表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/49

1話「魔王様と勇者?」

とある魔王城の一室。

禍々しいはずの玉座の間には、今、重苦しい静寂だけが満ちていた。

幼き魔王は、あまりの静けさに耐えかねて声を荒らげる。


「おい、エリザベス! 何故、俺様の部下が一人もいないのだ!?」


問いかけられたのは、玉座の傍らで丸まっていた一匹の白猫だった。

猫は気怠げに首を上げ、琥珀色の瞳で魔王を冷ややかに見据えると、大きな欠伸を一つ。


「……魔王様が正式に魔王様となったので。皆様『次は俺が魔王だ!』と息巻いて、揃いも揃って出て行かれましたが?」


魔王は、まるで理解不能な言語を聞かされたかのような顔で固まった。


「……へっ?」

「ですから! 皆様、下剋上のチャンスだと言って、『新しい魔王チャンス』を求めて野に下ったんです。わかりましたか?」

「つまり……俺様の部下は?」

「私だけですよ。感謝してください。この私が残ってあげたんですから、さあ、いくらでも私を褒め称えてもいいんですよ?」


魔王はゆっくりと玉座から立ち上がった。その面持ちは、かつてないほど神妙である。


「なるほど……。ならば、この世界の誰が『最凶』であるか、身をもって分からせてやる必要があるな……」

「はぁ、そうですか……(面倒くさ……)」


エリザベスが心底どうでもよさそうに相槌を打った――その時だった。

重厚な魔王城の扉が、轟音と共に蹴破られた。


「見つけたぞ、魔王! 俺様の壮大なハーレム計画の礎として、貴様にはここで消えてもらう!」


そこに立っていたのは、直視できないほど眩い金色の鎧を身に纏った男。

どこからどう見ても、テンプレ通りの「勇者」であった。


「おい、エリザベス。……なんか変なのが来たぞ?」

「そうですね。これでもかと言うほど『勇者』という感じを詰め込んで来ましたね」


勇者は得意げに鼻を鳴らし、腰の聖剣を抜くと、切っ先を魔王へと突きつけた。


「フフッ、やはり気付いてしまったか! 隠しきれない僕の『ザ・勇者』オーラが溢れ出てしまっていたようだね! いやぁ、わかるよ、わかっちゃうよね!」


あまりに残念な言動に、猫は冷え切った視線を勇者に投げ、ぼそりと呟く。


「魔王様……。とんでもないバカが来ました……」


しかし、魔王は腕を組み、不敵な笑みを浮かべて高笑いした。


「クハハハハ! 来たか勇者よ! この魔王たる俺様と刃を交えたいというのなら、まずは俺様の部下であるエリザベスを倒してからにするのだな!」


魔王はビシィッ! と、やる気ゼロの白猫を力強く指差した。


「もし、万が一にも貴様がこのエリザベスに勝てたのなら、その時こそ俺様が直々に相手をしてやろうではないか!」


一国の主と、人類の希望。

その両方が揃いも揃って「頭が残念」という現実に、白猫は深い、深いため息を吐くのだった。

勇者は腹を抱えて、これ見よがしに爆笑する。


「……ぷっ、クハハハハ! いいだろう! そのエリザベス(ねこ)とやらを、この聖剣『スーパーエクスカリバー』で瞬殺してやろうではないかぁ!」


勇者が猫に向かって猛然と走り出す。

対する猫は、再び欠伸をしていた。


(うわぁ……。面倒くさいし、コイツ本当に勇者?)


「――『火炎球ファイアボール』」


刹那、爆音と共に視界が紅蓮に染まった。

勇者は驚愕した。自分に向かってくる火球が、およそ初級魔法とは呼べない「巨大な太陽」のようだったからだ。

あまりの速度、あまりの熱量。

回避不能の直撃を受けた勇者は、受け身一つ取れぬまま、魔王城の分厚い壁を数枚突き抜けて彼方へと吹き飛ばされた。


「……へぇ?」


今度は魔王の頭が「?」に支配された。


「よ……弱くないか? あいつは本当に勇者なのか?」

「さあ? 偽物だったんじゃないですか?」


魔王はマントを翻し、不遜な笑みを浮かべた。


「……まあよい。では行くぞ、エリザベス。逃げ出した不届きな部下どもに、誰が最凶か分からせてやる。全員ボコりに行くぞ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