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ブラック副業、第二皇子隠れ補佐  作者: summer_afternoon
ミッション蹴球大会

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4/15

ボーイミーツガール

いやー、大仕事の後のラーメンは美味しい!

帰り道は上機嫌。密命だから、メンドクサイ報告書いらないしさ。第一側室からざっくり経費貰っちゃって、旅費清算なんて事務処理いらないしさ。思いがけず短期戦で滞在費が浮いた。私が男だったら、おねーさんのいる店で遊んでたと思う。


外にテーブルとイスが並べてある店で替え玉を食べていると、道にイケメン発見。なんだか背中に行商のように大きな荷物を背負ってる。年は20歳くらいかな。知的。それは、シンプルな服とスリムな体から(かも)し出されてる。


荷物が多かったせいか、手から銅銭を落とし、それがころころとガラの男達の足元に。その1人が靴で銅銭を践む。仲間と目配せし合って笑ってるし。


「すみません。そこにお金を落としました」


知的イケメンがガラの悪い男達に近づく。


「ん? おおっ! こんなところに、オレが落とした金だ」


わざとらしく、男が自分の靴を退け、ひょいっと銅銭を拾い上げる。


「いえ、今、オレが落としたのをアンタが踏んだ」

「はああああ? オレのっつってんだろ」


きっと、相手は退屈でいちゃもんつけてるんだろーな。好みのタイプだし、助けちゃおっかな♡


「オレのだ!」


ほー。意外にも引かない。脅されたら有り金全部差し出しそうに見えるのに。乱闘になったら助けよ。


「だったらお前のって証拠あるのかよ」

「ああ。その銅銭はオレが靴下の中に入れてた。オレの足の臭いがついているはずだ。しかもオレの足は白癬(はくせん)に侵されている。白癬菌は見えないが移る。その手には白癬菌がついた。そのままだと数日中に皮膚が醜くめくれてくるだろうな」

「うわぁぁ」


ぽいっ


男が銅銭をほおり投げると、知的イケメンはそれをキャッチ。楽しそうに銅銭を男の鼻先に近づける。


「臭いを嗅いで確かめないのか?」

「いや、いい。勘違いだった」

「ほら。ん?」

「やめろ! くそっ。行くぞ」


ガラの悪い男達は去っていく。


かわいそうに、若くてイケメンなのに。白癬って病気なんだ。

眺めていると、知的イケメンは銅銭を持って店に注文する。が、店の主人は銅銭を受け取らない。さっき、聞いてたもんね。


「靴の中に入れてたけど、靴底の下です。白癬菌はついてません。それに、白癬って水虫のことです」

「なんだ、そーだったんかい」


店の主人は銅銭を受け取って、ラーメンを出す。水虫ならえーんかい。

知的イケメンは、重そうな荷物をよっこらしょと下ろし、私の斜め前の席に座る。


「お見事でした」


私はぱちぱちと小さく拍手して(たた)える。


「あーゆー(やから)はどこにでもいる。大したことじゃない」


クール。


「白癬って水虫のことなんだね。初めて知った。水虫なの?」

「ちょっとだけ」

「あはは」


見れば知的イケメンのラーメンは具なし。そういえば、銅銭を靴底から出したなんて、持ってる最後のお金じゃないだろーか。私はラーメンをおかわりし、知的イケメンのラーメンの上に自分の具を載せる。


「ありがと。正直嬉しい」

「お金、ないの?」

「いや、あるにはある」

「なんだ。心配したよ」

「銀はなるべく遣いたくないんだ」

「自分も銀が好き。報酬は銀って決めてる。価値が上がってくから」


ラーメンを食べながら、そんな話。


「銀が値上がりしてること気にしてるヤツなんて初めて会った」

「生活は銅銭だもんね。でも、不思議。どーして銀が値上がりしてんの? それとも銅銭の価値が下がってんの?」


単に世間話のつもりだった。ら、答えが返ってきた。


「銀の価値は貿易で決まる。銅銭は偽物も紛れて世間に出回ってて。だから、銀の価値と銅銭の価値は連動しない。どっちも別々に価値が動いてる」


びっくり。本当に知性派だった。


「銀の価値って貿易て決まってんの?」

「そ。他の国と売買するとき、銀で決済する」

「へー。そーいえば、銀でやりとりするってのは、聞いたことあったよーな気がする」


聞いたことあっても、自分の生活に貿易なんて関係ない。それと銀の値段が上がってることが結びついてなかったよ。銅銭にしてもそう。ときどき、割れる銅銭がある。銅じゃない物が使ってある私鋳銭。私鋳銭ってのは、要するに偽物。明らかに偽物でも、みんな使ってる。流通してる。


