第三話「事情を説明して頂戴!!」
オッス!オラ秋葉陽!俺は今とても機嫌がいいんだ!え?それはなぜかって?ふふふ。良いこと聞いてくれるじゃないかお兄さん。
俺は今特上の妹を手に入れたところなのだよ!え?後悔?冗談じゃない。全くしてませんことよ。
まぁそんなわけで今俺は美少女と二人でマイホームに向かっている訳だ。幸い、両親は海外に出張に行っているので問題ない。今後の身の振り方を考えていると、彼女が「お兄ちゃん…」と話かけてきた。これだけでご飯三杯はいける、と思いながらも、平然を装って聞き返す。
「どうしたんだい?妹よ。」すると彼女は申しわけなさそうに「私の名前は…何?」と尋ねてきやがった。
迂闊だった。全く考えていない。
だが、ここで答えに困っていると疑われることは明白だろう。適当に好きなrpgのヒロインに似ていたから拝借させてもらうことにし、半ば適当に彼女に命名した。「君の名前はエリナだ!」これなら日本風の名前でもとれるので、兄弟と言っても差し支えないだろう。
しかしこんな軽いノリで決めてしまっていいのだろうか?ええい、ままよ!
「私の名前が…エリナ…?」彼女は俺が与えた名前を何度も反芻していた。気に入ってくれてくれて何よりだ。
しかし、俺の頭の中は早くも桃色になり、帰ってから何をしようか、ムフフと下衆いことでいっぱいだった。
そんなことを考えていたから気づかずに反応が遅れたのかもしれない。目の前にゾンビがいたことを。
「あァあァあぁァ~」ヒトならざるものの声がする。「ん?」そこで俺は前を見た。
するとそこに夢に出てきたゾンビがいるではないか。「え?」これは夢ではないかと思って頬をつねってみる。うん。痛い。ということは前方のゾンビがこちらに向かって猛ダッシュして来ているのは現実なのか?おかしいだろ。いや、ゾンビがここにいることは取り敢えず置いといて、普通ゾンビって動き遅いよね。なんであんなに足が速いの?
どうする、逃げるか?いや、無理だ。俺一人なら何とかなるかもしれないが、彼女がいる。
偽りとはいえ、俺たちは兄弟となった。妹を放っておいて兄だけ逃げるなんて言語道断である。ならばどうするか?決まっている。奴は俺たちを襲いかかって来ている。ここは妹を庇うのが兄の努めだ。彼女を庇うようにして俺は奴の前に出る。
奴の拳が腹に入ると、意識が遠くなっていく。景色が歪んで見えるのは気のせいだろうか。