第一話「来訪者」
突然だが俺、秋葉陽は至って普通の高校2年生である。人と変わっているところと言えば、少々のオタク趣味と、予知夢?能力といったところだがこれに関してはあまり自信がない。
正夢になることもあるにはあるのだが、大半は現実的にあり得ないことが起きているので、B級映画を見せられている錯覚に陥る。
一昨日も、ゾンビが出てきて襲ってくるバイ○ハザード顔負けの、アメリカンな夢を見てきたところだ。そういった夢を見た時は、絶対正夢にならないと思っているが、なんとなく嫌なので夢に出てきた風景のところは通らないようにしている。
だが、今日の俺は敢えて夢にでてきた道を通っている。なぜなら昨日の夢の内容は空から女の子が降ってくるというものだったからだ。それも十分あり得ないことだと普通の人から見れば思うのかもしれないが、彼女いない=年齢の俺のフィルターを通して見れば、あら不思議。正夢になるという確信が湧き起こるのだった。
そんなわけで今俺は人目の少ない路地裏に来ている。ここは普段DQNどもがたむろしている場所だが予知夢が正しければ今日はいないはずだ。内心びくつきながら道を進む。
「ここか…」間違いない。夢に出てきた風景そのものだ。俺はいつ女の子が降ってくるか、と辺りを見回した。予知夢の欠点としては、いつ事象が起きるのか、正確な時間がわからないことだ。
なので、少しの変化も見逃さないように俺は集中することにした。辺りを見回し、後ろを見ると、空に巨大な穴が開いていた。「わぁお」思わずつぶやいてしまう。え?おかしくね?なんで空は青いのにそこだけ黒いの?こんなの絶対おかしいよ、とパニックになりかけていた俺だが、これから女の子が降ってくるのを思い出す。
女の子にパニクっている無様な姿を見せる訳にはいかない。ここは落ち着いて、クールな対応をしなければ(キリッ
待ち構えていると、黒い穴から人影が見えてきた。ここは俺の胸で優しく受け止めてあげよう。そう思って手を広げながら近づいていくと、だんだん彼女の輪郭がはっきりとしてきた。
艶やかな金髪。サファイアのような碧眼。パーツとしては申し分ないが、今の彼女の顔には魅力は全く感じない。なぜなら、もの凄いスピードで落ちてきているので、顔が般若のようになっているからだ。ここで俺は自分の過ちを自覚し、悔いた。
なぜ見栄を張って彼女を抱きしめようとしたのか、と。気づいたときには既に遅く、人間大砲と化した彼女が俺の腹にめり込むのにそう時間はかからなかった。