第五話「我が赴くは幻想の世界・中編」
ガチャガチャと音を立てながら、集団が近づいてきた。遠目で見ても人だとわかった。そのことに安堵しつつ、俺は彼らに助けを求めることにしたが、彼らの姿を近くで見た瞬間、固まってしまった。
それは彼らの格好によるものなのだけど、なんと中世ヨーロッパ風の鎧のようなものを着ていたからだ。何?俺タイムスリップしちゃったの?と一瞬かんがえたが、すぐに思考を振り払った。今はそんなことはどうでもいい。この人達に助けを求めよう。人だし話ぐらい通じるだろう、と軽く考えていた。しかしそんな希望はすぐ打ち砕かれることになる。
「すいません、俺たち道に迷ってしまって…街まで案内してくれませんか?」
すると、男たちは怪訝な顔をして、顔を見合わせた。ボソボソと話しているが何を言っているのか分からないし。もしかして英語なのか?嫌だなぁ。俺苦手だし、と考えていると彼らが話かけてきた。「お前ら、どこから来た?」何言ってんのコイツ。喋ってるの英語ですらねぇじゃん。仕方ない。「き、きゃんゆーすぴーくいんぐりっしゅ?」
流石に通じただろう、と思ったが、彼らのリアクションは薄い。それどころか、穏やかだった顔が、ゴミを見るような顔に変化したんだけれどどういうこと?
「貴様ら、ゼイブ語が話せないのか。だとしたら被征服民の奴隷どもか。こんなところまで逃げて来るとは…我が帝国からは逃れられぬと言うのに。」
だからさっきから何語喋ってるんだよお前ら。
「捕らえろ。」「はっ!」
リーダーっぽい人が何か言った瞬間、他の奴らが剣を抜いて襲いかかってきた件。そこで俺の記憶は途切れることになる。