9Carat 彼らの物語も、少しずつ紡がれていく…
9Carat 彼らの物語も、少しずつ紡がれていく…
クラースは、宝石店の屋根の上の、自分の定位置でのんびりしていた。
「今宵の人間界の星空は、一段と“光”にあふれておったぞ………仲良し四人組よ。」
その呟きは―――屋根の下の、友人たちへと向けられたものであった。
イレールが感無量というように、手を合わせた。
「………久しぶりに、四人がそろいましたね…!」
「イエェーーーーーイ!これは奇跡の瞬間さ!」
「ほんとねぇ~、昔を思い出すわぁ~~!」
「オレ、あんまこっち来ねぇし、久しぶりだな!」
クラウン、ミカエラ、ジョルジュ―――イレールの幼馴染が、楽しげにそれに応える。
彼らはイレールの書斎で、机に座ったイレールを取り囲んでいた。
「良いワインを開けましょう!今、準備しますね!」
イレールが席を立って、グラスとワインを持ってくる。
「手伝うわぁ~イレール。」
ミカエラがワインの入ったグラスを受け取り、それぞれに配る。
「かぁーーーーー!うまいね!おどけ疲れた体に染み渡るよ!もう一杯!」
クラウンがそれを一気に飲みほし、二杯目を要求した。
「……おどけ疲れるってあんのか?――あっ、うめぇ!イレール、オレにも、もう一杯!」
「あらぁっ!負けてはいられないわよぅ~!ぐびぐび………ぷはっ、わたしにもよぅ!」
二人も負けじと彼にグラスを指し出す。
「一気飲みは体に毒ですよ………」
そう言いながらも、イレールはそれぞれに二杯目を注いであげる。
ミカエラがお酒の味を楽しみながら、しんみりと言った。
「………何だかこうしていると…わたしたちも、大人になったのねぇって思うわ。」
イレールもワインを一口、口に含み、時の流れを感じて郷愁に浸る。
「そうですね……。」
し………ん。
みんなそれに続いて、場の空気はしんみりしたものになった―――が
「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!無理!」
クラウンが不意に叫んだ。
「こういう空気は耐えられないんだ!何かやるぞ!昔のように馬鹿げた遊びを、子どものように、向こう見ずにやろうじゃないか!」
頭をかきむしって、しんみりしたこの空気を、めちゃめちゃにする。
ジョルジュが呆れたように、はぁっと、ため息をついて言った。
「お前には、昔の思い出に浸るような、繊細な瞬間はねぇーのかよ?」
クラウンはニヤニヤしながら、首を振る。
「あるとも!しかしだね、せっかく集まったんだ。明るく楽しく過ごしたいじゃないか!」
呆れているジョルジュに対し、イレールとミカエラはノリノリだ。
「そうですね。何かしますか。」
「みんなで遊びましょう~!」
クラウンは残念そうに、ジョルジュに背を向けて言う。
「陛下はやんごとなきお方……庶民の遊びなど興味がないのでございますね…。では、私どもだけで……」
「えっ……いやっ…!誰もやらねぇとは言ってねぇーだろっ!オレを仲間外れにすんなよ!ってか、その話し方やめろっ!遊ぶなよなーー!」
慌ててジョルジュは弁解する。
ちょっとだけ、涙目になっている。どうやら、少し傷ついたらしい。
「ははっ!陛下がいないといじる相手がいなくて、つまらないからね。」
「クラウン……。」
それを聞いてジョルジュは、ほっと胸をなでおろした。
いじられることには、不満はないらしい。
にやりと、クラウンはトレードマークの不敵な笑みを浮かべると、三人に言った。
「さて、じゃあ――――――――鬼ごっこしないかい?」
「いいわねぇ~動きましょう~~~~」
「ヴァンパイアの無音飛行が光るぜぇ~!」
ミカエラとジョルジュは賛成する。
「ええっ……外に出るんですか~?」
