幼なじみが石油王になって告白しに帰ってきたけど、私もう五十歳なんだよね
「サキちゃん! 約束通り僕、石油王になりました! 結婚してください!」
幼馴染みの正(ただし)はお洒落なカフェでプロポーズしてきた。でもね、一つ言いたい。
「私、もう五十歳なんだけど」
私と正は幼い頃からいつも一緒だった。引っ込み思案な正はいつも私の後をついて回って「サキちゃん! サキちゃん!」と言ってくる。
そんな日常を過ごしていると、正が言った。
「ボク、サキちゃんと結婚する!」
正の言葉に私は
「正が石油王になったら結婚する」
と言った。
別に私も正もお金に困った家庭で育った訳ではない。中流階級の何不自由無い生活を送っていた。
でも、お金ってあればあるほどいいものだ。お金持ちになるのは私の夢だ。
それからも正のアタックは続いた。
小学生
「サキちゃん!」
「石油王」
中学生
「サキちゃん!」
「石油王」
高校生
「サキちゃん!」
「石油王」
すると正は真剣な顔で言った。
「わかった。僕、石油王になってくる!」
そうして正は中東へ旅立った。
連絡は、手紙、ガラケー、スマホと移り変わりながらちょくちょく取っていた。
ある日、正から連絡が来た。
『直接伝えたいことがあります』
結果、冒頭へと移る訳だ。
正は私の言葉にもごもごと気まずそうだった。
「えっと……中東系の企業に入って地道に人脈を広げてたらこんなに時間かかっちゃって……」
私はそんな正に追い打ちをかける。
「あと、私も石油王になったから」
「えっ」
正の顔が青ざめていく。
「サキちゃん……王族と結婚したの……?」
私は首を振りながら答えた。
「違うわよ。現地の通訳になって地道にエリート層との人脈を広げただけよ」
正は安心したような、できないような複雑そうな顔をする。
「じゃ……じゃあ……僕……もういらないよね……」
うつむいた正に私は言葉を投げかけた。
「なんで?」
「え」
正は私を見た。
「約束したじゃない。『石油王になったら結婚する』って。なんのために王族の誘い断ってきたと思ってるの」
「サキちゃん……」
正の目が潤む。
「そんな口約束の為にずっと待っててくれたの……?」
「正も同じでしょ?」
正は泣きながらもう一度言った。
「サキちゃん、僕と結婚してください……!」
私は笑う。
「喜んで」
その後、私と正は結婚した。
「ねえねえ、サキちゃん。家はどうする?」
「一軒家には住みたいけど、豪邸にするかは悩むわね……。したところで……っていう」
「何個か作るのは?」
「それよ!」
私達は余生をとにかく楽しもうとしていた。何せ、石油王が二人もいるのだから。
でもね、石油王なら誰でもいい訳じゃないの。あなただから。それを忘れないでね。




