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ブラック副業、第二皇子隠れ補佐  作者: summer_afternoon
連続官僚邸放火事件?

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15/15

アヘンは銀のピンチ


謁見の間隅で異国人の背中を眺める。

でかいな。あれで商人なんだ? 軍人並みの体格。おまけに金色の髪。肌が異様に白い。

異国人の前にはたくさんの箱が並び、その中に(ふた)のされていない箱が1つある。正面で話す第二皇子の隣りで、ラブリー春香妃は、そわそわとその箱ばかり気にしている。何入ってるんだろ。


長い話が終了し、異国人は数歩、第二皇子の方を向いたまま後ろに歩き、(うやうや)しく礼をしてから、くるっと扉の方を向く。退室しようと扉へ歩くとき、通訳に何やら小声で話して彫りの深い顔をさらに険しくする。


パタン


異国人が退室して扉が閉まったとたん、ラブリー春香妃は箱に走る。


「かわいい! かわいいです。天使みたい」


満面の笑みを浮かべて「かわいい」を繰り返す。春香妃は、ベージュ色のもふもふした生き物を抱き上げた。首の周りとお腹と脚の下の方は白。

第二皇子はもふもふを撫でる。


「さっきの人が言ってたよ。船に乗って着いてきちゃったお母さん犬が産んだんだってさ。ラフコリーって犬種の牧羊犬」

「牧羊犬とはなんでしょう」

「羊の世話をする犬なんだ。気に入った?」

「はい」

「僕にも抱っこさせて」


通訳はいたけど、第二皇子は異国人と異国語で話してた。まるっきりのバカじゃないのかな。いえいえ、基本はバカだと思う。妓楼に通って醜聞まみれだったし。


「殿下、そっとですよ」

「おおー。かっわ。第一皇子んとこでは、病原菌がいるかもしれないって断られたんだってさ」

「そうなのですね。ここへ来てくれて嬉しいです」

「船旅はハードだから、飼ってもらえたら幸いだと言っていた」


ハードな船旅で母犬は産後、体力を回復できなかった。一緒に生まれた他の兄弟達も虹の橋を渡って行った。なんとか、このわんこだけが生き残ったとのこと。


和やかな謁見の間に、通訳が戻ってきた。そして、異国人が話していたことを第二皇子に異国語で伝える。


「すぐに否定して。春香妃と央の国の名誉のために」

「はっ」


通訳は再び謁見の間を出て行く。


春香妃は大人のやりとりなど気にせず、子犬の夢中。嬉しそうに侍女や私がいるところまで、子犬を見せに来る。

♡_♡

この世にこんなにかわいい生き物がいたんて。春香妃が抱っこする子犬に恐々触る。壊れそうで怖い。馬みたいに頑丈なものにしか触れたことないもん。もふもふは床に下ろされると、ぽてぽてと歩く。

かわいいわんこを愛でるかわいい春香妃。その場にいる全ての人が幸せ〜になっていた。


 ◇


別の日、朱氏(しゅし)様邸に集った。朱氏様、第二皇子、第二皇子お付きのお爺ちゃん宦官、浩宇(ハオユー)、私。


「参ったよ。『幼児婚をする第二皇子はクレイジーなド変態』だってさ。ふざけるな。分別くらいあるよ」


第二皇子は眉をハの字にした。「ふざけるな」って言葉を遣っても、口調は穏やかなまま。そういえば、怒ってるとこ見たことないかも。泣いてる姿はいっぱい見てるけど。


「だから通訳を否定に行かせたのですね」


と私は状況を思い出した。

第二皇子って、自分がクレイジーなド変態って言われたのに、春香妃と央の国の名誉のこと考えてたんだ? らしいっちゃ、らしい。


あの後、通訳は異国人を追いかけた。すると、通訳は異国人から小さな箱を手渡され「皇子が気に入ったら連絡がほしい」と意味深な目をされた。

通訳は小さな箱を持ったまま、追いかけたのは児童婚を否定するためだと弁明した。「央の国では身分や地位、権力によって結婚相手が決まる。皇子や皇女や相手が幼い場合は、形式上の結婚であり、性的なことは行われない」と。

それを聞いた異国人は一瞬、小さな箱を通訳の手から奪った。が、即、戻した。「やはり、試してほしい」と。


お爺ちゃん宦官は小箱を出して開けた。中にあったのはタバコの葉。最近流行ってる。

少し前は富豪の間の高級な嗜好品だったんだよね。それがだんだん下々の者へ降りてきた。富豪から妓楼へ広まり、妓楼から金持ちへ、金持ち商人から街の人へ。現在は庶民のカッコつけアイテム。

