第六話「我が赴くは幻想の世界・後編」
目が覚めると俺は三食+寝場所を手に入れていた。え?ええ。感無量です。やっと生活のための第一歩を踏み出したって感じですね。ええ。はい。………………
「嫌ぁぁぁあっ。ここからだしてぇぇぇっ」目が覚めたら牢屋にいるとか、有り得なすぎワロエナイ。俺が何をしたって言うんだYo!?
「うるせーぞ新入り。」振り返るとそこには男女の二人組がいた。男の方は、髪の方はだらしなくボサボサで、茶色だったが、それとは対照的に筋肉はしっかりとしていてムキムキであった。第一印象は脳筋と言ったところか。
女の方はすらっとしていて華奢な感じが伺えた。髪は赤色のショートでイメージは運動部所属みたいな?目つきがちとキツいがひとまず及第点と言ったところだ。
しかし相変わらず何を言っているのか分からない。あれ?コミュニケーションが取れずに知らない土地に放り出されるとか無理ゲーじゃね?と今更ながら気づいた。その時の絶望の顔といったら、ムンクの叫びに匹敵しただろう。そのおかげか、彼らは察してくれた。
「成る程…ゼイブ語が喋れないから被征服民として連れてこられたんだな。だったらこれを使え。」
男の方が何か差し出してきた。それは金属でできた球体のようなもので、よくわからない文字が刻まれていた。受け取った刹那、その球体に羽が生えて俺の耳の中に入ってきた。いきなりすぎて一瞬何が起きたのかわからなかったがな。
「それは魔導具の一つ、【ユーバーゼッツング】。話されている言語と、聞き手の思考するときの言語を伝道させて理解出来るようにする代物だ。」
最初から説明しろよタコ助。心臓飛び出るかと思ったぞ。あぁ、無理だったか。
俺が不思議なものを見るような顔をしていると、男の方が「お前……もしかして魔導具知らないのか?」とほざいてきやがった。知るわけねーだろ。まどうぐ?何ぞや。お前何なの?電波系なの?
「魔導具は事象と事象を伝道させて世界の理を超える技術の結晶よ。」すると女の方がここぞとばかりにしゃしゃり出てきた。そんなに脳内設定人に聞かせるのか楽しいか?
「これしきのことも知らないから、憲兵隊に簡単に捕まるのよ。無様ね。」は?何だこの女。高圧的なキャラが許されるのは二次元までだぞ。平面にカエレ。
「俺たちも人のことは言えないけどな……」と男が肩をすくめる。
すると女の方が「何ですって!?」
と切れた。お前ら、夫婦漫才は余所でやれよ……。
俺が飽きてきて鼻をほじっていたせいかもしれないが、男の方がこちらを見ると、取り繕うように語りかけてきた。
「すまんな。相方があれで。名乗るのが遅れたが俺の名前はバドルス=ネルガー。相方の方はレイラ=ドラゴスブルグって言う。まぁ俺達は帝国に捕らわれている人たちを救出しようとしたんだけれどよ……ドジ踏んじまってこの通りだ。」ん?……帝国?おかしい。二十一世紀の地球には帝国は存在しないはず……。俺は恐る恐る聞いてみた。
「帝国って?」
バドルスは当然と言わんばかりの口調で、無慈悲に告げた。
「帝国と言ったらオルガゼイブ帝国の他にあるまい。」
ここにきて俺氏、この世界が異世界だと悟る。