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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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ジーン&ガブリエルの場合

 駐車場に向かうと、どういう訳かガブリエルが待っていた。


「えっ?」


 リツに向かってヒラヒラと軽薄に手を振る相手はいつもの気楽な格好だ。ウェーブのかかった長めの銀髪を後ろで結んでいる。洗い晒しのシャツにヴィンテージ物のデニム。そしてトレードマークとも言える薄紫の丸眼鏡。


「あぁ、彼は神力人(かみりきと)、言ってみれば我々の助っ人ですよ」


 天使を助っ人に呼ぶ悪魔がどの世界にいるのか、とリツは呆れたが、それは自分の夫なのだった。胡散臭い丸眼鏡の長髪の相手を見上げた樋口巡査部長はもっと不審そうな顔付きになった。この見た目では恐らく人種すら不明だろう。


「僕、道を歩くと職質されて面倒だから、必要最低限の買い物にしか外出しないんだけど、こう見えてもリツの上官だったから安心安全。お嬢さんもそんな、怖い顔しないでよー」


 後部座席に乗り込んでからも樋口巡査部長は当然のように隣を陣取ったガブリエルを警戒していた。


「ねぇ、どうして当たりを付けたのが五十三区なの?」


 助手席のリツの言葉にジーンは運転しながら笑った。


「単純なことだ。今現在区として機能している六十までの数字の中から素数を抜き出してみろ」


 2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59。リツはタブレットの画面上に書き出す。


 まず三十七区でふみ、つまり二十三が消える、するとその一つ前の数字の十九区で、三十七の次のよひと、四十一が消える。殺害予告を兼ねていたかは不明だが何となく規則性を感じた。そして次に出てきたのは七区だった。七区で殺害されたのは東五染音、ここに来て苗字の五と名前の染めるの中から九を取り出したとする…少々イレギュラーだが…すると五十九。隣り合う数字は五十三。先に事件が起こったのは七区だから次の十一が狙われる可能性が浮上。そうしてこのタイミングで五十嵐計一警部が行方不明。ちなみに五十嵐の五十と十一を足しても六十一で素数、仮に狙いが七の両隣だとしても五が浮上するから名前としては何とも生贄向きとしか言いようのない字面なんだよ。それに七区こそ異常だったが事件を起こすなら数字の高い区の方が人を(さら)っても目立たない。私なら五十九区で七の名前を殺る方が合理的と考えるが、そこにはもしかすると別の意図が含まれているのかもしれない…」


「まさか先の事件の規則性に気付いた者が別の目的で東五染音を殺害した…?」


 樋口巡査部長が眉を寄せる。


「あくまで可能性の話ですよ。それに彼らには皆、天使と悪魔の饗宴のアカウントを有しているという接点もある…」


 ジーンは言ったが、神力人ことガブリエルはふふんと笑った。


「最初はあくまで名前と奪った命の数で選別してたみたいだからね…リツは数字が入ってなくて良かったよ。僕は転生してないからカウントされないけど、人数だけなら多分ぶっちぎりでリツは上位だし。それにしても犯人に仕立て上げられるはずの彼を君が助けるとは思わなかったよ。えーっと、成瀬くんだっけ?彼ってば高額な料金払って改名までしてたんだね。そりゃそうか五と三でゴミなんて、よく名前として受理されたよね。あーこれも素数じゃん。整形も繰り返してるから疑われてたけど、ご面相もいまいちでゴミなんてつけられた日には僕でも生きていたいと思えないかもなぁ…」


 言いたい放題のガブリエルだったがリツは知らなかった情報が多過ぎて混乱していた。整形するほど?それにゴミ?あの犬のようにくりくりとした目は整形だったのか。リツは成瀬について自分が何も分かってはいなかったことを思い知らされた。


「カミリキトさん…でしたっけ?あなた何者なんですか?まさかあなたも悪魔…?」


 樋口巡査部長の言葉にガブリエルは目を丸くする。やがて彼は腹を抱えて笑い出した。


「ちょっと…面白いこと言わないでよ。フハッ!ダメだ…僕が…悪魔!?いいねぇ…もういっそのこと堕天しちゃおうかな」


「あーその人…実に胡散臭い見た目なんですけど、天使なんです。一応現役の。私が堕天する前は上官でした」


 リツが後部座席を振り返るとガブリエルはまだ笑っていた。樋口巡査部長はリツとガブリエルの顔を見比べた。


「え…?つまり…この車には天使と悪魔が仲良く乗ってる…ってこと?」


「お嬢さんも大概だよね。記憶喪失になっちゃって昔のことなんか覚えていないみたいだけど、やっと見つけたよ…ラファエル」


「ええっ!?」


 驚いて振り返ったのはむしろリツだった。直接面識はないがその名はあまりに有名だ。


「ラファエル!?うそっ!?」


「ちょーっと触らせろ。頭の打ちどころが相当悪かったみたいだなぁ…何があったんだ?大事な力も失くして…これじゃ天使なんて分からないよな」


 ガブリエルは樋口巡査部長の頭を撫でる。


「この車には天使と悪魔が二人ずつ乗ってるって訳。セラヴィ株式会社になんとなく入りたくなかったのは、あそこがお嬢さんにとっては魔王城だから。入ってしまえばどってことないんだけどね。それに魔界と天界はもう争っていない。彼が君臨して和平協定を結んだから」


 ガブリエルは運転するジーンを指差す。


「え…?彼が魔王…?」


「そこは国王陛下と呼んでほしいところだが。それに本来なら玉座に座るべきは社長の方だ」


「えっ…?いや、私が天使ラファエル?そんなまさか…」


「通りで頻繁に魔力切れを起こす訳だよ。いいからちょっと今のうちに補っておきなよ。今日は癒しの力が必要になるかもしれないし」


 ガブリエルは樋口巡査部長の肩を抱いた。


「いきなり何するの!?ちょっと近い!!」


「仕方ないじゃん、キスしたら殴られそうだし。それともしてほしいの?」


 タコのように唇を突き出した相手の顔を樋口巡査部長は力尽くで遠ざけた。不服そうな顔をしながらも相手の腕から流れ込んでくる魔力が何やら妙に心地良くて彼女は急に押し黙る。何故懐かしいなどと思うのか。


「あのさ、余計なお世話かもしれないけど、好きな相手にはさっさと好きだって言っておいた方がいいと思うよ?じゃないと彼、また次の転生サイクルに入って君のことなんかきれいさっぱり忘れちゃうんだからさ。あの手の正義感が先走りするタイプは大概早死にするんだよねぇ…」


 しれっと縁起の悪い言葉を口にしたガブリエルをリツが睨んだそのとき、手にしたタブレットに地図と住所が送られてきた。リツは急いでカーナビに情報を転送する。


「さすがはエストリエとストラスだな。仕事が早くて助かる。我が部下は優秀だな」


 ジーンは低く笑うと悪魔じみた笑みを浮かべて更にアクセルを踏み込んだ。

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