第十七話 決意
大規模戦闘から数日後、両国は更なる軍事技術を高めていく。
「では」
「陛下、よろしいのですか?
いくらアンノウンを倒すためとはいえ」
「メスト、お前の気持ちも分かる。
だが、これ以上戦いを長引かせる訳にはいかない」
「…陛下の仰せのままに」
「ところでジェミーを見なかったか?
最近、いなくなることが多い」
「ジェミー様もお年頃。
あまり押さえつけては嫌われますよ」
「なっ!そういう事ではなく!」
「冗談だ。
ジェミーにはブレイドが付いている。
心配はいらないだろ」
「そうだな」
その頃、ジェミーはアウルと共にカーロスの街を歩いていた。
「あれ凄く可愛いわ!」
「本当!ジェミー、行ってみましょう!」
「こんな時に買い物とはな」
「御二人共、今が争いを忘れられる唯一の時だと理解されているのだろう。
争いさえなければこんな日が続いていたのかもしれんな」
「争いが終わるのも後少しだろうな。
両国共に次の戦いを最後にしようと大忙しだ」
「そういえばお前の父親が負傷したらしいな。
側に付いてなくていいのか?」
「ないない。
あの親父は化け物だよ。
処置が終わるともっと腕を研くとか言って暴れまわってやがる」
「恐ろしいな」
「…ああ、戦うのが嫌になる位な。
ん?あの二人どこいった?」
「なっ!見てなかったのか!」
「お前もだろ!」
二人は慌てて周囲を探し、路地裏にいるアウルとジェミーを見つけ近づく。
「おい、あんまりうろうろするなよ。
どうした?」
アウルとジェミーの視線の先にはラウドの姿があった。
「アウル、もしかしてこの人」
「ええ、ラウド・ウィラー」
「二人共下がれ」
アルファとブレイドは二人の前に立ちラウドを睨む。
「こんな時にお姫様がお出掛けか。
しかもそっちはクルードの姫だな」
「てめぇがアンノウンか。
この前は親父が世話になったようだな」
「アルファ、ここで片付けるぞ」
ナイフを取り出し構えるブレイド。
「やめておけ。
俺に何かすればこの街が消し飛ぶぞ」
ラウドが空を指差すと上空に一瞬、シヴァルードの船底が見えた。
「くっ!」
「ラウド、あなたの過去を聞いたわ。
ご両親の復讐をしたい気持ちも分かる。
でもそれでは何も生まれない。
もしこの争いを止めたいと思うなら私達に力を貸してほしい」
「アウル!?」
「復讐…下らないものだな。
己の感情のままに動く愚かで低脳なものだ」
「なら!」
「勘違いするな。
俺は復讐なんて考えは持っていない。
破壊者だと前に言ったはずだ。
全てを破壊するだけ」
「どうしてそこまで!」
「世界に教えるためだ。
何をしても俺達には勝てない、どんな技術をもってしても。
そして気付く、戦う事の無意味をな」
「なら…私はあなたを討つ!」
「楽しみにしておく。
次に会う時は…宇宙だ」
ラウドは笑みを浮かべ去っていく。
「必ず止めてみせる。
戦争もあなたも!」
こうして両国は全戦力を宇宙へと移し始めた。