恋は目で見ず心で見るのだわ。
もう恋なんてしないなんて、言わないよぜったい。
わたし、黒沢ユキ。独身、32歳。
きのう6年付き合ってた彼氏に振られた。
理由は、わたしを女として見れなくなり浮気して、結局その浮気相手に本気になったから、らしい。
それを聞いたわたしは、怒りも涙も出なかった。
ただただ、目の前が真っ暗とはこのことかと、頭が麻痺していた。
女としてみれないって、
どういうことっっっ!???
ショックからまだ立ち直れない翌日の今日、鏡の前に立ってびっくりした。
丸太ん棒のような二の腕、パンツの上に乗っかかった腹の肉、ぶよぶよとした太もも……
それより何よりとっておきなのは、顔、顔だよ!
この虚ろな死んだ魚のようなどんより目と、吹き出物オンパレードなガサガサ肌と毛穴の黒ずみ半端ないいちご鼻。
オマケは裏切りません、伸ばしっぱなしのボッサリゴワゴワな髪。
どうして、どうして、こうなった…わたし。
元カレになったケイジと出会った頃は、わたしもう少しマトモだったよね?
イヤむしろ、あと8キロは痩せてて、化粧っ気あってまだかわいいと言われてたような…。
あ、当時一緒のバイト先の丸山くんに告られたこともあったんだよ、合コン行けば必ず電話番号ゲットされてたし、デートにも誘われてた。
そ れ な の に 、 な ん じゃ こ れ ! !
「そりゃぁ、振られるわぁ…。」
ガックリと肩を落とし、目の前の鏡に写る醜いわたし、落ち込んだ姿も相変わらず醜い。
ケンジは常にわたしらしく居てくれって言ってた。なぜって、わたしが好きだから。
これ以上他のオトコにモテて欲しくない。なぜって、わたしが好きだから。
太ったってなんだって、ユキを好きな気持ちは変わらない。なぜって、わたしが
好きだから。
わたし、ケンジの優しさに甘えてたんだ。
…つか、ケンジってば最強のサゲチンじゃん。
もうわたし決めた。
もう絶対に恋なんてしない。
恋なんてしてやるもんですか!
恋って何?美味しいの!?
恋なんて ー !!