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ブラック副業、第二皇子隠れ補佐  作者: summer_afternoon
ミッション蹴球大会

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7/18

米蔵に中抜きの証拠

蹴球(サッカー)大会の企画は順調に進む。


皇帝への企画説明は第二皇子自らが行い、サッカーコートの配置、審判の選出、得点ボードの用意なども第二皇子が動いてた。あんなに生き生きした第二皇子を見るの、初めてかも。


私の方は軍の上司に、春香(チュンシャン)妃から聞いた鳩の帰巣本能の話を伝えた。今も駐屯地には内通者がいると。


ときどき、第二皇子のもとを訪れる朱氏(しゅし)様に会う。浩宇(ハオユー)はどこの配属か知りたいけど、なんか、わざわざ聞くのが、なんとなく、、()ずくて。聞けないんだよね。


「褒美はいかがいたしますか?」


第二皇子がラブリー春香妃と遊んでいるとき、朱氏様が来訪。


「1位米、2位小麦粉はんー、分けにくいから乾麺、3位は何にしようか。チームに配る物は3袋くらいずつかな。それで1人10キロの20人分くらいになる。皇帝は国庫からの持ち出しを認めてくださったけど、スポンサー探す予定なんだ。今後のこともあるし」

「今後と言いますと」

「初回なんて、ほとんど誰も知らない。回を重ねて有名になって、みんなが楽しみにするような行事にしたいんだ。僕の理想は、身分分け隔てなく汗を流して試合したり同じチームで一緒に楽しむことなんだ」


意外にも、顔だけ男はステキなことを言う。この言葉にラブリー春香妃は大喜び。


「殿下、素晴らしいです!」


ぱちぱちぱちと可愛い手を叩く。


「だから、スポンサーの交渉は僕がするよ。米は第一皇子の正室の一族の米蔵に行くことになってるんだ。そーだ、春香妃も一緒に行こ」

「はい」


あ、れ?

第一皇子の正室の一族は、水運業を営んでいる。それは税として収められる米専門の。農民が地方で役所に収めたお米を拠点となる都などへ運ぶ()()のはずなのに、どーして米蔵のお米。スポンサーってことは、お米を出してくれるんだよね? 朱氏様の笑顔が固まってる。そして参加表明。


「私も同行させてください」

「いーよー」


顔だけ男は朱氏様へイージーに返事をした。


 ◇


当日。

やっぱ、あかんやつじゃん。

案内された米蔵は河港の近くにあった。その数3つ。国庫の米用じゃなく私蔵。

同行したのは、第一皇子、第一皇子正室、第二皇子、第二皇子正室、朱氏様。皇族4人に仕えるその他大勢。私はその他大勢の1人。


朱氏様の姿を見て、第一皇子正室の父親は青ざめてるし。どう見ても、3つとも米蔵なのに「米が入っているのはこの蔵だけなんですよ」と1つの米蔵の鍵を開けた。


「いや、この米は、あ、えーっと、検査に使った米です。中に別の物が入っている場合がありますので」


いえいえいえ。地方役人が確認して封をし、そこに判を押す。袋にはしっかりと判がある。どこの役所かまで分かる。朱氏様は、さりげなくその判の部分を撫でる。うっわ。

ラブリー春香妃が震え始め、第二皇子はぎゅっとその手を握った。


「役人達の不正が横行しておりまして、いたしかたなく、検査用に」


と言う第一皇子正室父を、朱氏様はのらりくらりと詰める。


「なるほど。役人達は薄給。生活ゆえの不正なのだと耳にしました」

「そ、そうなのですか。朱氏様もご存知でしたか。しかし、不正は、い、いけませんな」

「まことに。ところで、どのような検査を?」

「多くは、重さが足りないのです。袋に入れるとき、少なく入れるのです」

「なるほど。それならば、開封しなくても調べられます。実は、測りを持ってまいりました。第二皇子がご所望な量を測るために」

「こちらに、あ、あるのは、その。中身を調べた。いえ、調べる予定のものですので、重さは規定値です」

「ほう。予定。すでに昨年の納税時期からかなり経っておりますが」

「第二皇子。こ、こちらにある中から、3袋、出させていただきます!」


しどろもどろになりながらも。第一皇子正室父は、強引に会話を振り切った。

朱氏様は仕上げ。


「困ります。別の袋に移し替えてください。地方の役所の判がついたままでは、口の悪い民衆に『中抜き皇子』などと言われてしまいます」


第一皇子正室が父親と並んで(ひざまず)こうとしたそのとき、


「朱氏、そこまでに」


第二皇子が止めた。あまりに意外で、その場にいた誰もが目をぱちくり。第二皇子は保護者のようにラブリー春香妃とお手々を繋いだまま。


「僕は楽しい催し物を企画してるんだ。春香妃は今日のおでかけを楽しみにしてた。様々な確認をせず、朱氏を同行させた僕がいけなかった。善意のスポンサーに不快な思いをさせて申し訳ない。ところで、そちらの棚の酒用というのはなんだ?」