寒がりのイレールは渋っている。三人はイレールを取り囲み、グラスを奪うと、彼の腕をぐいぐい引っ張り始めた。
「ほらほら、行くよ。ミカ、イレールのファーコートを持ってきてくれるかい?」
「りょうかいよぅ!…………ほらっ、行くわよぅ~寒がりさぁん!」
イレールの肩に、ミカエラは無理矢理ファーコートをかける。
「行くぞ!動くんだから、そのうちあったまるって!」
「ちょっと、何するんですか~~~!!」
三人に背中を押されながら、イレールは外へと連行されて行った。
――――結局、夜の住宅地の屋根に、彼は降り立っている。
「うぅ………寒い…………。老体に堪えます…。」
縮こまって震えている友人にはお構いなしに、クラウンは三人にルールを説明する。
「私が鬼をしよう!その方が盛り上がるからね。死神の運動神経を、フルに発揮して逃げるから、お前たちは全力で私を捕まえにかかっておいで!」
「それだと、オレたち不利じゃねぇ?」
ジョルジュが不満そうに言った。
「そうねぇ~ちょっぴりハンデがほしいわぁ。」
魔法族はみんな人間離れした身体能力を有するが、それでも彼にはかなわない。
死神は全種族中最高の運動神経なのだ。
不満を受けたクラウンは手を顎へと持ってきて、しばらく考え込んだ。
「……じゃあ、こうしよう!私は全力で逃げるが、気配はわずかに残す。それを頼りに追いかけておいで。そして、お前たちのみ、どんな手を使ってもよいことにする!魔法もオーケーだぁーーーー!」
豪快に言い放った。
「よし!のった!」
「それなら、よさそうねぇ~!」
イレール以外の三人の間で、話はまとまり――――――
「では、鬼ごっこ!レッツ・スタァーーーーーーーーートォーーーー!」
――――――シュッ!
クラウンは夜空に叫んだと思うと、駆け出し、夜の闇に姿をくらました。
――――シュタタ!
三人も後に続いて、走り出す
人間では、肉眼で捕らえられない、その速さ――――――――
「ふふ、イレール、復活したのねぇ。」
ミカエラが隣を走る彼に話しかけた。
「はい!こうなってしまっては仕方がありません!あのおどけものを捕らえましょう!」
やる気に満ちた声が返ってくる。
「ひゅ~頼りにしてるぜぇー!白魔術師~!」
「作戦、何かないかしらぁ?」
「そうですね……とりあえず、それぞれの種族の得意な部分を生かして…各自捕まえにかかってみませんか?」
「よーし!じゃ、それでやってみっか!」
「わたしから、やってみるわねぇ~~~~!」
――――ふわぁ………………ん……
背中に、穢れなき純白の羽を広げる。
「わたしが、ウインクしたら、耳栓をしてねぇ~二人とも~」
「………あれか!確かにそれなら、やつの動きを封じられるな!」
「……本当に、何でもありですね。」
二人は、彼女の考えに予想がついたようだ。
自分たちの先を走る道化に、彼女はおっとりと話しかける。
「クゥ~ラァウ~ン。わたしの声聞こえるかしらぁ~~~~~!」
「ああ!聞こえるとも!」
彼は余裕たっぷりに、後ろに向かって返事を返す。
「じゃあ、少し――――――止まって。」
「うん。いいとも。」
―――――ピタッ!
「止まってくれるのかよっ!」
ジョルジュが鋭くつっこんだ。
クラウンとの距離は、だいたい5メートルくらいか。
「ミカエラ、歌っちゃうわよぅ~~~~!ミカエラ流讃美歌、ハレルヤ~~~~!」
ミカエラがウインクする。
―――パッ!
イレールとジョルジュは、耳栓をはめた。
彼女は、おっとり、天使の歌声で歌い始めた。
~~~らららぁ♪
はぁ~れるや~ はぁ~れるや~ はぁれぇるやぁ~~
(………くっ!天使の歌声か…癒しの力にあふれているあまり…眠気が襲ってくる………)
クラウンはふらついて、頭を押さえた。
(おお!効いていますね!どんな歌を歌っているのか、全く聞こえませんけど!)