「まだまだ銀は上がるだろうな」

「すっご。いいこと聞いた」


最後、なんとなく自己紹介し合った。


「オレ、浩宇(ハオユー)。また、どっかで会うかもな」

(ルイ)って名前。じゃ」


先に店を出て、街をふらふら見て歩く。男装だから、お店の人から「彼女へのプレゼント?」なんて聞かれる。

オシャレしてみたい。でも、女の子として出会ってたら、さっきの浩宇とあんな風に気軽に話せなかったよね。馬を休ませる間、仮眠してから旅路に戻る。都はまだ先。



ぱからぱからぱから


林の中、馬を走らせていると、目が自然に見つけてしまう。


「浩宇。」

「あ、瑞」

「荷物重いだろ」


馬を下りて、浩宇の背中にある荷物をちょっと持ち上げてみる。クソ重っ。


「本が入ってるから」

「そりゃ重い。貸して」


どさっ


自分は下りて、馬に荷物を乗せる。並んで歩くと、意外にも浩宇は背が高い。


「ありがたい。けど、瑞が遅くなる」

「急いでないし。ちょっとだけ。お爺ちゃんみたいになってたから」

「オレ?」

「うん」

「ははは」

「浩宇も乗っけてってやれたらいーんだけど、馬が腰痛める」

「荷物だけでもマジ助かる」


宿はどうするのか尋ねた。ら、


「野宿」


ええーっ。今、11月。

何時間か歩いた。日が傾き始めると、浩宇は野宿する場所を決め、馬から荷物を下ろす。


「じゃ、気をつけて」

「瑞、よかったらさ、飯食ってけよ。飯ってか、米。荷物運んでくれたお礼」


なんか、離れ難い。もうちょっとだけ一緒にいたい。

浩宇は器用に即席カマドを作って米を炊き始める。釣ってあった魚に塩を振りかける。

焼きたての魚は柔らかで、ご飯は熱々。普段、豪華な宮廷料理の残り物食べてるのに、その何倍も美味しく感じた。


隣にいる浩宇のちょっと伏せた目。まつ毛に触れたくなる。無防備に大口開けて笑う。挙句は「腹一杯」って地面に寝っ転がる。そんな姿まで色っぽいって思う私は、今日のたった数時間で、浩宇を好きになっちゃったんだろーな。ちょろすぎ。旅先で会っただけなのに。


ん? 人の気配。げ、昼間のガラの悪いやつらじゃん。せっかくいい雰囲気なのに、邪魔させるか!


ひゅん ガツ


浩宇に見えないように石を投げて退治。石が当たる音くらいは風に紛れる。


 ひゅん ピシッ

  ひゅん 「う”」


「あれ? 今、なんか人の声しなかった?」

「気のせいじゃない」


いつもまでも一緒にいたい。

キリがない。


「馬宿で、この子にカイバ上げなきゃ」

「そっか」

「じゃ」

「な」

「え?」

「また会える? オレ、都の鳳凰路(ほうおうじ)の裏通りにある、朱氏(しゅし)様んとこにお世話になる予定なんだ」


朱氏様?!

知ってる。第一側室が懇意にしてる宦官。宦官は大抵、自分が仕える皇族の宮廷内に住んでる。一部、とっても出世したスーパー宦官は、宮廷の外に屋敷を構えて宮廷へ通勤する。朱氏様がそれ。屋敷では、下っ端宦官達が使用人的にいることが多い。

……。


すん


浩宇、そこでお世話になるってことは、宦官になるんだ、きっと。もう、去勢手術済みかも。もったいない。別に、好きとか恋とかって気持ちに去勢は関係ないんだけどさ、そこはやっぱ、恋愛の濃密オプション欲しいじゃん。

好きんなっちゃった数時間で分かってヨカッタ。今んとこダメージは虫刺され程度。


そのとき、まだ諦めてなかったガラの悪い連中が出てきた。


「よーよーよーYO」

「病気持ちときれーな兄ちゃんじゃん」

「BLっちゃってんじぇねーよ」


なんていいタイミング。ちょうど行き場のない想いを昇華させたいとこなんだよね。


ばき ごん ドサ デン


秒殺。しょうがないよ。こっちはプロだから。ちゃんと逃げられるように脚は軽めのダメージにしてあげたよ。


「「「くそっ。おぼえてろよ」」」


連中は逃げて行く。


「瑞、強いんだな」

「はは。浩宇、気をつけて。じゃ」


想いを振り払うように、馬で風を切った。


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