『国王陛下、本日の議題はプリンです』
玉座に座る一人の男。
王国の運命を左右する重圧を一身に受ける存在。
それを微塵も感じさせない圧倒的カリスマ。
それが国王というものである。
玉座の間に流れていた静寂は、一人の大臣の叫びによって破られた。
「へ……陛下……!」
大臣が震える声で告げる。
「陛下!大変です!」
「何事だ」
「冷蔵庫に保管していたプリンが……」
「プリンが?」
「ありません!!」
国王はゆっくりと立ち上がった。
「戦争だ」
「お待ちください陛下!!まだ何も分かっておりません!!」
「では誰が食ったというのだ!!」
「分かりません!!」
「分からないなら戦争だ!!」
「何と戦うおつもりですか!?」
「冷蔵庫だ!!」
プリンの有無ごときに激昂しているこの男が、国の命運を握っている。
その事実に、大臣は泣いた。
「陛下、せめて冷蔵庫の中をもう一度お調べになっては……」
「貴様、余の目が節穴だと言うのか!」
「滅相もございません!!」
大臣は泣いた。今度は少し多めに泣いた。
そのとき、玉座の間の扉が開いた。
「失礼します」
現れたのは、王国最強の騎士だった。
その鎧には数々の戦いの傷跡が刻まれ、腰の剣は幾多の敵を葬ってきた。
王国最強。
その名にふさわしい男である。
このままでは、王国最強の騎士が冷蔵庫と戦うことになってしまう。
大臣は頭を抱えた。
国王は期待に満ちた目を向ける。
「騎士よ!犯人が分かったのか!」
「はい」
「誰だ!!」
「私です」
「貴様ァァァァァ!!!!」
「大変美味でございました」
「感想を聞いているのではない!!!!」
よく見ると、騎士の口元にはいささか濃厚すぎる焦茶色の証拠がついている。
大臣は絶望した。
騎士は深々と頭を下げる。
「しかし陛下。ひとつだけ申し上げたいことがございます」
「なんだ」
「プリンの蓋に、陛下のお名前が書いてありました」
「当然だ。余のプリンだからな」
「その横に『食べたら処刑』とも」
「当然だ。余のプリンだからな」
「では、私は処刑でございますね」
「そうだな」
「それでは最後に、お願いがございます」
「申せ」
騎士は真剣な顔で言った。
「もう一個プリンをいただけませんか」
国王は玉座から転げ落ちた。
騎士は許可を待つことなくその場で二個目のプリンを食べた。
「陛下」
大臣は決心した。この国を守れるのは自分だけだと。
「今回のプリンの購入費用は、王室費から出ております」
「それがどうした」
「つまり、国民の税金でございます」
国王の動きが止まった。
王室費は国民の税金。
プリン食べすぎたら国民が暴徒と化す?
プリンが食べられない。それだけは避けねばならなかった。
「……大臣」
「はい」
「国家予算を見直すぞ」
そして、王国史上初となるプリンを原因とした国家予算の見直しが始まった。
なお、翌日の新聞にはこう書かれていた。
『国王、プリンを孤児院に寄付。国民から「理想の聖人君子」と称賛』
プリンを孤児院に寄付して訪問すると正当な手順でパクれるからである。
こうして大臣の……
い、いや……素晴らしい国王様の、素晴らしい政策により、子供は良質の糖分を摂取出来るようになり、孤児の死亡率が大幅に減少した。
国王はこの功績を理由に「王立プリン振興財団」を設立。翌年、プリンは王国の主要特産品となる。
次回
『プリンの王国、早くも内乱の危機!?』
国王がプリンを推進した結果、ゼリー派貴族と杏仁豆腐派貴族が対立!?
家名を賭けた決闘の勝者には、国王からプリン二個が贈呈される!?
大臣「おやめください!せめてゼリーか杏仁豆腐でしょう!?」