「はい! こちらは酒蔵に持っていくうるち米でございます。少し川上に、とても美味しい酒を造る酒蔵がございまして」


第二皇子はラブリー春香妃に微笑んでから、そっと手を放し、少し先の「酒用」と書かれている棚へ歩いて説明を求めた。第一皇子正室父は走りより、2人笑顔で話し込む。

最後、にこやかに締めくくった。


「春香妃、今度のおでかけは酒蔵にしよう」

「はい。心待ちにします」


なんだか綺麗にまとまったんだけどさ、その夜、私は災難に遭う。


 ◇


喉元につきつけられた先端は凶器。

ずずずいっと詰め寄られ、後ろに身を引く。


「ねぇ(ルイ)、聞いてる? 朱氏が同行するなら、次から私に伝えなさい。今回はそういった旨を教えていなかったからよしとしましょう。第二皇子が止めてくれたことですし。ステキ♡」


胸の先端は一旦遠のいたのに、また近づいてくる。豊満な胸の圧といったら。

翌日、非番にも関わらず桃麗(タオリー)妃に*東宮へ呼ばれた。桃麗妃は、昨日、(ひざまず)く寸前だった、第一皇子の正妻。美人でグラマラスで気が強くて、ちょっと笑顔がうさん臭いけど、物腰柔らか。桃麗妃が目配せすると、部屋にいた侍女達は蜘蛛の子をちらすようにいなくなる。たぶん、廊下で聞いてると思う。


第一皇子は将来皇帝。その正室である桃麗妃は、ゆくゆくは皇后→皇太后と、央の国の女性の地位ナンバー1になっていく方。だから、敬わなくてはって思うんだけどさ、私と同じ21歳だし、この言い草だし、今一つ「ははーっ」ってひれ伏す気になれないんだよね。


「春香妃はまだ幼いの。なんと言っても純粋培養でお育ちになり、たった10歳、世間のせの字に触れる間もなく第二皇子とご結婚。瑞、あなただったら、朱氏がいかに危険人物か分かってるでしょ? 不正ストッカー。弱みを握っておいてここぞというときにカードを切る。宦官なのに金では動かない。だからね、そういった配慮は周りに仕えている者がするものよ。いい? 今後は、今回のようなことのないよう、私に伝えてちょうだい」

「ですが、私は、交代で春香妃の護衛をしております。全ての情報を把握しているわけでは……」


たじろぎながら、でかい胸、、、じゃなく、桃麗妃にやっとの思いで答える。

ってか、どーして私に言うわけ。他にもいっぱい、侍女とかいるじゃん。情報っておしゃべり雀の侍女がやり取りするもんでしょ。まあ、軍人みたいにシフトとかないし出歩けないけど。


「ウソ。把握してるはずよ。あなた達は軍人。細かい業務連絡をし合ってる。昨日、第二皇子が止めてくださらなかったらどうなっていたことか。私の夫、第一皇子は将来皇帝になるという立場上、不正を見逃すことはできません。かといって、妻の家族を見捨てることもできない板挟み状態。あのときの第二皇子ったら。ああ。ステキ♡」

「……」


ちょいちょい「第二皇子ステキ♡」発言が混じる。


「それに、知らないとでも思ってるの? 瑞、あなた、朱氏と親しいようね」


でかい胸、、、じゃなくて桃麗妃は、ちろ〜んと意味深な視線を私に送る。


「……」

「先日、夜、朱氏邸に入っていくのを見た者がいるの。あなた、枯れ専だったのね。しかも宦官。まあ、あの長い指、すごそうだものね」

「ご冗談を」

「瑞様ファンクラブ会員は至る所にいるのよ。後宮はもちろん、この*東宮にも*十王府にも。それだけじゃないわ。門番の中にだって都の見回りの兵士にだって瑞様ファンクラブ会員はいるの」


怖っ。プライバシー皆無じゃん。「私は違うけど」と桃麗妃はつけ加える。


「……」

「いい、枯れ専、くれぐれも。頼んだわよ」

「私は枯れ専では、」


自分の言いたいことだけくっちゃべると、桃麗妃は去った。





*東宮とは、後継である第一皇子が、後宮を出てから皇帝になるまで生活する場所。

*十王府とは、後継以外の皇子が、後宮をでてから地方へ行くまでに生活する場所。


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