タバコを吸うためのキセルを買ったのに、タバコの葉を買うお金のない人にまで広まってる。アイテムだけでモテるって見せびらかしてたアホが、軍にいたっけ。


お爺ちゃん宦官はタバコの葉をキセルに詰め、窓を全開にする。風下になる窓辺で火を点けた。

なんだろ、この煙。変な匂い。甘ったるい。


「アヘンですか」


朱氏様が言った。


謁見の間に運ばれた中に、キセルやタバコの葉があった。そっちは普通にタバコの葉だったそうな。


「タバコの葉っぱからして(にお)うんだよ」


第二皇子に言われ、順番に(にお)いを嗅ぐ。独特の変な臭いがタバコの葉の匂いに紛れていた。

浩宇は険しい顔をした。


「アヘンは現在、医薬品です。とても高い。高いから庶民は手が出ません。けれど、最初はキセルもタバコの葉も高級な嗜好品でした。人気が出て輸入が増えて安くなりました。今は少々高くても、庶民が手を出せるくらいの価格です。同じように広まる可能性があります」


浩宇は最初の話し合いのとき、アヘンをなんとかするべきって言ってた。そのとき、朱氏様は、噂の段階で具体的に何もできないって。


「異国の商人達は貪欲ですね。タバコ以上に儲けようとしているんですね」


商人の拝金主義にあやかりたいと、私は尊敬の念を込めた。

浩宇の視野は広い。


「今、税が銀に統一されるところです。国内の銀は足りると見積もっていましたが、状況が変わってきました。主にタバコの貿易です。ここまで流行るとは思いませんでした。少し安くなったとはいえ、タバコは単価が高いんです」

「タバコと銀って関係あるんだっけ」


第二皇子が質問してくれてよかった。私も分かんない。


「これまで央の国はほぼ輸出で、銀を入手する側でした。それがタバコの輸入で、銀を払う分が増えました、央の国の貿易制限は、船何隻という数です。タバコの葉は1隻にたくさん積めます。なので、陶磁器や生糸で入手する銀よりもタバコの葉の購入で出ていく銀の方が多くなります」


と浩宇。第二皇子も私も納得。


「そっか。今まで、銀が入るだけだったのに、タバコを売って銀を持っていかれるようになったのか。これが続くと、というか、もっと単価の高いアヘンになったら、銀がどんどん減るのか」

「まずいですね。銀があること前提で、税を銀に統一したのいうのに」


朱氏様は眉間のシワを深くする。


浩宇は更に警鐘を鳴らす。


「税で納める銀が不足する前に、銀の値上がりが起こります。そうしたら、銀で設定している税が実質上がって、負担が重くなります。重税は民衆を苦しめ、暴動が始まります」


うわー。昔っから、大きな朝廷が民衆の蜂起(ほうき)で滅んできたんだよね。浩宇はそこまで言わないけど、明らかにそれを考えてる。


だけど、浩宇の試算によればまだまだ先のこと。私、タバコ吸わないし。眠くなってきちゃったよ。


「今アヘンを阻止しなければ、何年後かに、銀が足りなくなります。そうすると、役人や軍人への給料から紙幣になってしまいます」


え! 他人事じゃないの? 目ぇ覚めた。

朱氏様が第二皇子に進言する。


「小箱のことは、第二皇子から皇帝の耳に届けるべきです」

「僕が? タバコの葉っぱが入った小箱渡せばいい?」

「いえ、央の国の銀が流出することになるかどうかの瀬戸際だと」

「ええ、浩宇、一緒に来て話してよ」


顔だけ皇子は浩宇を頼ろうとする。庶民が(ちょく)で皇帝に会えるわけないじゃん。


「それは難しいかと存じます」


浩宇は丁重に不可能を口にした。


「じゃさ、説明の文作ってよ。勉強する」

「承知致しました」


その様子にお爺ちゃん宦官が扇子をばさっと開いた。


「殿下の口から『勉強する』という言葉が出る日が来ようとは。長生きはするものです」


その横で、第二皇子は要求を上乗せ。


「具体的にどれくらいなのかな? 皇帝って、ときどき細かいんだもん。タバコがアヘン入りになった場合ってどれくらい高いの? 3日くらいで調べられる?」


鬼。浩宇は平日は仕事してるんだからね。1日中ぼーっとしてる自分中心に考えないでよ。可哀想。


「「「はっ」」」


思っていても、口に出せないのが下々。朱氏様、浩宇、お爺ちゃん宦官が返事をした。今回、私ってなんもすることないよね。と思ったら、


「アヘン入りタバコの金額調べられるのって、(ルイ)しかいないよね?」


こンの、丸投げ顔だけ皇子。


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