(あんな姿のクラウン、久しぶりにみるぜぇ~)
二人は、期待の眼差しで様子を見守る。
――主に捧げたい~ シフォン ふぉん ふぉん シフォンケーキぃ~
一口たべればぁ あらぁ ふしぎ~
天使も 天に昇るぅ 気持ちになるのぉ~~~
ほっぺが落ちそうよぅ 言葉の綾よぅ ほんとに落ちたら~ グロテスクぅ
ああ はぁれぇるやぁ~~♪
「―――プッ!」
クラウンはふき出した。
(あれ?笑いましたね……?)
(なんか……様子がおかしいぞ)
二人は気になって耳栓を取った。
「ぷっ!はははぁ!ミカらしい歌じゃないか!一気に眠気がどっかに吹き飛んだよ!では!皆の衆!さらばーーーーーーーーー!」
ピョーーーーーーーーーン!
クラウンは勢いよく跳び立った。
「「ああーーーーーーーーーーーーーーー!」」
「………あらぁ……効かなかったわぁ。どうしてかしらぁ~?」
歌い終わったのに、クラウンが眠りにつかなかったので、ミカエラは首を傾げた。
「何だかよくわからねぇーーーけど!失敗だな!行くぞ!」
ジョルジュが走り出す。
「行きましょう!ミカエラ!」
ミカエラに急いで声をかけて、二人も駆け出した。
「次は、私が行きます!」
イレールが颯爽と先陣を切る。
「私は白魔術師であり、宝石商……美しき宝石たちが味方についている。ていうか、私にはこれ以外思いつきません!」
「いってきます!」
意気揚々と、彼は駆けだして行った。
「いってらっしゃい~」
「決めてこいよー!」
イレールはクラウンに叫ぶ。
「クラウン~~!貴方の身体能力は~~神がかり過ぎて、どうしてもミカエラのように、貴方自身の!走るという気力を奪うしかないような気がします!」
クラウンが後ろを振り向く。
「どうするのかい?褒めても止まっては、やらないよ?」
イレールが走りながら、左手にヒスイ色の石を出現させた。
「さぁ、アベンチュリン!多大なリラクゼーション効果で、彼をとことんリラックスさせてあげてください!」
彼の手を離れた深緑のアベンチュリンは、クラウンにあっと言う間に追いつくと―――
―――彼の背中に、やんわり溶け込んでいった。
クラウンは、のんびりした様子で―――止まった
「さすがだわぁ~イレール!」
「やったなぁ~!」
二人は勝利を確信した。
「流石、リラックスさせる石の代表格!――――クラウン!捕まえましたよ!」
イレールはクラウンの腕を掴もうとした、が。
ヒュン!―――
クラウンは身を翻して、目にも留まらぬ速さで走り出した。
「な、なぜ!」
「ははははーーー!イレールはアスリート魂を分かっていないなーーーーー!自己ベストをたたき出すためには、自分を最大限リラックスさせること!が大事なのさ!」
彼は明らかに、先ほどよりも身軽で、ますます速い。
「………じゃあ、私は、火に油を注いだだけってことですかーーーーーー!?」
イレールが青くなった。
「そういうことさ!」
「そんな~~~~~~~!」
イレールはへたりと、その場に崩れ落ちた。
―――クラウンとの距離は、どんどん広がっていく
「おい!イレール、落ち込んでないでいくぞ!」
「負けないで~、まだまだこれからよぅ!」
二人はそれぞれ彼の腕を掴んで、再び走り出す。
「次はオレだな!って言いたいとこなんだけどよ……。」
ジョルジュは自信なさげに口を開いた。
「オレは力技しか思いつかねぇんだよな……なんか、クラウンの苦手なものとか、ねぇのか?」
イレールがハッとしたような顔をした。
「陛下!今、すごくいい案を言ってくれましたよ!」
「お?なんかあんのか!」
「わたしも分からないわぁ~」
イレールが、神妙な顔をして言った。
「二人とも、これはどんなことをしてもいいんですよね………?」
「そのはずよぅ?」
「ああ、魔法もいいしな。」
「唯一、彼を手玉に取れる方を知っています。大急ぎで助っ人として呼んできますから、陛下はそれまで、力技で彼を捕まえにかかっていてください!」
「……そんなすげぇやついんのかよ。………分かった!頼むぜ!」
イレールとジョルジュは、それぞれ反対方向へ駆けだして行った。
「がんばってねぇ~陛下ちゃん!」
ミカエラの声援を受けて、ジョルジュは背にヴァンパイアの蝙蝠の羽を出現させる。
「おいこら!おどけ者!これでもくらえ!」
―――バシュ、シュ……!
