迂闊
前回のあらすじ
なんかボロい学校あったのでそこで寝ることにしました。
「予想した通り、どの部屋もボロボロだ!」
誰もいないのを知っていて、叫んでやった。鬱憤を晴らすためだったが、風の吹き抜ける音がして、さらに虚しくなった。見て回る限り、完全に元学校である。なぜこんな場所にあるのか。とりあえず、一番マシそうな2-3の教室に入ったが、一歩踏み込むとキシッという音と共に床が少し沈んだ。そっと足を戻し、隣の2-4の教室に入った。今まで見た中で一番汚かったが、知るか。もう寝る。と、床にうつぶせになったが、床から腐った雑巾の匂いがする。持っていた弁当のプラスチックの蓋の上に頭を乗せて寝た。歩き疲れていたので、一瞬で眠りに落ちた。
しばらくして自然と目が覚めた。めちゃくちゃ木の軋む音が聞こえる。正直うるさい。超うるさい。寝れない。ちょっとまて、僕以外何もいないはずじゃ...体を起こし、耳を澄ま
「ブゴォォ」
そんな音が直後に聞こえる。右から。あっ、2-3で寝なくてよかった。窓から逃げようか、あっここ二階。明らかにパニクっている。マジで心臓飛び出すかと思った。それはさておき、え、どうする。どうすればいいんだ。そもそもどうにかできるのか。なんの動物だろうかと扉の外に目をやると、ガラスに反射して赤く光っている点が二つ。
いやいやいやいやいや、おかしい。現代にも目が赤く光る生物はいない。あっ、腰抜けた。目を瞑り、精神統一をする。ここで動けなかったら、たぶんヤバイ。よし、立てる。立てるはず。よし立てた。開眼すると、目の前にバッファローっぽいのがいた。たしかあらゆる動物の弱点は目だったはず。正拳で思いっきり殴ろう。と一瞬思ったが、距離的に無理だ。この勢いを利用して授業で習った柔道の前回り受身。いきなり失敗して頭を強く打った。そのとき、地面が揺れた。
強い地響きだ。そして、爆音がしたかと思えばよくわからない生物が弾け飛んでいた。今起きた超常現象にびっくりしたが、それ以上にびっくりしたのは、そこにここに来る前まで一緒にいた例の友人が立っていたことである。
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夜鬼裕二。小学校の同級生だったが、難関校といわれる中学校の入試で合格して入っていった。宿題が大変らしく、あまり会う機会がなかったが、丁度都合が合ったので科学の出し物の会に行ったわけである。勉強もできるが、ゲームもなかなか上手い。
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彼もびっくりした顔をしていた。さあ、事情を説明してもらおうか、という前にしゃべりだした。
「お前なんでここに」
「いや、なんかあの後気がついたらここにいたけど、そっちは?」
「俺もよくわからないうちにここに」
両者とも混乱していて、会話がしどろもどろだったため、要約すると、次のようなことらしい。
まず、僕と別れたあと家に帰り、水羊羹をおやつに食べていたところでここに飛ばされたらしい。僕と同じ森に出たようだ。それよりも気になるのは今何が起きたかである。
「いや、ここに来てから瞬間移動ができるようになっててさあ」
!?
「は!?」
「いや、ここに来てから瞬間移動ができるようになっててさあ」
どうやらここでは魔法が使えるようだ。実際に見せてもらった。瞬間移動したと共に風を切る音が聞こえ、瞬間移動する間にあった机が木っ端微塵になっていく。
「今の間に10回瞬間移動しました」
自慢げに言う。
「とりあえず瞬間移動しながら森を探索してたら怪物がいたから条件反射で...」
「条件反射って...」
「瞬間移動でそこらにあった岩をめり込ませたら倒せた」
地響きはそのせいか?それにしても強大な戦力を手に入れてしまった。
「そういや、なんで夜なのに寝ないで出歩いてるの?」
「いつもの生活習慣のせい」
「あぁ...」
彼は超難関校に通っているために、たぶん徹夜に慣れてしまったのだろう。しかも彼は小学校の頃、修学旅行で2泊とも完徹する。そんな男だった。それはそうと、今後の問題が残っていた。食料である。
「今後食べ物どうするの?」
「近くに村あるけど」
「」
なんという疎外感。とりあえず、かついで瞬間移動で運んでもらうことにした。担がれる。妙に体に力が入る。さあ、出発と思い、瞬きをしたら着いていた。