結婚して二週間が経ちました
※ニーナ視点です。
第10話~第11話の間の出来事。
この部屋の持ち主は現在、先日彼女の夫となったこの国の王子と揃って出かけている。出かける、とはいっても王宮内のことで、彼らの婚姻の儀に出席した各国の賓客が帰国するため、挨拶に出向いているのだが。
「どうしてっ!」
現在王子妃となったリューネリア様は私室に戻ってくるなり、頬を赤くして絶叫した。
怪訝な顔の侍女たちに、半ば涙目で訴える。
「どうしてヴェルセシュカは人前で、あんなことをしなくてはならないのです!?」
すでにこの時点で、リューネリア様がまたウィルフレッド殿下に何かをされたのは侍女たちにも想像がついていた。
侍女たちも、リューネリア様がたとえ結婚していても人前での接触を嫌うことを心得ているため、いつものこととばかりになだめにかかる。
「ヴェルセシュカが――ではなくて、ウィルフレッド殿下が、の間違いですわ」
「そうです。ヴェルセシュカ国民が皆、そうなのではありませんのよ」
侍女のダーラとヘレンの言葉に、思わずニーナは白い目を向けてしまった。
「それでは全く慰めにはなっておりません」
二人の侍女の言葉に、ニーナはやはりこの結婚の唯一の難点は夫であるウィルフレッド殿下の行動だと認識する。
最近ではウィルフレッド殿下の仕事も忙しく、公の場に出ることも少なかったが、今日は久々に揃って人前に出なければならなかったのだ。多分、リューネリア様もすっかり油断されていたのだろう。
「で?今日はどのようなことをされたのです?」
目をキラキラさせながら聞いたのは、一番若いナタリアだ。
当然、その言葉に他の侍女たちも俄然興味津々に身を乗り出す。
ニーナだけが、傍で首を横に振った。
「いえ……えっと――」
思い出したのだろう。リューネリア様は再度頬を紅潮させた。
そしてついに耐えられなくなったのか、言葉にならない何かを叫びながら寝室へと駆け込んでいった。
「あー、今日も聞きそびれたか」
「本当にリューネリア様ってば恥ずかしがり屋さんね」
「ですけど、そんなところもお可愛らしいですわよ?」
「ウィルフレッド殿下の気持ちが分かりますわ」
口々に言い合う侍女たちに、ニーナは深々と溜息とついた。
まったく、彼女たちといいウィルフレッド殿下といい、この軽さはやはりヴェルセシュカの国民性に違いない……。思わず自分の主人を憐まずにはいられないニーナだった。