方がお望みなら、今すぐにでも引導を渡して差し上げても良いのですよ………?」

必要となれば断罪も辞さない、制裁者の声―――だった。

それを聞いたエウラリアは楽しげにニタリと笑うと、ゆったりとレーヴァテインを構える。

「フッ……良い目だ。最後に今一度二人だけで刃を交えるか?」

「望むところです……」

イレールもブルーサファイアの瞳を冷たく光らせて、カドゥケウスを前に構えた。

「イレール殿……!ダメですっ!怒りに身を任せてはっ!!!」

ラファエルが間に割って入ろうとするのを、クラウンが引きとめる。

「ラファエル様!!どうかイレールを信じてやってほしいッ!!あいつは怒りに我を忘れるようなことは絶対にない!どんな時でも理知的で、理性的な対処をしようとするやつなんだッ!!!今も自分に向けられた憎しみの感情に、しっかり向き合おうとしているだけなんだッ!!!」

「………くッ!!」

ラファエルは悔しげに呻いて、一瞬顔を背けたが、イレールに向かって必死に叫んだ。

――――「イレールっ!!せめてあなたの視界を、往く道を、照らし出させていただきたいっ!!」

両手を大きく天に掲げると、ラファエルは天に向かって叫んだ。

「光あれ!!!!!」

――――――ピカッッッ!!!!

 空を覆っていた暗雲を切り裂くように、無数の光線がその間を突き抜けて地に降り注いだ。周囲に満ちていたエウラリアの闇の魔力が打ち消され暗雲は切り裂かれて、跡形もなく消え去った。


月が、星が、地上を照らし出して、明るい夜が再び幕開ける。


 イレールが、正面に立つエウラリアをまっすぐに見据えた。

彼らは大きな広いホールに降り立って、武器を構えて向き合っている。

カドゥケウスのブルーサファイアの玉を光らせるのを止めて、イレールはエウラリアに言った。

「良からぬことに使うことは承知ですが、忘却の聖水をどうするつもりですか?」

「知りたいか?一つだけ教えてやろう。これは“ワタシにとっての幸せ”のために使うつもりだ。」

「貴方の幸せ?それはつまり、私にとっての不幸。それを用いて私に不幸をもたらすということでは?」

「正解とも言えれば、不正解とも言えるな。まぁいい……おしゃべりはここまでだ。」

エウラリアの瞳が赤く血のように光った。その刹那一気にイレールとの距離をつめ、イレールに切りかかる。

「遅いッ!!」

イレールはひらりと身を翻すと、カドゥケウスに魔力を注いだ。

――「統合と調和の杖。その身に断罪の刃を宿し、聖槍となれッ!!!――」

 カドゥケウスの末端が鋭くとがり、槍の形をとった。

――――「はッ!!!」

「キサマこそ遅いッ!!!」

鋭く突き出されたそれを、エウラリアは後ろに素早く飛びのいて回避する。

「ワタシも、黒魔術師らしいことをしてやろう……」

彼は体勢を低く構えつつ、レーヴァテインの長い刀身をゆっくりと指でなぞる。

――「光あるところに我は有り。常に光に相反する者―――」

指が刀身を進むに従い、足元に黒い魔法陣が現れる―――


イレールは闇の魔術を感じてカドゥケウスを両手で握り、反撃に備えた。

白い魔法陣が、彼の足元で光を放ち始める。


エウラリアが鋭く言い放った。

――「レーヴァテインの黒き業火に邪油を注ぎ、光を喰らい尽くせッ!!」

――――ゴォッッッ!!

エウラリアが地を蹴ると同時に、黒き炎がレーヴァテインの刀身を包んだ。

その炎は激しく燃え上がると、瞬く間に刀身以上に拡張し、黒い炎の刃となってイレールに襲い掛かる。

 

 イレールは素早く詠唱した。

「天国の石、(てん)(せい)(せき)。セレスタイトの加護――――はぁッ!!!」

――カキィンッ!!

ブルーサファイアの玉が清涼感のある青色に変わり、彼はカドゥケウスで黒き炎を迎え撃つ。


―――ビリリッ!!

刃が交わった瞬間、電流がわき立つ音がした。

―――ビィイッビリリリリリッッ!!!!!

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッーーーーーー!!!

赤い閃光が走って、エウラリアとイレールの間で爆発が起こった。

――「………くッッ!!!」

黒い噴煙がエウラリアを取り囲み、彼の視界を奪う。その噴煙は電気を帯びて雷雲のようにバチバチと赤い閃光を放って、彼を赤い刃で襲った。

―――バチッ!!バチバチ!!

エウラリアは矢継ぎ早に降り下ろされる紅い無数の閃光を器用に避けていたが、

「ちッ!!!」

避けきれずに一つの閃光が頬をかすめた。赤い線が白い頬に走る。

「ほぉ……面白い………!!」

ニタリと笑うと、彼は頬の痛みを自覚しながら一気に噴煙の中を駆け抜けた。


 噴煙を脱出したエウラリアは黒いローブを所々ほつれさせて、息を少し切らせていた。レーヴァテインを地に突き立てて体重を支え、顔を前に傾けているためにその表情は窺えない。

彼の姿を認めたイレールは、カドゥケウスを構えつつ言い放つ。

「セレスタイトは炎を受けると熱発光を起こします。私の魔法は宝石たちの加護を受けて発動されることをお忘れなく。」

エウラリアからは返事がない。肩で息をして、俯いたままであった。


しばし、沈黙の時が流れた。

緊張をはらんだ空気は冷たく張りつめ、誰もが皆、目の前の黒魔術師から目を逸らせずにいた。


風が、彼の漆黒の髪を、イレールの飴色の髪を、優雅に揺らす。


――クッ……クッ……

風がそよぐ音にまぎれて、不気味な笑い声が聞こえてきた。

イレールだけでなく、他の三人も武器を構える。


――「ククッ!!――――流石だッ!!こうでなくては………!!!」

ガバッ!!

エウラリアが顔を上げた。

その表情は不気味な微笑みを浮かべて、楽しげに紅い瞳は細められている。イレールを射抜くような視線でとらえると、エウラリアは愉快そうに言った。

「ワタシと渡り合うとは……!!あぁ、やはり舞台を華やかにしただけある。ただ花を手折るのは面白くない。どうせ手折って絶望を与えるなら、本来のキサマを凌駕しなければ………!!」

彼は血の滴る頬に手を沿えると、そっとそこをなでた。

――――フワッ……

白い光の粒子が漂って、傷はみるみるうちに塞がっていく。

イレールが驚きの声を上げた。

「貴方は治癒術(ヒーリング)までできるのですか……」

エウラリアはフ……っと不敵に笑って言った。

「悔しいか?ワタシ自身、自覚のなかったこの素養を発掘したのはオマエの姉だ。恨むのなら、自分の姉を恨め。」

「………貴方と姉さんはどういう関係なのです?」

不可解な物を見るかのような視線を送りながら、イレールが尋ねる。エウラリアは端的に短く答えた。

「認め合うために教え合う仲。とでも言っておこうか。」

思案するような表情になったイレールをしり目に、エウラリアはレーヴァテインで地をつついた。

――影が黒い粒子となって下から噴出し始め、その姿が影に溶け込んでいく。


「今宵はここまでだ。次はワタシにとって大切な場所へご招待して差し上よう――」


「待ちなさいッ!!!まだ話は終わっていませんッ!!!」

イレールが素早く駆け寄るが、

―――「Au revoir(では、また会おう)……」

シュン……

黒い粒子が集束してはじける音がして、エウラリアは姿を消した。









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