クラウンは、ひらりと容易くそれをかわす。
「おっと………うん?これは―――――大理石の欠片?」
「ほらほら!よそ見してる場合じゃねぇーぜぇ?」
――――シュン!シュン!……シュン!
ジョルジュは次々に大理石の欠片を、容赦なくクラウンに投げつける。
それを簡単に避けながら、クラウンが楽しそうに言った。
「これは宮廷ご用達の黒い大理石じゃないか。何か重要な像だったんじゃないかい?」
―――ピクッ!
彼の目がつり上がった。それでも投げるのは止めない。
「……これはな…オレ様の先祖の像だった、もの、だ!この間ふざけてデンファレに壊させたら、親父に大目玉くらったんだよ!くらぇ!オレのやるせない思い!」
―――――シュン!シュン!シュン!シュン!
投げる勢いが強まった。
「それは私に当たられても困るね~。」
やれやれ……とクラウンが肩をすくめた時だった。
―――――バシャーーーーーーーーーーーーーーーーン!
クラウンは突然、ずぶ濡れになった。
彼は―――――思う。――――――まずい
鬼ごっこに“鬼神”が降臨したことを感じ取ったのだ。
「急用を思い出したよ!遊びはここまでだぁ!また会おう!我が友よ!」
クラウンが慌てて、駆け出そうとするのを―――――
―――バシッ!
しっかりと捕まえる者がいた。
「あなた……ここで何をしているの?」
冷やかな、声。
「それはだねぇ……息抜きというか、何というか…。」
クラウンの目が、仮面の下で泳ぐ。
「明日の早朝、ホールのお偉いさん方と交渉事があるから、早く寝ないとまずいんじゃなかったの?」
淡々と、冷静に、鬼神は彼の精神を追い詰めていく。
「そうだったね~思い出したよ。ありがとう!……レ、レディー。」
彼が遠慮がちに見つめる先には――――彼が裏で鬼神と呼ぶ。レディー・アーレイ。
彼女は、キッ!と、自分の上司を睨みつけると、彼の銀糸のような髪を一房ひっつかんで、引っ張り始めた。
「忘れてたはずないでしょーーーーーー!私たちがいつまでここで公演できるかが、かかってんのよーーーーー!あなたに私たち団員の明日の命運がかかっているのよーーー!」
「痛!痛い、レディー!髪が抜ける!脱毛する!この歳で薄毛に悩ませないでおくれーー!」
クラウンはタジタジになって、情けなく叫んでいる。
「何とか、間に合いましたね!」
その状況を見て、固まってしまっている幼馴染二人のもとに、イレールが現れる。
「すごいわぁ。彼女の種族はなんなのぅ?」
「彼女はマーメイドですよ。」
「……はぁ?!まじか!死神を恐れずにあそこまで手玉に取れるって…やべぇ。」
三人は、兄貴分気質の幼馴染の珍しい姿を、特に助けに行こうともせずに、ただ、眺めていた。
「はぁ~~~~。私の負けだ。こうさん。降参。」
クラウンは、大きくため息をついて、腰をおろした。
町と星空が見渡せる、その高台の開けた広場に、四人はいる。
遠くに微かに海が見えるその場所は、イレールにとって、大切な彼女と夕焼けを見た、
少しだけ、特別な場所―――――
レディーは三人にクラウンを任せ、その場をあとにしたのだった。
そこには、幼少のころから辛苦や喜びをともに分かち合った、四人しかいなかった――
「ここは、星空が良く見渡せるわねぇ。」
ミカエラが、たれ目がちの瞳を細めて、夜の空を見上げた。
天上は、宝石箱をひっくり返したような星空。
宝石の女王、ダイヤモンドの輝きを最大に引き出す、ブリリアント・カットもかなわないほどの、きらきらとした――――輝き
イレールが、胸に飾った、スター・サファイアのブローチを取り出した。
「私たちの心の中にはいつも――――“光”が、輝きの星が輝いています。」
その声は、彼の幼馴染三人と――もう一人の誰かに捧げているかのような。
「ああ。私たちの心の中に――そして、毎日……星の光となって、優しく私たちを導く。」
クラウンが、穏やかに言った。
「そして、わたしたちだけでなく、人間たちでさえも。……暗い夜を、照らし出して…。」
ミカエラが、目をつぶって言った。
「そして、魔法界に住まう、多種多様な魔法族でさえも。……お互いの和解の象徴として…。」
ジョルジュも星空を見上げる。
しばらく――――誰もが、“光”を思い。優しい空気の中、“光”にひたった。
「――――彼女、どこか……似ていますよね。」
イレールが、その空気を壊すことなく、問いかけた。
その言葉に、三人は、頷いた。
「お前が大切に思う――百合のことだろう?」
「ええ。出会ったその日に思ったわ。」
「ああ。姿形はちがうのにな。どこか似ている……。」
「これは……私が百合さんを大切に思う気持ちとは別の話。私が彼女を思わずにはいられないのは――――遠い昔、彼女が私の心を救ってくれたから。」
彼の瞳が、愛しい者を思って、優しく細められる。
「クリア・フローライトの心で、蛍のように、私の心を導いてくれたから。」
「………そして、その思いが、彼女とともに過ごすうちに、より強固なものになった。」
不意に、彼は寂しげに、幼馴染たちを見つめた。
「私は、恐れています……また、あの悲劇が繰り返されることを…。百合さんが、私たちの“光”に似ているあまり……その人生を狂わせてしまうかもしれないということを……!」
「やめろ!イレール!」
クラウンが、怒気を含んだ声で叫んだ。
「今は時代も、状況も違うんだ!そんなことは考えるな!」
イレールに荒々しく歩みよる。
「この世界は――私たちの生きるこの世界は!光――――――“リュシー”が望んだ先にやっと見えた理想郷なんだ!」
「その……命が尽き…肉体を無くしても………実現させたいと…望んだ………」
苦しげに言葉を紡いでいたクラウンは、力なく顔を伏せた。
「クラウン……」
ミカエラも、見ていられなくなって、顔を伏せる。
「ごめんなさい………。」
イレールはうつむいて、言葉をつづけた。
「彼女への思いが強くなるとともに……大切な彼女を、大切にしすぎてしまうんです。」
彼は、スター・サファイアをなでた。
それを見たクラウンが、顔をあげた。
「……すまない。私も頭に血が上ってしまった。」
落ち着いた声音に戻る。
「そんなことは―――きっと、起こらないさ!私のサーカス団と我々が、この世界でおどけている限り!」
「そうよぅ!イレール、ルノワールの想像理念よぅ!これ以上辛いものをつくる必要はないの!」
「全くだぜぇ!お前は破壊神デンファレが苦手だからな!オレが代わりに辛いことは握りつぶしてやんよ!」
幼馴染が、彼を取り囲んで、強い眼差しを彼にぶつけた。
「……そうですね。この心配は、きっと杞憂なのでしょう。考えるのは…やめます。」
イレールは、やわらかい平生の微笑をたたえて、スター・サファイアをしまった。
「もう一本ワインを開けませんか?帰って、また飲みましょう!」
四人は、彼の宝石店へと向かって、仲良く歩み出す―――
この世界の暗闇を照らす星々――――は、今宵も人間たちと、彼らを、優しい光で、照らし出していた―――――




